第六話<仮面>-4
「一体何を買うんですか?」
櫻子が街道を歩きながら琴和に聞く。
現在は夕方になり、蘭子はアルバイトに行った。
琴和はバイト先まで彼女を送ると、
櫻子も待っている時間は暇だろうと思い、
一緒に買い物に行くことにした。
買うものは、蘭子の家の設備を作るのに足りなかった
材料だった。
「そうですね、とりあえず木材ですね。
あと、非常食とかも買っとこうかな。
それと電池とか懐中電灯とか・・・」
「何か防犯というより災害に備えている気が・・・。」
「ええ、あの家にはそういうものが何もないんですから。
いい機会ですよ。」
「あはは・・・。」
苦笑いをする櫻子だったが、確かにそうだなと感じていた。
夕方ともなり、帰宅する人が増えてくる。
それに伴って、店にも人が増えてきて街は賑やかになっていく。
その人ごみを見て、琴和は櫻子に話しかけた。
「この中にどのくらい幽霊がいるのでしょうかね。」
少し変な質問だったので、不思議に思うものの、
あまり気にせず返答をする櫻子。
「そうですね、小田原さんは分かりますか?」
そう聞き返されると、琴和はあたりを見渡した。
「あのメガネをかけている中年男性はそうかもしれませんね。」
すると櫻子は軽くうなずいた。
「ええ、そうですね。やっぱり何か違いが分かりますか?」
「ええ、なんとなくですけどね。櫻子さんは何で分かったんですか?」
「私は、あの方と同じ世界の存在ですから。同じ匂いという表現でいいのかな。」
すると琴和は軽く笑った
「そうですか。櫻子さんの見分け方を聞けば
自分でもわからない”なんとなく”の正体が分かると思ったのに。」
そうやり取りをしながら、デパートに入る二人。
エスカレーターを利用して次々と目的のものを探していった。
その中で琴和は櫻子がティーカップを見ていることに気が付く。
「綺麗な食器ですね。」
「え、ああ。そうですね。」
急に話し掛けたので、櫻子は戸惑った。
「あの、私に話しかけると独り言のように見えちゃいますよ?」
「別にいいですよ。周りには誰もいませんし。」
そう言うと櫻子は体を琴和の方に向けて話しかける。
「次は何処に行きますか?」
すると琴和は櫻子に質問をした。
「そういえば櫻子さんって食器どうしているんですか?」
「え?食器?」
いきなり変な質問で戸惑う櫻子。
「あれ?毎日蘭子から水とか食べ物をお供えしてもらっているんじゃ?」
「あ、ああ、あの家にあった食器使ってます。」
ようやく理解したようで、少し慌てて答える櫻子。
「じゃあこれを買っていって櫻子さん専用にしちゃいましょうか?」
「えええ?」
笑顔で琴和が提案すると驚く櫻子。
「幽霊のために食器を買うなんておかしいですよ!」
「何言ってるんですか。これも供養の一環ですよ。
それにコップくらい自分用があった方がいいです。」
「でも悪いですよぉ」
そう櫻子が言っても、琴和は聞く耳を持たなかった。
「どれがいいんです?他にも色々ありますよ。」
すると櫻子は最初は遠慮していたものの、食器売り場を回り始めた。
しかし、結局は一番最初に見ていたティーカップが一番気に入ったようだ。
その様子を見ると、琴和はそのティーカップをレジまで持っていく。
「これからは充実した食事ですね。」
「はい!」
琴和の厚意に喜びを感じた櫻子は何度もお礼を言った。




