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6、コンゼツ根絶計画  作者: 黒十二色
第三章 根絶計画を根絶計画
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41/54

41、橋を越えて

 エーテル界は、ものすごく寒かった。

 門を抜けると黒い土。すぐに砂利道。かと思えば橋に出た。視界の両側には緩やかに流れる河がある。幅の広い河川、いわゆる三途の川に架かる長い橋。橋には、いくつか巨大な鳥居のようなものが並んでいる。この橋、江夏なつみが馴染みのあるメートル単位で表すと、その全長は六キロメートルほどになる。都会暮らしに慣れた彼女の足には、少々長い。

 見上げた空は曇り空のように白かった。

 振り返れば赤い門が黒い土の上にしっかりと建っている。

 いくつもの大きな駅で乗換えをする人々の流れのような霊魂を掻き分けて進む。歩いても歩いても近づいている気がしない。ゴールは見えているのに、なかなかたどり着けない。まるで、高層建築物を目指して歩いたり、山の頂上を目指して登ったりしている時のようだ。

 とはいえ、目指す先が見えているだけ良しとすべきなのだろう。いきなり真っ暗な洞窟に落とされて、ライトも無く手探りで歩くという状況では無いのだから。

 思えば秋川が動けないクズになってしまって、それをどうにかする術を持たない状況が、真っ暗な洞窟と言えるかもしれない。そして、橋の終点にある希望に向かって進んでいるのが江夏なつみの現状なのだろう。

 彼女が目指す終点に何があるのかといえば、柊あんじぇらである。

 あんじぇらの現世への帰還こそ、秋川を復活させる鍵だと江夏は考えるようになっていた。

 もともと、あんじぇらは居ないものとして計算していたのだが、梢ありっさの言うとおり、確かに大好きな人が近くに居てくれれば頑張る気力も湧いてくるというもの。それは江夏なつみが身をもって知っている。夜の仕事が辛くても、いじめられるのが苦痛でも、大好きな秋川のために頑張れた自分が居るのだから。

 秋川を頑張らせるのが自分ではないのは悔しいけれど、まずは秋川を立ち直らせないと秋川が秋川自身にかけた罪の意識という名の呪いが、いつまで経っても解けないのではないかと、そういうことを考えるようになっていた。

 金ぴかのサンダルを履いた足は、つぎつぎと橋を蹴って進む。サンダルに青白い霊魂がぶつかって、蒸発するように消滅することもある。どうやらサンダルの攻撃力や価値は江夏の想像以上に高いものらしい。

 いくつもの大きな鳥居を過ぎて、もじゃもじゃと湧いてくる霊魂たちを掻き分けて、やがて橋も終わりに差し掛かって、なんとなく躊躇った江夏が立ち止まっていると、二輪の荷車を引いて進む男が一人、ゆっくりと江夏を追い抜いて行った。

 リアカーには青い布が掛けられていて中身が見えないようになっている。

 江夏は思いついた顔を見せた後、そのリアカーに素早く潜り込んだ。

 荷車を引く男は一人分の重さが加わったことに少し違和感をおぼえたような素振りを見せたが、中身を確認することなく最後の鳥居を抜けた。

 こうして江夏なつみは、橋とエーテル界の境を監視している者の目をかいくぐることに成功した。

 砂利道に突入し、荷車はがたがたと乗り物酔いを誘発するような揺れを生み出しながら、分かれ道を右に進んだ。

 右に進んだ場合は、和風旅館風の建物、現世人収容所に行くことができる。

 左に進んだ場合は、霊界警察の本部が置かれている大きな建物がある。

 道なき場所に、まっすぐ突っ込んだ場合は、そこには巨大な穴が開いていて、奈落の底まで真っ逆さまであり、這い上がってくるまで責め苦を味わうことになる。

 後戻りもできなくはないが、ここまで来た以上、柊あんじぇらと桃井もこを連れ帰るという目的を達成せねばならない。

 揺れながら進む荷車の向かう先には現世人収容施設。柊あんじぇらの居る場所だ。

 荷車は黒い鳥居を抜ける。



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