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レインドロップ  作者: uyu
1章

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13/19

流れる。のを辞める⑬

――――――――



 「あたし、外で待ってますね!」

 「ん?うん。分かった」

 教えて貰った冒険者用の総合店【虎の尻尾】……ここで合ってるよな?

 然程、距離が離れていないのは幸いだった。

 文字が分からないってのは不安になるもんだなぁ。

 こういうのもアクアに聞いて良いのか判断つかないし……ま、でも多分聞かないほうが無難だよな。

 「ごめんくださーい」


 「おう、いるぜ。……【虎の尻尾】にようこそ。で、何の用だ。新顔だよな」

 カウンターの下からヌッと出てきたのは、小柄な割に大分ゴツい体格の男。

 それに立派な髭……。なんて言うんだっけこういう人、えーと確か……

 「……ドワーフ?」

 「いかにもそうだが。ドワーフは嫌いか?」

 あ、やべ。声に出てたか?

 流石に不躾だった。

 「あぁいや、そうじゃないんだ。実は田舎から出てきたばかりで……何か失礼をしたんなら申し訳ない」

 頭を下げる。

 「……。……はん、気にしちゃねーよ。確かに数は少ない種族だからな。多少の珍しい目で見られる事にも慣れてる……まぁしかし、謝罪は受け取っとくぜ」

 良かった、機嫌を損ねた様子は無いみたいだ。

 多分、この店とおっさんにはこれから何度も世話になる筈だし……最初は肝心だ。

 「この店の主『ドニク』だ」

 「あぁ、よろしくドニク。俺はアメトだ」


 「するってぇとお前さん、新人冒険者かなんかか」

 「いや、まだ新人ですら無いんだ。試験に向かう途中で……この店で色々と揃えられるって聞いたもんで。先ずは防具が欲しいんだが……」

 「なるほどな。……お前さん、得物はなんだ?戦闘スタイルは?」

 「魔法……に、なるのかな?武器とかの心得は全く無い」

 「拳闘は?」

 「さっぱりだ」

 「……ふうむ。つまり完全に遠距離砲台型、って訳か」

 厳密に言えば、それすら怪しいけど……。

 「なら、装備は防御力を重視したもので良いな。機動力はそれ程要らないだろう」

 「実は自分でもそう考えてた。素早く動ける足も持ってないし……防御に振り切って良いんじゃないか、ってね」

 「防御魔法の類は?」

 「それも使えないな……」

 

 「なら、こういうのはどうだ」

 ドニクは多くの衣服が掛けてある場所に移動する。

 そこから、一着の青い上着を取り出した。

 「少々値は張るが……こいつは、さる高名な魔法士が作った特注品でな。魔石が縫い込んである【魔法服】だ」

 「魔法……服?」

 「そうだ。敵からの攻撃……つまり、強い衝撃を受けたりなんかすると自動で防御魔法が発動する。回数制限は五回だが、魔石に魔力を充填する事で再使用も可能だ」

 何それ凄い。防弾チョッキみたいなものか?

 「それに加えて、使われてる素材には魔法耐性も有る。流石に全属性って訳にはいかないが、火と雷あたりには強いぞ」

 凄いっていうかもう伝説級みたいな性能だな。

 「おまけに軽い。近接戦闘が不得手な、貧弱な魔法士でも容易に扱える代物だ」

 貧弱って。いや貧弱で間違い無いけどね……

 「……ちなみにお値段は……」

 「まけにまけても金貨二十枚。どうだ?」

 二十枚か……。

 カーンさんに貰った金貨は残り二十二枚。


 ――うん。買おう。

 これを買っても、金貨二枚は残る。それで、他のアイテムなんかは揃えられるだろうし。

 心の中で今一度、カーンさんに深い感謝の意を示しておく。


 「良し、買った」

 「毎度あり。お前さん、間違い無く良い買い物をしたぜ」

 「ドニク。あと、回復ポーションや解毒剤なんかが欲しい」

 「回復ポーションならそっちの棚だ。解毒剤は……ゴブリンが使う毒用の奴で良いんだよな?待ってろ、奥から取ってくる」

 「えーっと……?」

 勿論、瓶のラベルは読めない。

 それっぽい奴はあるけど……ここら辺りか?

