錬金術師さんと出張販売所
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──錬金術師さんと出張販売所
ボクたちは無事薬草を採取して、山を下りた。
さて、これからエステル師匠に提案しないと。
「エステル師匠ー。薬草採取してきましたー」
「ご苦労だったね、馬鹿弟子」
エステル師匠は素材がないので、手持ち無沙汰に家でお茶を飲んでいた。
「エステル師匠、エステル師匠。ヒビキさんの提案なんですけど、冒険者の人に作って欲しいポーションの素材を持ち込んでもらうのはどうでしょう? 悪くないアイディアだと思うんですけど」
「はあ? そりゃあ、素材には困らないだろうけれど、冒険者の連中にそんなこと任せたら、山の薬草が根絶やしになるぞ。冒険者の連中は自分たちが欲しいだけ、薬草を乱獲するだろうからね。そんなことになったら山が荒れるよ」
「あー……。そうですよねー……」
そうだった。冒険者の人は他所から来た人も多いし、山のことをよく把握せずに薬草を取り放題しちゃう可能性があるんだった。
薬草も考えて採取しないと無計画に取れるだけ取っちゃうと、そのまま次の年には採取できなくなっちゃって、山が荒れるのだ。そうなっちゃうと回復するまで何年も待たなきゃいけなくなっちゃう。
うーん。いいアイディアだと思ったんだけどな。
「心配しなくてもいいよ。ポーションの在庫不足なら解決しそうだ」
「え? 何か手があったんですか?」
「あったんだよ」
なんだろう?
「お邪魔します」
ボクが怪訝に思っていたとき、玄関先で声が。
「おお。やっときたか。待ってたぞ」
エステル師匠がそういって招き寄せたのは──。
「ヨハン君?」
インゴさんのお店のヨハン君だ。
どうしてヨハン君がここにいるんだろう?
「これからインゴの店の出張所を開くことにした。インゴの店のポーションをここに並べるし、インゴの店から素材を取り寄せる。あたしたちは、素材で調合したり、インゴの店に店舗を貸す貸し賃をいただく。そういうわけだ」
「なるほど!」
確かにいいアイディアだ!
今は街道もあるからポーションも素材も大量にトールベルクから輸送できるし、インゴさんのお店をこのヴァルトハウゼン村に開くことも可能なんだよね!
「というわけで、今日からヨハンが月から水曜日の午前中の間、ここで店を出す。ちとばかり短い時間だが、こっちもしょっちゅうポーションが必要なわけじゃないし、それでいいだろう」
エステル師匠がそう告げてヨハン君の頭をポンポンと叩く。
「よろしくね、ヨハン君!」
「こちらこそよろしくお願いします、リーゼさん」
というわけで、ヴァルトハウゼン村にインゴさんの店の出張所ができた!
これで、ポーション不足は解消できるかな?
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「上級体力回復ポーションはあるかい?」
「はい。1本1万マルクとなります」
「なら、3本頼む」
うちの家にインゴさんのお店の出張所ができてから1週間。
お店は大繁盛だ!
ボクたちもトールベルクの街から運ばれてきた素材を使ってせっせとポーションを作り、ヨハン君が店頭に立ってポーションを販売する。
ポーションは作れば作るだけ売れている。低級ポーションはエルンストの山の物産館で販売され、中級、上級ポーションはここで販売する。
“大図書館”に挑む冒険者の人たちはひっきりなしにうちの店とインゴさんの店を訪れて、ポーションを購入していく。うちのお店も、インゴさんのお店も大儲け!
