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続・片耳から「ピニャー」って聞こえるけど、俺にしか聞こえない精霊言語だったwww〜辺境伯編〜  作者: 康成


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春編9話「散策」

 レオ兄さんへ


 イケメン効果というものを知りました。顔のいい友人のおかげで思わぬ恩恵がありました。

 辺境の街は今日も平和です。そちらはどんな感じ?


 *──*──*──*──*


 

「おっちゃん、いるー?お客さん、連れてきたんだけどー!」

 作業中の鍛冶工房は声を張り上げないと届かない。

「ちょっと上がって待ってろ、坊主」

 お言葉に甘えてとルカと工房内に上がり込む。シルフィーはここの音に耐えられないだろうと、ゴルディの馬小屋にて留守番をしている。


「待たせたな、坊……」

 腰のあたりをガッと掴まれて、そのまま無言で引きずられた。背は低いけど、めちゃくちゃ力強いんだよ!

「えっ?何、急に」

 少し離れたところでやっと離された。

「……何でお前は毎度毎度。ありゃあ隣国から来たっていう凄腕の冒険者ってやつだろう?」

「うん。ルカのことだけどおっちゃん、よく知ってんね。ちょっと加工を依頼したいのがあるから、やっぱここかなと思って」

 パッと明るくなったおっちゃんの顔色は、一瞬の後に険しくなった。


「ルカー、こっちが親方のおっちゃん」

 こっちこっちとルカを呼ぶ。

「待て、坊主。俺はまだやるとは言ってないからな?!」

「お願いします」

 そう言って、例のシルフィーの牙を差し出すルカ。

 簡単な会話なら、読み書きも出来るルカだ。意外にも早く発話に慣れてきたとのことだ。


「リシアン」

 珍しく名前で呼ばれたかと思えば、またずるずると引きずられる。

「なんって物を持ってこさせてんだ!ありゃあ相当な魔獣由来の代物だろう」

「大丈夫。ちょっと耳飾りにでも加工してくれたらいいだけだから!もう魔法付与はされてるから、な?」

 いける、おっちゃんならいけるって。俺の装備品も大体ここで加工してもらってるしな。あと師匠も頼んでんだから、希少素材は見慣れているはず。

 見慣れているのとそれを加工するのとでは違うと怒られた。希少素材ゆえに少しの傷が致命的になるとの事だった。


「だめ、ですか?」

 ルカがしょんぼりとしている。その様子を見ておっちゃんも「うっ……」と言葉を詰まらせる。

「おっちゃんならって思ったのになー……別のアテとなると難しいし」

 畳み掛けると

「分かったよ、貸してみろ。希望は?使いたい金属があればそれも指定してくれ!」

 半ば自棄(やけ)になったようにおっちゃんが叫んだ。

 

「ありがとうございます。これで、お願いします」

 そう言って置かれた金属におっちゃんは崩れ落ちた。……やっぱ高ランクかつ色んな国を渡り歩いてるだけあるな。

 無造作に置かれた希少金属からはもう、俺はそっと目を()らした。 

「出来たら連絡して!なるべく急ぎだと助かる、わりとすぐ必要な魔法が付与されてんの。じゃあ、俺たちはこれで」

 また何か言われる前にグイグイとルカを押しながら、店を出た。


「あれでよかったの?」と聞いてくるルカに、いつもの事だからと流しておいた。

 大体いつもそんな感じだし。今回は耳飾りに仕立てるだけだし、数日中には呼ばれるだろう。安心していいよと伝えた。

 時間も中途半端だし、たまには街の散策もいいだろう。ルカは大体、冒険者が多く住む麓付近しか出歩かないみたいだし。


 屋台の香ばしい匂いに誘われるままにいつもの串焼きを二本注文する。

「あら、リシアン。またえらく男前を連れてきたもんだね!」

「隣国から来た冒険者のルカ。話すのにはまだ慣れてないみたいで」

……何か、いつもより多いな?と思いながら、一つをルカへ手渡す。

「あぁ、例の強い冒険者の人ね!やっぱり実力者っていうのは違うわねぇ……品があるわぁー」

 まじまじとルカを見つめる肉屋の女将。よそ見してると焦げるよ?と思っていたら、ノールックでひっくり返している。何なの、このプロの技。


 パクリと一口噛じって、目を丸くしているルカ。気に入ったみたいでよかった。肉屋で余った肉を秘伝のタレに漬け込んで焼くこの屋台のは格別。

 おいしいんだけど……また鹿か。たまには山鳥がいい。今度狩ってきたら肉はここへ売ろう。罠猟の親子が定期的に卸しているはずだけど、基本的に屋台にまで回るほどの量じゃないのが残念。

