第四話<ジャーナリスト>-7
「・・・なるほどね。とても興味深い話だ。」
蘭子の説明が終わると甲子郎は軽くうなずいた。
「瀬戸さんは超常現象的なことに多く関わってきたんですよね?」
琴和が甲子郎に質問をすると、何気ない素振りで答える。
「ああ、それなりにな。」
「じゃあお聞きしますが、僕たちの例はどう思いますか?
本当にこれで良かったとか、こうすべきとか何か参考になるお話が聞きたいんですけど。」
すると甲子郎は少し空を見上げて考えた後口を開く。
「あー、そうだな。
まだ色々と質問してからじゃないと答えは出ないだろうが、
とりあえずその櫻子さんだっけか?悪い霊には見えないし
何より取り憑く者も、取り憑かれる者も合意した上でのことだから
問題ないと思うぜ。こんなケースは見たことないけどな。
しばらくは様子見ってとこだな。」
その答えを聞くと蘭子は質問をする。
「あの、じゃあ何か霊にやってあげた方がいいことってありますか?
例えばお経を読んであげるとか。」
すると甲子郎は蘭子を見てこう言う。
「いや、お経とか聖書とかは必要なさそうだな。
そもそもアレは霊と心を通わせるための手段に過ぎない。
詳しい原理はまあ、省くがアンタらはもう会話できているから
必要ないな。」
「原理なんてあるんですか・・・?」
「んあ?ああ、まあ簡単に言うと霊と心を通わせる方法としては
霊のことを思う気持ちでいっぱいにするんだ。
そうすると心が通って不思議と霊が言いたいことが伝わってくる。
その方法の一つとして
お経や聖書を読むってのがある。
あれをすると神聖で霊的なものという固定観念から
不思議と霊のことを思う気持ちで満たされる。
でもまあ声を聞くことは相当の修行が必要だけどな。」
すると甲子郎の懐から携帯電話の着信音が鳴り始めた。
着信者を見ると琳からである。
「ちょっと失礼するよ。
・・・ああ、俺だ。
んあ?早く迎えに来い?
おいおい、さっき電話を切ってから30分も経っていないぞ?
今どこだって?公園だ公園・・・
そう、その公園。
あ?そんなのいいって?あのなあ、
俺は仕事中だぞ?
・・・はい、失礼いたしました、直ぐ戻ります。」
電話を切るなり、甲子郎は頭をかいて三人を見た。
「・・・悪い、急用でもう行かないといけなくなった。」
「お仕事ですか、大変ですね。」
櫻子が初めて口を開く。すると甲子郎は少し微笑む。
「ああ、これからワガママな奴の相手だよ。
・・・こんなことを言うのもあれだが、
生前に何があったか知らないが今を楽しんでいればいい。
死んでも人の意思は続くものだ。何かあったら相談してくれてもいい。」
そう言うと櫻子は笑顔で答えた。
「有難うございます。」
その様子を見て蘭子は甲子郎に話しかけた。
「あの、また何かあったら連絡していいですか?」
すると甲子郎は答える。
「ああ、さっき渡した名刺の番号に電話してくれればいい。
俺も興味がある件だ、歓迎するよ。
じゃあな。」
甲子郎は立ち上がり、三人に背中越しで手を振って
その場から去っていった。
甲子郎の後姿が見えなくなると琴和は蘭子に質問をする。
「結構説明を省いていたな・・・。
あの怪物のこともひょっとしたら知っていたかもしれないし。」
すると蘭子が答える。
「うん、でも瀬戸さんってジャーナリストでしょ?
あまりにも、とんでもないことばかりの私たちの状態を
全て伝えたら記事にされるかなって。
櫻子さんとは静かに付き合っていきたいなって思ったの。」
「なるほどね。」
「でも顔はちょっと怖かったけど、いい人っぽかったね。
色々と知ってそうだったし。
もうちょっと信頼できると思ったら
詳しく話しをしてみようよ。」
「そうだな。」
「じゃあお昼にしよう。お腹すいたよ。」
蘭子がそういうと三人は再びパスタ屋に向かい始めた。
<第四話 ジャーナリスト -終->