 ひとまず、何本か纏めてカウンターに持っていく。

 「おう、待たせたな。よっ……と。――ん?」

 ドニクがカウンターの上を見て、少し驚いたような顔をする。

 ……あれ。やっぱポーションじゃない奴も混ざってたかな。

 「……これが解毒剤だ。あと必要なモンはあるか?見たとこ、バックパックすら持ってねぇみたいだが」

 ん?全部ポーションだったのか。それにしては反応が妙だった気がしたけど……。まぁ、良いや。

 「そうだった。バックパックにナイフ、縄や火起こしの道具、寝袋……それと、三日分の食糧と水が欲しい」

 ドニクは俺が言ったそれらを紙に書き込んでいるみたいだ。

 「――水……と。他には?」

 うーん。

 「あー……。……あ、動きやすくて丈夫な靴が欲しい。後、軍手……えっと、作業用の手袋も頼む」

 あと、あとは……うーんと。


 …………そうだ!

 「時計!頑丈な物ほど良い。日付が表示されれば尚良しだ」

 大切なものを忘れるところだった。

 これが無いと期限が分からなくなるからな。


 「時計か、上等な奴が有るぜ。――良し、こんなもんか」

 ドニクは紙をつまみ上げると、店中から商品を集めにかかる。

 「全部揃えるのには、そうだな……小一時間くらいか」

 「それまで店内を見て回ってても良いかい?」

 「あぁ。好きにしてくれて良いぜ」


 店主の許可を得たので、店内をブラブラと歩く。

 店の広さは、ちょっとした商店くらいは有りそうだな。結構広い。

 ここら辺に置いてあるのは武器か。俺にも使えそうな武器とか無いのかな?

 試しに、樽に何本も入った片手剣の一本を持ち上げてみる。

 「――重っ……!」

 想像以上に重たい。これを片手に持って振ったりしながら逆の手に盾とか持つの?……それで走り回るって?長時間?

 …………うん、無理だな。無理無理。軍隊とか警察の人ならまだしも、俺は普通の一般市民だ。

 「お」 

 弓か。これならどうだ……?

 壁に掛かった弓を手に取り、試しに引いてみる。

 「思ったよりは軽いけど……」

 これ、矢を番えた状態で引き絞って、狙いを定めるんだよな。

 もう今の時点で、腕がプルプルしてるんだが。

 無理……とまでは言わないけれど、鍛錬と修練は絶対必要だ。とりあえず、止めておこう。

 「暫くは無手で良いか……」

 うん。

 というか、筋トレも満足にしてない俺如きに、扱える武器なんてそうそう有るわけないか。


 「――ん……?」

 なんだ?

 身体がゾワゾワする……呼ばれてる……?何に?

 ……これ、か?

 「剣……の、柄……?」

 それは剣が何本も入った樽、その奥に隠れるようにして有った。

 え、つうか柄だけ?刀身が無いんだけど。

 「なぁドニク。これって……」

 「ん?……あぁ、それはな」

 脚立の上で作業していたドニクはわざわざ降りて来てくれた。

 「実は俺にも良く分からねぇんだ。……いつの間にかこの店に有って、捨ててもまた戻って来やがる」

 「え。何それ怖い話?」

 「ガッハッハ、ある意味そうかも知れねぇな!お前さん、こいつが気になったのか?なんでまた」

 「いや、俺にも良く分かんないんだけど。なんか……呼ばれた気がした」

 「()()()()?……コレにか?」

 「いちおう。変な事を言ってる自覚は有るからね」

 ドニクは俺と柄を交互に見て、不思議そうな顔をしている。

 「ふぅむ……?……それ、持っていくか?」


 「……へ?」

 「金は要らねぇからよ。ウチとしても厄介払いにゃあなるしなぁ」

 う、うーん。

 ……柄だけ持ってても意味無い気しかしないけど。


 …………何故だろう。

 何故か、俺が持ってなきゃならない感じがする。


 「じゃあ……ひとまず貰っていくよ」

 「あぁ、そうしろ」



 (――――……ね)



 「んっ?」

 「どうした?」

 「いや、今なんか声がしなかったか?」

 「何も聞こえなかったが」

 「……?そっか……」

 気の所為、か。



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