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第十話<早まる出現>-1

暗い夜道を全速力で走る蘭子。

その後ろには在りえないモノが宙を飛んで追いかけている。

「魚が空を飛ぶなんて反則もいいところでしょ!!」

血相を変えながら嘆きに近い独り言をぼやく蘭子。すると空中から櫻子が飛んでくる。

「蘭子ちゃん、次の角を右!!」

心配そうな櫻子に視線を向ける余裕がないまま曲がり角に差し掛かると

あまりの勢いの為に少し大回りになってしまう。

しかし体勢を少し崩しながらも、なんとか曲がると目の前に人影が見えた。


「蘭子さん、そのまま走り抜けて!!」

街灯の下で矢子が小太刀を居合い抜く構えで叫びかける。

すると言われたとおり、全速力で走り抜ける蘭子。

「やぁぁぁぁ!」

蘭子が横を通ると、矢子は魚の怪物を瞬時に目で捉え、

綺麗に斬りつける。

体が二つに割れ、そのまま地面に落下する怪物。


「やったの!?」

足を滑らせながら、勢いを止めて振り返る蘭子。

しかし目に入ったのは焦った表情で振り返る矢子だった。

「蘭子さん、もう一匹は!?」

「えー付いてきてないの!?」

急いで周囲を見渡す蘭子。すると自分の走ってきた方向から

人が歩いてくることに気が付く。

「あ、それなら俺がやったよ。」

琴和が左手に鯉のような魚の怪物を尻尾から逆さ吊りに持って寄ってくると、

矢子の足元に散らばる怪物のそばに鯉を置く。


「いつの間に・・・?」

琴和のそばにしゃがみこんで、不思議そうに持ってきた怪物を見る蘭子。

「ああ、目の前を蘭子が通った時にナイフを投げたんだ。

そうしたら見事に刺さってさ。」

「良く当てられたね。」

関心そうな目で見上げる蘭子。

その間に矢子は小太刀を布で簡単にふき取ると、鞘にしまう。

「ところでなんでこの場に魔物を持ってきたんですか?」

刀を布の入れ物にしまいながら矢子が聞いてくる。

「いや、だってこれから禦の人が回収にくるんだ。

集めていた方が手間が省けるでしょ?」

「でも手が汚れますよ。」

そう言うと布を手渡す矢子。そして「ありがとう。」と言って、布を受け取り手を拭う琴和。



「平気か、お前ら!?」

甲子郎が銃を片手に走ってくる。

「ええ、丁度終わったところですよ。」

誇らしげに怪物を指差す蘭子。

その様子を見ると頭をかく甲子郎。

「そ、そうか。」

銃をしまうと、電話を掛け始める。

他の禦の局員に連絡を取って、怪物の回収を依頼しているのであろう。


「大丈夫、怪我は無い?」

櫻子が蘭子のそばに寄って聞くと、平気そうに答える蘭子。

そして琴和に時間を尋ねる。

「後10分で23時だね。」

「じゃあ今日はもう終わりですね。」

時間を聞くと、矢子がそう言う。

「じゃあって、もう刀をしまって帰る準備してたじゃない。」

「意地悪しないでくださいよ。」

蘭子の突っ込みに対して矢子はそう言いつつ、手に持った布を顔に近づける。

「うわ、生臭!!」

「魔物になると、匂いもきつくなるようですね。」

「だったら、それ近づけないで!!」

真面目に電話をしている甲子郎を背に、はしゃぐ二人。

彼女たちの声は、静かな夜を少し賑わせるものだった。

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