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私のヒーローは悪役令嬢  作者: ウール100%


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悪役令嬢、テスト勉強する2

「おや、ユウトは前回の実力テストで総合一位だったのですか」

「かなりヤマが当たってね」

 話は少し遡って、体育祭準備期間。生徒会室では役員の面々が揃って机に向かい、それぞれ自分の仕事をしていた。

 そんな中、真っ先に飽きたコーデリアが口火を切って雑談が始まった。話題は体育祭後の中間テストから始まり、そこから前回のテストの成績に及んだ。

「お前のヤマが当たるのは毎度のことだろ」

 優人の謙遜に、友晴が指摘する。

 それを笑って受け流しつつ、

「僕は全部の科目がそこそこで、逆に得意科目が無いんだよね。小蝶は数2で学年1位を取ってたよね。数学が得意なんて羨ましいよ」

とさらっと話の矛先を変えた。

 急に名前を挙げられた小蝶が、赤らめた顔を勢い良く上げる。

「!?知ってたんですか?」

「そりゃ友達だからね。順位表に載ってたら気がつくよ……て、あ。先生から呼ばれてたんだった。ちょっと行ってくるね」

 優人が立ち上がって、部屋を出ていく。

 小蝶は胸に手を当てて先程の言葉を反芻しながら、彼の後ろ姿を見送った。

 その顔を無表情に見ながら、コーデリアは呟いた。

「……ほう。コチョウは数学が得意、と」

「何よ、なんか文句ある?」

 聞き付けた小蝶がコーデリアを睨み付ける。

 静花は喧嘩の予感にはらはらとして、書類から顔を上げ二人を見た。

「いえ、何も。ただ、ユウトは学業ができる者に関心を抱くのだなと思って」

「かっ、関心!?べ、別に会長は同じ生徒会役員だから気にしてくれてるだけで」

「ええ、そうでしょう。どうやら学業の成績が良ければ、本人の人格はともかく好感度は高くなる傾向にあるようですね」

「なんかそこはかとなくむかつく物言いね……」

 小蝶は口元をひくつかせるも、すぐに気を取り直して、

「でも、そうね……会長も馬鹿よりは頭の良い人間が好きでしょうね」

とせせら笑った。

「む、馬鹿とは何ですか」

「あんたに言ったわけじゃないけど~、2組で実力テスト総合最下位のコーデリアさんには~」

「ちゃんとチェックしてんじゃねーか」

 ぼそりと友晴が言う。彼もまたペンを置いて、いつ小蝶がコーデリアに飛びかかることになっても止められるように構えていた。

「あ、あれはまだ学園に慣れていなくて、勉強どころではなかったからですわ」

 意外にもコーデリアは小蝶の挑発に動揺した。実は内心、自分がどうやら周囲に比べて勉強ができないということを気にしていたらしい。自らを落ち着かせるよう、こほんと咳払いを一つ。そして小蝶を睨み付け、

「良いでしょう。体育祭が終わったら、中間テストではコチョウに勝って見せますわ」

とのたまった。

「コーデリア!?」

 静花の座る椅子がガタガタと音を立てる。コーデリアの現在の成績から考えて、今から一ヶ月もない次のテストで小蝶に勝つなんて、どう考えても無理。無謀だ。

「あら、言うじゃない。じゃああんたがもしあたしに勝てなかったら、そうね……夏休み中に予定している書庫整理、一人でやってもらおうかしら」

 書庫とは生徒会室の隣にある、一般的な教室の半分ほどの広さの部屋のことだ。部屋いっぱいをスチール製の書架が占拠しており、そこには歴代の生徒会が作成した資料が詰め込まれ、埃をかぶっている。これを毎年、夏休みのうちに古いものは廃棄し新しいものは整理して保管用ファイルに綴じるのが、生徒会の慣例となっていた。はっきり言って力仕事である。

 小蝶の挑発に対し、コーデリアも負けていない。

「わかりました。では私が勝ったら体育祭後に生徒会役員の慰労パーティーを企画していただこうかしら」

 体育祭もまだ終わっていないというのに、また突拍子もないことを言い出す。とはいえ彼女の目的は、打ち上げなど少しでも静花と優人の距離を縮める場を設けることだけである。本人は大真面目だ。

 そんな意図など全く知らない小蝶は、コーデリアの提示した賭けの報酬に呆れかえった。

「あんた、遊ぶことしか考えてなくない!?」



「……というわけで頑張りましょうね、シズカ!」

「そういえばそんな賭けしてたね……」

 静花はしみじみと思い出した。体育祭前のことなどすっかり忘れていた。

 ところは変わって千絃宅。コーデリアの勉強会のお誘いを喜んで受けた静花は、手早く勉強道具をトートバッグに詰めると、10分後には通い慣れた屋敷に着いていた。

 相変わらず空はどんよりしているが、まだ雨が降る気配は無い。ただ6月にもなると湿度は高く、蒸し暑い。陰気な千絃の屋敷にしては珍しく、カーテンを上げ窓を開けて風を通そうとしていた。

 彼女らがいるのは1階にあるサンルームだ。壁一面がガラス張りの部屋は曇り空ながらも、自然光が十分に入ってきて明るい。

 ソファに並んで座って、中央のテーブルに広げた教科書やノート、そして実力テストの成績表を二人して睨む。そこには目も当てられない数字が並んでいた。具体的にいうと、全科目100点中半分以下の点数である。

「……実際、次のテストで勝つのは難しいんじゃない?小蝶さんって毎回、総合の上位30人以内には入ってると思うんだけど」

「ええ。さすがの私も今回ばかりは大言壮語してしまったと反省しましたわ」

「えっ、コーデリアが……」

 珍しい発言に静花が目を丸くする。

 コーデリアは苦虫を噛み潰したような顔をしていた。何でも自信満々の彼女だが、本当に勉強は苦手らしい。

「ですが宣戦布告したからには負けるわけにはいきません。そこで……」

「俺を呼んだっていうわけか」

 コーデリアが言い終わらないうちに、食堂とサンルームを隔てる扉が開いた。彼女の言葉を引き取った相手を見て、静花は驚いた。

「岩水君!」

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