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6、コンゼツ根絶計画  作者: 黒十二色
第一章 いじめ根絶計画
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17/54

17、車内にて

 流れる車窓。

 国産車は細い道から街道へと出たところだった。

「春木くん、おろして」

 江夏なつみは、春木すばるの運転する車に乗っていた。

 そもそも、連れ出してくれなんてお願いしたわけじゃなかった。無理矢理お姫様抱っこされて助手席に押し込まれたのだ。

 しかし春木は、「ダメだ」という。

「…………」

 江夏なつみは黙り込んだ。

「死のうかな、とか考えてる顔だ」

「そんなこと……」

 まったく考えておらず、春木の考えすぎだった。

「しかしまぁ、何だって秋川は、あんなクズになって」

「……………………」

「なんだ、この期に及んで、まだ信じてるのか? 江夏とは何もしない、江夏の居ない間に女呼んで遊んでる。いくらなんでもクズすぎる」

「あ、部長、信号」

 赤信号を見落として思い切り素通りしてしまった。クラクションが響いたが幸運にも激突することは無かった。事故らなかったから良かったものの、ひどいミスだった。

「おっと、しまった……あぶないとこだ」

「落ち着いてよ」

「ていうか、なんで江夏は落ち着いていられるんだ。何であいつのために江夏の大事な人生を……。そんなすごいやつなのか? あのバカが」

「……まぁ、そうだね。やさしいけど、あんま頭よくない人」

 そして江夏は、流れる風景を見つめながら昔話をはじめる。

「昔、んと、中三くらいかな。あたしがカテキョの大学生と付き合ってる、なんて噂が流れた時に、ちょっと学校で立場なくしかけてたんだ。なんでか、みんなよそよそしくなっちゃって。汚いようなもんでも見るような目で。でも、秋川だけは、ちゃんと普通に接してくれたっていうかね……あいつ、昔っから遅刻魔でさ、朝の微妙な雰囲気とか読めないやつでさ、とにかくいい加減で、あの遅刻の数みたらわかるでしょ。自由なやつなのよ。それで、あたしを避ける微妙な空気の中、遅刻して来た秋川が、何て言ったと思う?」

 信号が赤で、車が止まった。今度は見落とさなかった。

「…………さあ、見当もつかないな」

「『なんか江夏孤立してねぇ?』って言ったの。おっきな声で。何言うんだこのバカはって思ったけど、見たまんまを言っちゃう空気の読めなさがあってね、実際、あたしはそれですごい救われたんだけど、その時から、秋川のこと意識しはじめてさ、その日から秋川のこと蹴飛ばすようになって……うん、でも最近蹴ってないから、久々に蹴りたいなって思う。最後に蹴飛ばしたのは、高校時代だったかなぁ」

 信号が、青になって、車が走り出した。

「本当に、好きなんだな」

「そう。だから、Uターンして。おねがいっ」

「ま、事情きいてからでも、遅くはないか」

「うんうん」

「だけどさ、江夏」

「なに、春木くん」

「さっき扉を蹴飛ばした時の蹴りよりも、だいぶ弱めた方がいいぞ。愛する人を失うことになりかねないから」

「それは、秋川次第かな」

「はは、なるほど」

 車は、右に旋回する。

 街道の反対車線に乗った。



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