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錬金術師さんと大繁盛

…………………


 ──錬金術師さんと大繁盛



「エステル師匠ー! もう中級体力回復ポーションも、上級体力回復ポーションも残ってないですよー! それなのにお客さんがたくさんー!」


「ええい! 品がないなら追い返しな! うちは大店じゃないんだよ!」


 最近、ボクたちは大忙し! 何せ、シュトレッケンバッハの山のダンジョン──“大図書館”の存在が公表されてからというもの、冒険者の人がポーションを求めて押し寄せてくるのだ! それも尋常じゃない数で!


 中にはA級冒険者もいるらしくて、上級ポーションをポンと買っていく。むしろ低級ポーションはダンジョン探索の際にお荷物になるせいか買い求める人はすくない。


 低級ポーションは低級ポーションでエルンストの山の麓の物産館で売れるからいいのだが、材料が希少な中級、上級ポーションは製造が追いつかない! 恐らくこの村にある全ての素材を使っても、今の冒険者の人たちの需要を満たすのは不可能だ!


 さてはて! 困った、困った!


「リーゼ君。忙しそうだな」


「忙しいですよ、ヒビキさん! 材料は足りないのにポーションの需要だけ増えて!」


 玄関先で冒険者ギルドから戻って来たヒビキさんが告げるのに、ボクはそう告げて返す。本当に忙しい、忙しい!


「ヒビキさん。素材の採取に──と思ったんですけど、ミーナさんとダンジョンに潜るんでしたよね……」


「ああ。ミーナ君が張り切っている。俺としても彼女の意向は無視したくないが、ポーションがないというのはちょっと問題だな」


 ヒビキさんも連日“大図書館”に向かっており、他の冒険者の人たちと一緒に“大図書館”を探索中だ。ミーナさんはダンジョン探索のためにヒビキさんのパーティーに加わったくらいだからね。それはもうダンジョンに潜りまくるよね。


 というか、村の冒険者の人たちもダンジョン探索に向かったせいで、なかなか素材採取のクエストが受けてもらえないのだ! いつもならお小遣い稼ぎ程度にクエストを受けてくれる冒険者の人たちがいるのに、今年はほぼ皆無!


 それなのにポーションの需要は高まるのだから、困った、困った!


「俺たちもちょうどポーションが必要で来たのだが、素材がないのではな。一度、採取クエストを引き受けようか?」


「本当ですか!? 助かります、ヒビキさん!」


 やったー! ヒビキさんは頼りになるー!


「じゃあ、ラインハルトの山に薬草採取に向かいましょう! シュトレッケンバッハの山は冒険者の人たちがうろついてるせいで魔獣はでないんですけど、ラインハルトの山は未だに魔獣が出没しますからね」


「うむ。では、ミーナ君たちにそう伝えてこよう」


 というわけで、ボクたちは大繁盛の裏で困っている素材不足を解消するためにラインハルトの山を目指して出発した!


 うちで栽培しているテンキュウ草は愛着が湧いちゃってむしれなくなっちゃったから、ラインハルトの山ではテンキュウ草を確実にゲットしておきたいところだ。テンキュウ草は上級体力回復ポーションの材料にもなるしね。


 さあ、いざ進めや、ラインハルトの山!


 上級ポーションが売れている今だからこそ、しっかり稼いでおきたいものだぞ!


…………………


…………………


 というわけでやってきました、ラインハルトの山!


 一番のお目当てはテンキュウ草だけど、その他の素材の採取も忘れない!


