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令和コロナ騒動実録  作者: 澤村桐蜂
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令和2年8月最終週~同年9月第1週

8月31日(月曜)

 本年6月に中国共産党系の環球時報/Global Timesが「海外に出張する国営企業の従業員はCNBGのワクチン候補、二種のうち(いず)れかを接種出来る」と報じた。同国最大かつ国営の製薬会社が中国医薬集団総公司/China National Pharmaceutical Group Corporation/Sinopharmで、()の傘下に属する中国生物技術/China National Biotec Group Companyの略称がCNBG。月末には康希諾生物/Cansino Biologics Incが「人民解放軍の軍事科学院と共同開発している新型コロナウイルス用ワクチンを同軍に限定して使用する承認を得た」と発表し、翌7月に新型コロナウイルスの感染リスクが高い者に実験段階にあるワクチンを投与。

 中国の動きに対し、8月11日にロシアのウラジーミル・プーチン大統領が「自国で開発を進めて来た新型コロナウイルス用ワクチンを正式に承認した」と発表。自身の娘の一人も接種を受けたが、現時点では体調不良は報告されていない由。政府系のロシア直接投資基金が、此の国立ガマレヤ研究所のワクチン、Gam-COVID-Vacの開発を支援。旧ソビエトが1957年に打ち上げた人工衛星に(ちな)んで、通称を"Sputnik V "と命名。同基金のドミトリエフ総裁は、スプートニクⅤはエボラウイルスのワクチン研究を応用したもので「第3相試験前でも安全性と有効性が確認出来る」と主張するも、臨床試験の情報は未公表。「12日から数千人を対象に第3段階の治験を開始する」方針を明らかにしたが、効果や副作用が確認されない段階での承認に対して国内外から批判有り。

 更に今月23日、中国生物技術/CNBGがInstant Messengerの微信/WeChatで「ワクチン候補が緊急使用許可を得た」と発表。同社は治験の第3段階にある二つのワクチン候補を所有するが、何方(どちら)の候補が緊急使用許可を得たのかは不明。28日には「感染の危険性が高い医療関係者等を対象とした計画」の一環として、バイオ医薬品会社の科興控股生物技術/Sinovac Biotech Ltd.のワクチン候補"CoronaVac"の緊急使用が承認されたと関係筋が発言。同日夜に国営の新華社通信が「7月に開始された緊急使用プログラム向けに、二つのワクチン候補が6月に承認された」と報じるも、投与されたワクチンや投与された人数等の詳細は発表されていない。

 現時点で治験の最終段階に入ったワクチン候補は七つと聞く。うち四つが中国で作られたそうだが、安全性や有効性を確認する最終段階の大規模治験を終えたものは(いま)だ無し。


9月1日(火曜)

 安倍首相の後任を選ぶ総裁選に於いて、昨日に自民党の二階派、麻生派、細田派と云った主要派閥が相次いで(すが)義偉(よしひで)官房長官の支持を表明。二階(にかい)俊博(としひろ)幹事長に依る電光石火の仕掛けで"dark horse"が瞬く間に本命に変わり、岸田(きしだ)文雄(ふみお)政調会長や石破(いしば)(しげる)元幹事長は不意を突かれた旨の報道有り。

 相対する野党側では先月19日、国民民主党が両院議員総会で立憲民主党との合流に依る新党結成を決定。立憲の所属議員は全員が新党に加わる意向を示すも、国民の玉木(たまき)雄一郎(ゆういちろう)代表は不参加を明言。合流新党は無所属の議員も含め、衆参合わせて150人超となる見通し。彼等は合流新党と呼ばれて居り、代表選挙が今月7日に告示、投開票が10日に行われる事、新党の名前を決める投票も同時に行われる事等も報じられた。

 時代は再び変わり()かんとして()るけれども、其の中で国民の期待を(にな)うに足る為政者(いせいしゃ)は現れるのだろうか。


9月2日(水曜)

 自民党総裁選への出馬を表明した菅義偉氏が本日夜にテレビ出演。「安倍総理の纏めたコロナ対策を実行に移して行く」と語り、新型コロナウイルス感染対策を主眼に安倍晋三首相の政策を継承する旨を強調した。新型コロナウイルスに関し、氏は「特にインフルエンザのシーズンと重なって、拡大する懸念が有る」との見方を示し、()ず「欧米の様な爆発的な感染拡大は絶対防ぐ」が、其の上で「社会経済活動と両立させて行く」と述べた由。言うは(やす)く、行うは(かた)し。

