34、間奏、ろり雄の家
「そろそろだいじょぶかなー。電源、オーン」
そんなことを言いながら、充電器につながれていたスマホを操作し、橘たちあなという変な名前の女は弟の良近に電話をかけた。
「もしもーし、おとうとー?」
《そうだけど、姉ちゃんどこに居るの?》
「知らない男の人の家」
《えっ! なんだそれ! 誘拐とかされた感じ?》
「うんにゃー、足くじいちまってねー。通りがかった人に肩貸してもらって、手当てしてもらったんだ」
《だからって、男の家に一人で……》
「いやいや、女の人しか居ないし」
《ごめん、ちょっと姉ちゃんが何言ってんだか》
「スマホ充電してたのー」
《そうなんだ》
「ところでさ、白い服の美女には会った? 見失っちゃってさぁ、エレベーターの横についてる数字で最上階に行ったのはわかったんだけど」
《ああ、うん。白い服の人ね。会ったけど……姉ちゃんさ、色んなことに首つっこもうとするのやめなよ》
「何だった? 何かの事件とかだった? スキャンダルとかさ」
《自殺未遂だったよ》
「おおう、それはなんと……。ということは、おや、もしかして、おとうとが命救っちゃいましたか?」
《いや、どうなんだろうね。俺だけの力じゃないと思うけど》
「おとうと誇らしい」
《誇らしい、か。どうかな。なんか自殺しようとしてる人にドクズって罵られたけども》
「おお、ドがついちゃったの。ドっていうのは、あれだよ。すごく貴族っぽい。つまり橘・ド・良近だね」
《もう切って良いかな》
「今日、晩御飯何?」
《また俺の家に来る気かよ……》
「だって、おとうとの家さあ、すごいコンビニ近いし」
《百均もファミレスもあるしね》
「うん。害虫も出ないし」
《そだね、昔ボロアパートに住んでた頃は、いっぱい出たけど》
「冷房あるし」
《そうだね、都会の夏は無いと厳しいよね。でもね、ベッドが無いんだ》
「おとうとには、床がある。床は冷たくて気持ちが良いと思う」
《じゃあ姉ちゃんが床に寝るならいいよ》
「わかった、床にベッド置いて寝る」
《うん、何言ってるんだろうね》
「そいじゃ、後で家に行くから、先帰ってていいよ。あと、友達呼んでいい?」
《もう勝手にしたらいいけどさ、朝まで騒いだりするのはやめてよ? 明日仕事なんだから》
「わかってるわかってる。そいじゃね、また後で」
パーカー女は、通話終了ボタンを押した。
「というわけで、はんなに縞子。おとうとの家で遊ぼう!」
それに対して、桂はんなは、
「いいの? 弟くん難色を示してたみたいだけど」
「問題ナッシング!」
すると今度は嶋縞子が、
「私は、遠慮――」
「水臭いぞ、縞子」
「あなたは馴れ馴れしいですよ?」
「手厳しいっ! でも、来なかったら絶交だかんね!」
「だけど、帰って日記つけないと……」
「日記? そんなの紙とペンがあれば大丈夫でしょ。おとうとの家にも、そんくらいあるよ。無くても百均で買えるし」
「そんなに言うんだったら、少しだけ……」
「よっしゃー。じゃあメアド交換しよっ」
橘たちあながスマホを頭上にかざすと、二人はそれぞれ携帯を取り出した。
なんだか三人、友達になったようだった。