 何分、今の状況からして採取できるうちに採取しておかないと、次はいつ採取にこれるか分からないのだ。冒険者の人たちは“大図書館”にかかりっきりだし、エルンストの山はともかく、ラインハルトの山は未だに危険だしね。


「というわけで、頑張ってテンキュウ草を探しましょう!」


「うむ。理解した」


 ヒビキさん、ユーリ君、レーズィさんは頷いてくれたけれど、ミーナさんは何か不服そうな顔をしている……。


「ミ、ミーナさんはクエスト反対でした?」


「そ、そんなことはないデスよ! 私たちもポーションが必要でしたし! ただ、今も“大図書館”は他の冒険者に攻略されていって、世紀の大発見が他の人の手柄になってしまうのではないかと思うと……」


 はあ、とため息を吐くミーナさん。


 ミーナさんは遺跡にかける情熱が半端ないので、気持ちは分かる。前々から目を付けてたもんね、“大図書館”には。情報が公開される前からやってきてたし、できれば最深部まで一番乗りしたいだろう。


 だけれど、準備も大事だと思うな! ポーションがないと途中で力尽きちゃうかもだよ! 疲労回復ポーションも、体力回復ポーションも、魔力回復ポーションもたっぷりと持って行かなくちゃ!


「この素材採取のお礼にポーションはミーナさんたちに優先して販売しますから。他の冒険者の人たちに買い占められないように、取り置きもしますよ!」


「それは助かります! このままポーションがなければ、トールベルクの街まで買いに行かなければとまで考えていたデス!」


 うんうん。我ながらいいアイディア。


「リーゼ君。他の冒険者たちに薬草の判別は付くのだろうか?」


「ええっと。付く人は付くと思いますよ。野外でポーションがないときに応急手当したり、ボクたちの薬草採取に付き合ってくれた冒険者の人たちなんかは」


 ヒビキさんが尋ねるのにボクがそう返す。


「ならば、冒険者に素材を持ち寄ってもらえばどうだろうか? 自分の欲しいポーションの材料を持ち込んでもらえば、リーゼ君も素材不足とはならないだろう。対価は多少ポーションの価格を値引きするなどして応じるのは?」


「ふむ。悪くないアイディアです、ヒビキさん!」


 自分の欲しいポーションの素材を自分で持ってきてもらったら後は処理の方法を知っていて、錬金釜も持っているボクたちの仕事。


 ボクは素材採取に行く手間が省けるし、冒険者の人はポーションが手に入る。


 いいアイディアだ!


「後でエステル師匠に相談してみますね!」


「うむ。そうしてみてくれ」


 ナイスアイディアをありがとう、ヒビキさん!


「それはそうと今回はなんとしてもテンキュウ草を探さなくちゃです」


「テンキュウ草だな。特徴的な見た目なので覚えている」


 というわけでボクたちはラインハルトの山を探索。


 前回、テンキュウ草の群生地があった場所は何も残っていなかった。テンキュウ草は味としても美味しいのか魔獣が食べちゃうこともあって、なくなりやすいのだ。まあ、テンキュウ草はその性質を利用して、自分の種を魔獣のフンに混ぜて運ばせるんだけど。


 さてさて、テンキュウ草はどこかなー?


 とやっていたら、何やら羽音が聞こえる。


「ヒビキさん!? これって魔獣ですか!?」


「確かに魔獣だが警戒する必要はない」


 ボクがうろたえるのにヒビキさんがそう告げて、上空を見上げる。


「ブラウ君!」


 舞い降りてきたのは確かに警戒する必要のない子だった。ブラウ君だ。


「ヒビキ。ここで何してる? ダンジョン探索はいいのか?」


「ダンジョンも探索しなければならないのだが、リーゼ君がポーションの素材を切らしていてな。それを探すのを手伝っているんだ。ブラウはどうして、シュトレッケンバッハの山ではなく、ラインハルトの山に?」


「シュトレッケンバッハの山は今他所の人間でいっぱいだ。他所の人間は自分を見ると怖がって攻撃しようとしてくる。痛いのは嫌だし、攻撃されるとその冒険者は怒られる。冒険者ギルドが自分を攻撃しないように通達したってクリスタが言っていたから」