 先月21日に会合で新潟県燕市(つばめし)の教育長が「コロナ()を解消する方法は何処(どこ)かで大きな戦争が発生する事」、「中国と米国が自国以外の地域で戦争を始めれば金が動く」ので「経済が上向く契機になるのでは無いか」との内容を文書および口頭で表明。出席した委員や職員からは何ら批判されなかった様だが、後に外部からの指摘で発覚。31日の時点で市のwebsiteへ「社会全体に閉塞感のようなものが有り、打開する方法として、戦争や紛争を始めてしまうのでは無いかという人間の愚かさを憂いたもの」が「大きな誤解を与えてしまった」と教育長名義で弁明が出るも、批判の声は鳴り止まず。本日に緊急の記者会見を開き、今月下旬に辞任する意向を明らかにした由。「小人(しょうじん)、閉居して愚言を為す」という所か。


9月3日(木曜)

 米国の疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention; CDC)が、先月末に「新型コロナウイルスに対するワクチンが10月末~11月初めにも一部で利用可能になる」「接種準備を進める様に」と全米各州及び大都市の保健当局に通知した旨の報道有り。

 米国では国内のモデルナやファイザー、英製薬大手アストラゼネカが開発する新型コロナウイルス用ワクチンが最終段階に相当するphase Ⅲの治験に入り、それぞれ3万人規模が参加するそうだが。何れのワクチンが利用されるのかは不明。食品医薬品局(Food and Drug Administration; FDA)は、治験終了前でも安全性や効果が確認されれば、通常の薬事承認を経ずに緊急時の使用許可を出す方向で検討している模様。


9月4日(金曜)

 新型コロナウイルス流行が原因で妊娠中の感染リスク、或いは収入減に依る「()(びか)え」が広がっているとの指摘を受けて、厚生労働省が緊急調査を開始。都道府県を通じて全市区町村が今年1~7月に受理した妊娠届の件数を確かめ、前年同期と比較するそうだが、東京都港区では5~7月の妊娠届の受理件数が前年同月比で二三割の減。

 民間企業が6月に実施した先行調査では、次回妊娠を希望していた母親の3割が、感染拡大に因り妊娠の断念や延期を決断。経済的な不安や胎児への影響等が理由として挙げられたが、識者は「全国の産院の分娩(ぶんべん)予約も減っており、少子化への深刻な影響が懸念される」と主張。厚労省に依ると昨年の出生数は86万5234人で、初めて90万人を割り込んだ由。コロナ禍が(もたら)す未来先取りの一例か。


9月5日(土曜)

 8月13日の時点で、某専門局放送にて国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長が発言。ロシアが新型コロナウイルスのワクチンを承認し、供給体制を整えている旨の報道に対し、米国で新型コロナ対策を牽引(けんいん)するファウチ氏は「ワクチンを作製する事と、其れが安全かつ有効である事の証明は別」との見解を示した。しかし、昨日に英国のLancet誌が、ロシアのワクチンに関して「初期の臨床試験で抗体反応が見られた」との試験結果を掲載。

 同誌が伝える所によると、当該のワクチンは「76人の参加者全員に強い免疫応答を誘発した」由。しかし「此等(これら)の結果はロシア保健省に利用可能」な事や臨床試験の規模が小さ過ぎる等から、米国食品医薬品局(FDA)や欧州医薬品庁等の各国当局がワクチンを承認する為の根拠としては不十分と言わざるを得ない。「免疫応答は保護の程度に直接比例しないかも知れない」が、其の答えは「大規模治験でしか見つからない」と、LondonはImperial College London の実験医学教授、Peter Openshaw氏は語った。斯くの如き批判に露西亜(ロシア)側は「攻撃的な態度」で応じ、「スプートニクVに対する誤報と戦う為の正確で最新の情報を提供する」為の公式サイトを設立した由。


9月6日(日曜)

 小笠原近海の熱帯低気圧が台風10号に変化。進路の海面水温が30℃以上と高温な為に日本列島に近づいても勢力を維持、或いは発達を続けるものと推定され、特別警報の発令を取沙汰(とりざた)する報道有り。台風の特別警報は中心気圧が930ヘクトパスカル以下、若しくは最大風速が50メートル以上に達すると予想される場合に暴風・高潮・波浪を対象に発表される。しかし、台風災害の頻発する沖縄や奄美では、910ヘクトパスカル以下、若しくは60メートル以上と基準が異なる由。

 結局、特別警報の発令には至らなかったものの、本日未明から午前5時半に十一の県の合わせて(およそ)410万世帯、882万人に対し、台風10号接近に伴う避難指示や避難勧告が出された。先々月の記録的豪雨で被害を受けた熊本県人吉市では従来より避難所が増設されるも、感染対策で密集を避けねばならぬ状況も有り、熊本県と人吉市が広域避難を決定。住民30名程度が午前の(うち)に検温を済ませて2台の大型バスに分乗し、90キロ離れた熊本市に移動。避難所となる熊本県立劇場に到着すると、地下の楽屋等に仮寝(かりね)の宿を構えたとの事。


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