「やあ、ヨハン君。上級魔力回復ポーションはあるかな?」
「ああ。ヒビキさん。ありますよ。取っておいてあります」
おや、今日はヒビキさんたちもやってきたみたい。
「ヒビキさん! ダンジョン攻略の方は順調ですか?」
「ああ。今日は地下5階層まで探索した。いろいろと発見があったところだ」
「ほうほう。というと?」
ヒビキさんの話してくれるダンジョンの話が今のボクの娯楽である。
「やはりあのダンジョンは“大図書館”という名前で間違いなさそうだ。ダンジョンのあちこちに“大図書館”と記されたプレートが残っている。一定の階層の名称かとも思ったが、地下5階層でも見つかった。これは確定だとミーナ君は言っている」
ふむふむ。あのダンジョンはやはり“大図書館”なのか。
「図書館らしいものって見つかりました?」
「いや。今は本の1冊も見つからない。だが、だからと言ってあそこが図書館でないとは言い切れない。俺の世界の話を覚えているだろう。俺の世界の本はほとんどが電子書籍化されていた。あの遺跡を作った古代文明も本を電子化していたのかもしれない」
「なるほど……」
ヒビキさんの世界では本は電子書籍というものになっていて、インターネット上で購入したりするんだよね。“大図書館”を作った古代文明も今より進んだ文明だったらしいし、そういう図書館になっているのかもしれない。
「それから地下にいくにつれて遺跡の保存状態がよくなっている。今日はほとんど破壊されていない機械を見つけた。生憎、鍾乳石に侵食されて取り出せなかったが、あれは明らかに電子機器だ。古代文明は今のこの世界より進んでいるらしい」
「電子機器ってヒビキさんの世界にあるような奴ですか?」
「そうだ。かなり発達した文明だったようだな」
なんだろう。ワクワクするな。ボクたちより前に発達した文明があっただなんて!
「それで、それで、お土産とかないです?」
「う、うむ。実はちょっと“大図書館”にあるものを持ち帰ろうかとも思ったのだが、ミーナ君が研究のため以外にダンジョンから無暗に物品を持ち出すべきではないと言ってな。そこはかつて何者かが作った遺跡であるし、あそこのものは故人の持ち物と見做すべきだと言われた。実際にその通りだと思う」
「ありゃ。そうだったんですか」
確かにあそこはかつて人がいて、その人たちが残したものだ。それは死んでいったかつての人たちのものだし、研究目的以外で持ち出したりすると祟られそうだよね。
「しかし、土産がないわけではない。これをリーゼ君に」
「わあ! 綺麗なブレスレットですね。どうしたんですか?」
「“大図書館”で魔獣に囲まれていたパーティーを助けたら感謝されてな。お礼の品にとプレゼントされた。よかったら貰ってくれ」
「ありがたくいただきます!」
わあい! ヒビキさんからプレゼント貰っちゃたよ!
綺麗なブレスレットだ。施してある細工は細やかで、南部の雰囲気がする。
こんなの貰っちゃっていいのかな?
「ヒビキさんはまた“大図書館”に潜るんですか?」
「そのつもりだ。地下5階層までは魔獣も制圧できた。下に行くにつれて魔獣の数は減っているからこのままならば、地下最下層まで一気に潜れるかもしれない。と言いたいが、ミーナ君がいろいろと調べたいというので、ぼちぼちと進むことになるだろう」
「地下に行くにつれて魔獣が少ない? 普通逆じゃないですか?」
「いや。あのダンジョンはそういう構造になっているらしい。やはり地下10階層レベルとなると普通とは異なる仕組みが働いているのだろう。換気と排水はされていると言えど、日光もない。あの環境では生きていけるものも限られる」
そうか。“大図書館”は10階層以上のダンジョンだもんね。それだけ深くで生活できる魔獣なんて数が限られるよね。日の光が差さないということは植物も育ちにくいということだし。コケぐらいは生えるかもしれないけど、コケだけで生きていける魔獣なんていないだろう。
「じゃあ、気を付けて頑張ってください、ヒビキさん!」
「ああ。十二分に気を付けるよ」
そして、ヒビキさんは上級体力回復ポーションを購入すると、またシュトレッケンバッハの山の方に向かっていった。
“大図書館”の最深部に到達したとき、そこには何が待っているんだろう。
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