26、自殺者根絶計画
霊界には、大きな橋がある。決して朽ちることのない、白い木材でできた橋である。
二人の半霊体の女が、霊界と現世の間、三途ブリッジの上で立ち話をしていた。その二人は、あいにゃんでもまいぬーでもなければ、桃井もこでも時田まことでも無かった。初めて登場し、今後は登場しないであろう、半霊体の女二人である。
「そっちはどう?」
「だめ、むりむり、死んじゃった」
「そっかぁ、こっちもだよ」
霊界警察における、まわされたくない課ランキングで、常に一位を獲得するものがある。
それが、自殺者根絶計画。
名前の通り、自殺志願者を踏みとどまらせることを目的としているのだが、悲しいことに止められても死ぬくらいに思いつめている人は大勢いるし、根絶計画を行う者のうち、説得がプロ並みに上手い者はごく少数なので、成功率が低い。
マニュアルなどというものも一切無く、目の前で死の瞬間を見届けてしまい、責任を感じて落ち込む人も少なくない。しかし、人の死との戦いだから、地獄的に辛いとはいえ、それに慣れてしまった者は死を何とも思わなくなる。
――大半の人間は死ぬのだから。
その死に方が違うだけという考えで自分をごまかし、傷つかない振りをするようになる。
数多いる根絶計画の担い手にとって、自殺者根絶計画は、いつか必ず通る試練の壁のようなものである。
自殺寸前の人間のところに降り立ち、説得したり無理矢理止めたりするという、計画とも言えないような計画。
他の根絶計画とは違い、一人の命を助けられるまで計画から抜け出すことができない。しかも、基本的に根絶計画の対象者となる者には、必ず更生する可能性というものがあるのだが、自殺者根絶計画においては話は別で、自殺を踏みとどまる可能性が全くのゼロである場合もかなり含まれている。
よって、余談であるが、霊界の人々がこの計画に名づけたのが、『罰ゲーム』であったりもする。
と、井戸端会議するように、自殺者の死に方についてを情報交換する女二人の横を、まいぬーが通りがかった。この時、まいぬーはミス連発した同僚のせいで連帯責任という形で自殺者根絶計画にとばされてしまっていた。
そのミスしまくった同僚二人は、自殺根絶計画なんてものにはまだ早いということで、片方はあだ討ち根絶計画というものに回され、もう片方は霊界にある刑務所の監視監督の任に就いている。
「あ、まいぬーさん。そっちは、どうでした?」
まいぬーは静かに首を振った。
「飛び降り? 集団ガス? 首吊り? 手首?」
まいぬーは答える。
「切腹」
「「うわぁ……」」
「馬鹿なじじいだった」
「いまどき切腹なんてする人、いるんだぁ」
「介錯が居なかったから、ものすごい悶え苦しんで、見ていられなかったね」
まいぬーは冷静に言い残して、二人を置いて、現世方面へと早足で去っていった。
残された二人は、二人の会話に戻った。