 ブラウ君ってばもうすらすら喋るんだね。


 そういえば、この地元の冒険者の人たちはブラウ君のことを当てにしてシュトレッケンバッハの山に挑んだりするそうだけれど、そこで会話しているからかな? 会話すると言葉は覚えるって言うしね。


「そうなのか。君には申し訳ない状況になっているな……」


「気にしないでくれ。ラインハルトの山も獲物はたくさんだ。食べるものには困らない。それにシュトレッケンバッハの山のダンジョンが攻略されて魔獣の氾濫が収まるならいいことだ。自分もミノタウロスを狩れるかどうかは怪しいから」


 シュトレッケンバッハの山のダンジョン──“大図書館”についてはヒビキさんが責任を感じることじゃないと思うけど、ヒビキさんは真面目だからなー。


 けど、新生竜──ドラゴンであるブラウ君にもミノタウロスとか倒せるか怪しい魔獣がいるんだね。ドラゴンだから向かうところ敵なしかと思っていたよ、ボクは。


「では、暫くはラインハルトの山に?」


「そうするつもりだ。シュトレッケンバッハの山は今は住みにくい」


 ヒビキさんが尋ねるのに、ブラウ君が頷く。


「いずれ、“大図書館”が攻略されれば君も元の住処に戻れるだろう。必要なことがあったら言ってくれ。オスヴァルト氏もクリスタも協力してくれるはずだ」


「ありがとう、ヒビキ。本当に自分を人間の仲間に加えてくれて嬉しい。だが、あのダンジョンは“大図書館”というのか? どういう意味なのだ?」


「図書館とは本がある場所だ。たくさんの本がある場所。本というのは分かるか?」


「本。物語や知識が記された紙の束だと知っている。自分は読んだことがないけれど、ハティが教えてくれた。あそこには本があるのか?」


「分からない。少なくともあのダンジョンを作ったものたちはあれを“大図書館”と呼んでいた。きっと本のようなものが眠っているのだろう」


「興味深い。何か分かったら、自分にも教えてくれ」


「ああ。もちろんだ」


 ヒビキさんとブラウ君が会話に花を咲かせる。こうしていると人間同士の会話みたいだけれど、ブラウ君は新生竜なんだよね。最近では最初に見たときよりもだいぶ大きくなってきたし、いずれはラインハルトの山のレッドドラゴンみたいになるんだろうな。


「ところで、ブラウ。テンキュウ草という薬草を見かけなかったか? 丸く輝く葉をしていて、白い花弁が咲いているものだ」


「ん。それなら見たことある。ゴブリンたちが食べていた。あれは美味いのか?」


「いや、俺は食べたことがないので分からないが……。ただ、ポーションの素材になるだけだから、薬効があるのだろう」


「そうか。覚えておこう」


 ブラウ君はテンキュウ草の場所を知ってるの!?


「ブラウ君、ブラウ君。テンキュウ草はどこら辺に生えていたの?」


「ここからそう遠くない。案内する」


「ありがとう!」


「村の仲間だからな」


 ブラウ君はそう告げると笑っているかのように喉を引くつかせた。


「こっちだ、リーゼ。地上を歩くからついてきてくれ」


「ラジャ!」


 そんなこんなでボクたちはブラウ君の案内でテンキュウ草の場所に。


「あそこだ。ゴブリンたちがいたので焼いて食ったからちょっと焦げているけど、大丈夫か?」


「大丈夫だよ! これだけ立派な群生地なら!」


 ブラウ君が案内してくれた場所には大量のテンキュウ草が!


 採取、採取っと!


「ありがと、ブラウ君! 助かったよ!」


「構わない。山で探し物があるなら頼ってくれ。可能な限り協力する」


 おお。ブラウ君が新生竜ながら紳士だ。


「なら、頼りにさせてもらうね、ブラウ君!」


 ボクたちは無事テンキュウ草を初めとする薬草を採取して、山を下りた。


 さて、後はこれを上級ポーションに加工しないと!


…………………

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