詩: コーヒーと紅茶のひそひそ話
掲載日:2026/05/13
夜更けのキッチンでの出来事です
コーヒー豆の缶と 紅茶葉の缶が
棚の上に並んで置かれていました
「ぼくの香りが きみに移らないかな
紅茶よりコーヒーのほうが匂いが強い気がするんだ」
「大丈夫よ
香りが逃げないための密閉された缶だもの
それに あなたはまだ挽かれてないから」
「きみの香りは いつも誰かを落ち着かせるね」
「あなたの苦味は 人を正直にするわ」
「毎朝 あなたが選ばれるの うらやましいわ」
「子どもたちは きみのミルクティーじゃないか
それに 夜遅くになると 眠れなくなるからと
紅茶にウィスキーを入れて飲んだりするぜ」
「そういえば
コーヒーゼリーはあるけど 紅茶ゼリーって聞かないな」
「そうね
なんにでもでしゃばる抹茶でも 抹茶ゼリーって聞かないわね
どこかにはあるのかもしれないけど」
窓の外が少しずつ白んできました
「もうじき 誰かが起きてくるわ」
「今日も香りが奮い立つように頑張るか」
紅茶はそっと身じたくを整え
コーヒーはふふんと胸を張りました




