第5話「分断」
ドンッ!!”
衝撃が、まだ残っている。
空気は重いまま。
街は壊れかけている。
「私きれい?」
至る所で、同じ声。
止まらない。
神父が即座に動く。
「分断します」
一拍。
「このままでは全域に拡散します」
ゆたかが頷く。
「どう分ける」
神父は短く答える。
「本体と現象」
一拍。
「同時に処理します」
ななが顔をしかめる。
「簡単に言うなや」
人面犬が笑う。
「やるしかねぇだろ」
神父が続ける。
「本体を抑えなければ、拡散は止まりません」
一拍。
「ですが、現象を放置すれば都市が崩壊します」
沈黙。
全員が理解する。
“どちらも必要”
ゆたかが決める。
「ほな分かれる」
一拍。
「本体は俺らや」
桃太郎を見る。
桃太郎が頷く。
「承知した」
人面犬も笑う。
「付き合ってやるよ」
ななが言う。
「ほなウチは?」
神父が答える。
「私と共に来てください」
一拍。
「現象の拡散を抑えます」
ななが歯を食いしばる。
「……やるしかないか」
ゆたかが振り返る。
「無理すんなよ」
ななが笑う。
「誰に言うてんねん」
一瞬。
軽くなる空気。
だが——
すぐに戻る。
現実に。
本体が動く。
「……逃がさんで?」
笑う。
歪んだまま。
地面を蹴る。
“ドンッ!!”
一瞬で距離を詰める。
桃太郎が前に出る。
受ける。
衝撃。
火花。
ゆたかが横に回る。
「行くで」
人面犬が叫ぶ。
「奥だ!!」
三人が一気に動く。
本体を押し込む。
路地の奥へ。
さらに奥へ。
“隔離”
ななが振り向く。
背後。
街。
混乱は広がっている。
神父が言う。
「急ぎます」
走る。
人混みへ。
だが——
人々の様子がおかしい。
誰もが何かを気にしている。
誰かを見ている。
誰かに見られている。
「私きれい?」
一人。
また一人。
増える。
ななが叫ぶ。
「やばいやろこれ!!」
神父が冷静に言う。
「視線を断ちます」
一拍。
「“見せない”ことが対処になります」
ななが理解する。
「つまり……」
スカーフを外す。
近くの女性の目を覆う。
「見るなってことやな」
神父が頷く。
「はい」
一人。
また一人。
視線を遮る。
すると——
「……あれ?」
正気に戻る。
崩れかけていた人間が、止まる。
ななが息を吐く。
「効いとる……!」
だが——
数が多すぎる。
神父が言う。
「範囲を広げます」
一方——
路地裏の奥。
ゆたかたち。
本体と対峙。
空気が重い。
完全に切り離された空間。
人面犬が言う。
「ここなら外には広がらねぇ」
ゆたかが構える。
「終わらせるで」
桃太郎も並ぶ。
今度は——
完全に戦う目。
本体が笑う。
「……やれるもんなら」
その瞬間。
“静寂”
また来る。
あの感覚。
今度は——
全員が気づく。
声。
はっきりと。
近くで。
「分けても無駄だ」
一拍。
「すでに広がっている」
ゆたかが舌打ちする。
「……出てきよったな」
神父はいない。
だが——
確信する。
“黒幕”
桃太郎が低く言う。
「姿を見せろ」
沈黙。
返事はない。
ただ——
視線だけが残る。
見られている。
ずっと。
本体が笑う。
さらに歪んで。
「ほらなぁ」
一拍。
「一人やないねん」
空気が揺れる。
さらに重くなる。
ゆたかが前に出る。
「関係ないわ」
一拍。
「全部まとめて終わらせたる」
人面犬が笑う。
「いいねぇ」
桃太郎が構える。
静かに。
だが——
強く。
■ 第8章 第5話 終




