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第21回 悪役令嬢と婚約破棄。

 ――お前との婚約は破棄させてもらうっ!

 ――お前が○○に酷い仕打ちをしたことは知っている! オレは〇〇を愛している! 新たな婚約者は、〇〇だ!


 ババーンッと始まる展開。

 大抵、学園の卒業パーティでくり広げられる『婚約破棄劇場』。

 宣言するのは公爵子息か、王子さま。

 ○○は、庶民の娘(聖女とかそういうの)か男爵、子爵令嬢あたり。

 言われて捨てられるのは、伯爵令嬢か公爵令嬢ぐらい。


 これ、面白いんだけど。――別のイミで。


 まず、悪役令嬢の地位。

 江戸時代の日本で言うなら、外様大名(それもトップクラスの)か、徳川御三家の姫君に相当する立場です。

 それに対して、町娘か、よくて下級武士(がんばっても貧乏旗本)の娘が、「私、あの人にイジメられましたの」って言ってるようなものなんだよ。

 アホか。

 ありえねえ。

 切腹モノだよ、そんなの。


 そして、王子の純愛っぷりもスゴイ。

 政治的思惑を無視して、愛を貫くんだもんなあ。

 現代日本の法律遵守。正しいキリスト教的夫婦関係。

 悪役令嬢を妻にして、○○を愛人、寵姫にするって考えは欠片もないらしい。

 「不倫は文化」なんて思想はない。ハーレムなんてとんでもない。

 ヨーロッパでいうなら、チャールズ1世(イギリス)か、ルイ16世(フランス)か。それぐらいしか、そんな妻とだけ純愛君主を知らない。(そして二人とも革命で殺されてる)

 妃、正妻なんて子を産む道具でしかないんだからさ。婚約破棄しなくてもいいんじゃね? 政治的思惑優先のはずなのに。好きになったぁ→結婚したいっ!→じゃあ以前の女は婚約破棄だあっ! 短絡的すぎ。

 女の立場からすれば、「死ねや、コラ」と言いたくなる思想だけど、断罪するよりは、政治的混乱を招くよりはまともだと思う。

 それに。

 一回そういうことやった男って、次も誰かを好きになったら、○○を捨てるよね。容赦なく。

 「オレが思うのは△△だけだ! ○○、お前を追放する!」なんて言ってさ。

 ヘンリー8世(イギリス)が王妃を6人とっかえひっかえしていったけど。あれは別に純愛の結果ではないです。愛人、いるし。

 王妃による男子出産。嫡子による王位継承のためのとっかえひっかえであって、それ以上でもそれ以下でもありません。

 まあ、自分がのし上がるために、悪役令嬢を蹴落とそうと画策する○〇なんだから、それぐらいの覚悟を持っているのでしょう。きっと。「自分だけを一途に想ってくれる優しい娘」とか王子は○○を評するけど、絶対優しくないよ、○○。


 それと、断罪ってなにさ。

 ヘンリー8世は二番目のアン・ブーリンとか処刑しましたが、あれはかなり特殊な例。

 そんなことをホイホイやっていたら、貴族が納得しませんよ。自分の娘を殺されて納得する貴族はいない。自分たちも連座で殺されるし。それも国を転覆させるような悪事を働いたのならともかく、町娘程度の女をイジメたからって。幽閉、追放はあり得ない。

 政治的混乱を招いた挙句、自分の感情一つで貴族の家名を傷つけるような断罪を繰り広げる王子。ざまあされる前に、クーデター起こされます。確実に。傍観者だった王さまも同じです。


 って考えてくと、ありえないんだよなあ。婚約破棄劇場って。

 でも、一番ありえないのは……。

 

 「乙女ゲームに悪役令嬢はいない」ってことなんだよ。


 リアル、ゲームでそういうキャラを見たことない。

 だんごは、ネオロマ系しか知りませんが(『アンジェリーク』は一作目のみ、『遥か』は4まで。『コルダ』は3まで)、そんなキャラいたっけ?

 『キャンディキャンディ』のイライザ・ラガン、もしくは『小公女セーラ』のラビニア・ハーバートみたいなものなのかな、悪役令嬢。古い少女マンガには、いっぱいいるけどな、そういうポジションの令嬢。


 物語としては面白いんだよ、「悪役令嬢モノ」。

 華々しくってドラマチックなんだよ、「婚約破棄」。

 ただ、ちょっぴり別のイミでも笑っちゃうんだよな、この二つ。というお話。

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