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10 勇者様の正体

 聞き間違えた?


「当然の反応ですね。これからその理由はお話します」


 クレーベル様は特に気にした様子もなく淡々と話初めた。


「あなたも噂くらいで聞いた事があるでしょう。

 ユウさん。勇者様はこことは違う世界からいらっしゃった、私たちが召喚したのです。

 勇者様には当然、常人とは思えない力を持ちこちらの世界に来ていただきました。それこそ、一国が滅ぶ程の。幸い、ユウさんにはその気は無かったようで安心しましたが」


 そう言ってクレーベル様はユウ様のほうに微笑みかけたが、ユウ様は気にした様子もなく。


「ですが、ユウさんはそう思わなくとも他の国はそう思っていないようで。我が国ロナードが勇者様のお力を軍事的に使用するのではないかという話が出ているのです。


 そして、ユウさんと関係を持とうという国、貴族は数多もいる状況です。が、そう安々とユウさんを取られるのも我が国としても、というのがあるのです。



 そこで、あなたにはユウさんの偽の婚約者になっていただきたいのです。」

「な、なぜ?」


 思わず、本音が出てしまった。

 いや、話してることは分かるけど。別に私じゃなくても……いやでも、偽とはいえユウ様の婚約者になれる?

 いやでも~~


「ふふっ。当然の反応ですね。


 ここからはユウさんと話して頂きましょう。アレルさんにとって選択肢は無いのですから」


 そう言うとクレーベル様は部屋から出ていってしまった。

 今、部屋でユウ様と二人っきり……気まずい。


「ごめんね。今日まで話さないでって言われてたんだ」

「い、いえ。そんな」




「"私"、女なんだ」





「え?」


 私は自分でも分かるくらい素っ頓狂な声をあげたと思う。


 それを聞いたユウ様は少し笑った。


「嘘じゃないよ。

 色々言われててね。外では男として振る舞えって。

 流石に結婚するってなると騙せないだろうし、貴族とかと何かするのも大変そうだし。色々と、利害の一致って感じかな」


 ユウ様は俯きながら話してくれた。


「改めて、ごめん。

 面倒臭いことに、私のわがままに巻き込んじゃって。それも、あなたに選択肢がないような状態で」

「そんな。頭を上げて下さい」


 ユウ様が女性だった……確かにそう言われてみると雰囲気はあるような、無いような?


 ん?

 つまり、私の初恋の人。

 女の人だったの!!?


 いやっ!

 もう決めてるんだ!

 それに、べべべべ別に女性同士のけけ結婚も別に……って何考えてるの!!!

 そうじゃないでしょっ!!


「ユウ様! 私はもう決心してます!

 私はこれから付き人として……こ、婚約者として精一杯がんばります!」

「アレル……ありがとう。これからよろしく」


 ユウ様は静かにそう口にした。


「はいっ!」




「よし。それじゃあ行こうか」

「どこにですか?」

「アレルがこれから働くところ。荷物はそれだけ?」

「は、はい」

「よし!」


 ユウ様が右手を前に出すと私たちを囲うように白く輝く円が現れた。


「あっあの!? これは!!?」

「大丈夫。眩しかったら目瞑ってていいから」


 すると、突然視界が真っ白になった。



「アレル。目開けて大丈夫だよ」


 しばらくしてユウ様がそう声をかけてくれた。


 恐る恐る目を開けると、外にいた。正面には見たこと無いような真っ白い石造りの豪邸がそびえ立っていた。


「ここは私の家。

 そして、これからアレルに働いてもらう場所だよ」


 正面の豪邸は木々に囲まれている。大自然の中にあるという不自然な状況にも関わらず、凄く綺麗だと思えるほど、元からそこにあったのでは無いかと思える程に調和が取れた空間が広がっていた。


「さ、ついて来て」

「はぃ……」


 正面の門を通り、少し歩き、ユウ様が玄関の扉を開けた。

 中は外と変わって、木材が主に使われている。


「靴はここで脱いで、これに履き替えてね」


 玄関の扉から入って廊下までの間に段差がある。この段差の上は外の靴はダメってことなのかな。

 言われた通り履き替えたけど、ちょっと動きづらい。慣れるまで大変かも。


「あの、クレーベル様に最後に話さなくて良かったんですか?」

「……大丈夫だよ。あの人も忙しいだろうし。

 さ、アレルの部屋まで案内するよ」


 なんか、ユウ様とクレーベル様仲悪いのかな。

 この時の私はそのくらいのこととしか思っていなかった。


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