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私のヒーローは悪役令嬢  作者: ウール100%


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悪役令嬢、プールへ行く5

「じゃあ、案内するから行くぞー」

 そう言って先導しようとする一法に、

「岩水君っ」

優人は近づき、彼の手を両手でぎゅっと握る。

「うわ、どうした」

 これにはさすがの一法もぎょっとして、しばし身体を硬直させた。

「岩水君はこの後、時間ある?このまま僕らに付き合ってくれると嬉しいんだけど」

「え?あ、ああ。生徒会役員だけの集まりに部外者の俺が入るのは心苦しいんだが、もし気にしないようなら……」

「とんでもない。ぜひ僕らと遊んでほしい」

「そ、そうか。ありがとな……」

 優人の顔が今までになく近い。

 一法は学園が誇る美しい顔面の輝きをまともに受けて、思わずどぎまぎした。

「礼を言うのはこっちだよ。それに今後もし岩水君が困ったことがあったら、頼ってくれ。どこでも、何でも、助けになるから」

「そこまで恩に着る必要は無いって。運営会社としても施設の再開の前に少人数で遊んでみて、何か問題が起こらないか確認したいって話が出ててな。こっちにとっても渡りに船だったんだ」

「そっか……でも、本当にありがとう」

「おう」

 ついに一法は優人の顔をまともに見ていられなくなり、さっさと前を向いて中へと入っていく。

 優人は彼を小走りで追って隣に並んだ。

「岩水君……、一法君って呼んでも良いかな?」

「……好きに呼んでくれて構わない」

 コーデリアは二人の後ろ姿を見て、

「そこの距離が縮まるのは、予定外なのですが……」

とぼやいた。


* * *


「うわぁ、広ーい……!」

 着替えてロッカーから出てきた静花が歓声を上げた。

 施設全体にぐるりと輪を描くように流れるプール、海辺を思わせるような造波プール、幼児向けの浅いプールに、本格的に泳ぎたい人向けの50メートル×10レーンの競泳プール、さらには泳ぐのに疲れた人がくつろぐためのジャグジーやパラソルが林立する軽食ゾーン。

 そしてそれら全てを見下ろすように、施設の最奥に天井までそびえ立つ巨大なウォータースライダーが鎮座している。

 スライダーそのものはチューブ式で、地上まで右へ左へと曲がりくねったかと思うと急角度で滑空しプールに突っ込む仕様だ。スタート地点へ行くには壁際に備え付けられた階段を登る必要がある。階段は幾重にも折れ、かなりの急勾配に見えた。登るのも一苦労だろう。

 静花はスライダーの頂点に立ったときに見るだろう景色を想像し、ぞっとした。

「私、絶叫系が駄目だからスライダーは無理かも……」

 呟く静花はギンガムチェックのビスチェビキニだった。腰の辺りでひらりと揺れるフリルがかわいらしい。

「あらもったいない。いつもは皆が滑りたくて並んでるんだから、こんなときに挑戦しなきゃ損よ」

 ビーチボールを片手に静花の隣に並んだのは小蝶だ。彼女はボーダーのトップスに紺のショートパンツという活発な印象の水着だ。ショートカットの彼女によく似合う。

「大丈夫ですよ、シズカ。私が一緒に滑れば恐くないですわ」

 背後から自信満々に言いながら現れたのはコーデリアだ。

 小蝶は相変わらずのコーデリアに呆れながら、

「あんた、あれは一人乗り……って、何?その格好」

と振り返って目を丸くした。

 コーデリアはすっぽりと白いタオルをかぶっていた。子供が学校の水泳の授業で使うような、ボタンで留めて首だけ出せるもの。いわゆるラップタオルである。ちなみにフード付き。そのフードも彼女は律儀にかぶっていた。

 男子陣は先に着替えを済ませて造波プールで波と戯れていたが、女子陣がロッカーから出てきたのを見て寄ってくる。彼らもまたコーデリアの奇妙な格好に不思議そうな顔をした。

 コーデリアは俯き、下唇を噛む。

「…………チヅルのせいですわ」

「千絃さんがどうかしたの?」

 静花がコーデリアの小さな呟きを拾って尋ねる。

 コーデリアは半泣きで真っ赤にした顔を上げ、きっと目をとがらせた。

「私、この世界の水着がどういうものかよくわからなかったんです……だからチヅルに選ぶのを任せていたのですが……それが、あんな、あんな…………あんなとんでもない水着を買うなんてっ!!」

(((とんでもない水着!!??)))

 男子生徒三人は思わずタオルに隠されたコーデリアの身体に視線を集中させた。すぐさま顔を寄せ合いひそひそと話し合う。

「おいおいおいおい、とんでもない水着って何だよ。期待して良いのかこれは」

「待て、早まるな。相手はコーデリアだぞ。制服ですら「破廉恥ですわ」と叫んでた女だ。他人から見れば大したことないという結果は十分あり得る」

 鼻息荒い友晴を、顔を赤らめながら抑える一法。

 優人の方はというと、

「よし大丈夫落ち着こうまだ日本は沈没してないし火山も噴火していないし隕石も落ちていないまだ僕らにもやれることは何かあるはずだ」

 ぶつぶつ呟き続けている。目の焦点が合っていない。

「お前実はその顔で全然落ち着いてないな!?」

 一法は正気に返らせるべく優人の肩をぶんぶんと揺さぶった。


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