「いやー、いいものを見たわ。はい、リシアン。これはオマケね。またルカくんを連れてきて、絶対よ」

……あぁ、はい。短く返事をして屋台を後にする。

 

 麓側にないような店を中心にあちこちと歩く。兄上たちへ手紙を書くときに便箋を買いによく行く雑貨屋とか。

 古書店はルカも気に入ったようで、けっこう長めに滞在していた。寡黙な老店主もその様子をうんうんと眺めて満足気にしている。

「俺のことは冒険者に売る本はない!と追い出したのは誰だっけ?」

 師匠に頼み込んで一緒に来てもらい、やっとで店内に入れた時の事を思い出す。……ミレア姉さんに頼んでもよかったけど、入れてもらえないから着いてきてと頼むのは恥ずかしかったあの頃。

「……はて、そんな事もあったかのう?」

 わざとにすっとぼけた言い方をする老店主には、これ以上噛み付く気もおきない。


 店を出たら、菓子店の面子が待ち構えていた。……何なの?

「肉屋の女将さんから聞いたわ!ねぇ、ルカさんって甘い物はお好きかしら?」

 可愛らしくラッピングされた薬草菓子を持参している。

「あのね、店でちょっと売りには出せないものがでてお裾分けです」

 いや、どう見ても販売品だろ。少しも欠けてないじゃん、そのクッキー。あと見るからに新商品のショコラがある。そのドライフルーツで飾ってるのは俺も知らない。

 

『ルカにだって。甘いの平気ならもらってあげて?』

 こそっと伝えると

「ありがとぉ」

 とはにかみながらルカが言う。菓子店の女性陣は崩れ落ちた。少し辿々(たどたど)しい感じの破壊力が凄まじかったと俺の胸ぐらを掴んで、興奮気味に伝えてくるのはやめてほしい。本人に言え、本人に。

「あ、リシアンにもあげるね」

 ついでのように簡素ないつもの紙箱が渡された。重さからしてショコラが入っている。

「ありがと。また新しいの出たら教えてよ。そのうち店にも顔出すから」

 バルドレムさんに監修してもらうからいいと断られた。ジジイ、いつの間に。俺も監修の名のもとに心置きなく味見をしたかった。


 ぼちぼちと麓へと帰るけど、お土産が多い。イケメンと一緒だと思わぬ恩恵が……と思う。

『楽しかったね、リシアン。街の人たちはすごく親切だし……また行きたいな』

 うれしそうしているルカは、イケメン効果におそらく気が付いていない。

『ルカの良さが分かる人間が多かったな!また行ったときには通訳だってしてやるよ』

 トゥーリもご機嫌だし、この感じなら耳飾りの完成後は街の人とのコミュニケーションもとりやすくなることだろう。

 このまま辺境の街に馴染んで、拠点としてもらえたらいいなと思った。

 


 ❖──❖──❖──❖──❖


「もうっ、何であんな渡し方をしたの?」

「だってぇー……」

 菓子工房店には住み込みの寮がある。今日も一つの部屋に集まって、女子会が開催されている。

「最近あんまり来ないし……慌てて準備したんだもの」

「せっかくそのうち店に顔出すって言ってくれてたのに、何でバルドレムさん監修だからって断っちゃうの!」

 ラッピングから何からダメ出しがあり、詰められている方は涙目である。

 

「いきなり来られた日に寝癖があったら困るでしょう?前もって分かっていたらわたしだってぇ……」

「確かに……リシアンじゃなくてルカさんが来るなら私だって万全の準備で迎えたいわ」

「あたしも。本気を出さないといっそ失礼」

 甘い香りがする菓子工房の寮は、今夜も恋話で盛り上がっている。

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