錬金術師の受難
うわっ、私の投稿遅すぎ!?
……はい、ごめんなさい
(本日9/8は柚流がプライティアに転生した日のため何としても投稿したかった)
「フィム、大きな声で言わなくても結界を通った地点で信号が届くからあなたが帰ってきたのはわかるの」
「申し訳ありませんお母様……まさか1階の書斎に居られるとは思わなかったのです…」
ボクたちの眼前でフィムちゃんとさっきまで本棚の下敷きになり気を失っていたフィムちゃんの母親……ディグセル・ヒュラライドさんが話しているだけ。ただそれだけの光景のはずなのにボクは今、前世では絶対にありえない現実を見ています……。
「使いに出す前にワタシ書斎で調べ物をするって言ったような気がするの。 ……それ以前にそもそもこんな姿になったのも」
「たとえ体が本になろうともお母様はお母様ですわ!」
「今はそこじゃないなの……」
───読んでいるそこのあなたは、喋る本って見た事ありますか?
◆10分程前
「えっと……なんでこうなったの…?」
「ユズちゃん、現実逃避してても現状は変わらないのよ。……とは言っても私も現実逃避したいわねこの状況」
倒れた本棚を持ち上げようとしたボクたちが勢い余って本棚を投げ飛ばしてしまって、なんと書斎中全ての本棚がドミノ倒しのように倒れてしまったのでした。 たぶん1番現実逃避したいのは恐らく祈りのチカラを強く使いすぎたボクだと思う。
この本の海をどうしようか迷っていると、フィムちゃんが真剣な表情で腰のポーチから何かを手に取り出しました。
「散らばった本と本棚はわたくしに任せて下さいますか」
「ふむ……任せてくれと言ってもこの足の踏み場もない状態でどう…」
「このような時こそわたくしのチカラで! 3体程でなんとかなるはずですわ。 いでよ、フィムフィム2号!」
ボンッ!
ソルさんの話を全然聞かないフィムちゃんが、手に持った何かを床に叩きつけると煙と3つの影が現れたのでした。
「「「ヤー!」」」
「……なに? このちっこいの」
「ユズ、危ないので少し離れてくれるかしら」
「う、うん」
ちっこいのを呼び出した当事者であるフィムちゃんがボクの前に手を出してそう言うってことは本当になにか危ないんだと思ったので、3歩ほど下がって見守ることにしました。
フィムちゃんはその後、ちっこいの……フィムフィム2号だっけ? 多分ゴーレムなんだと思うけど、それぞれにこの書斎の片付けを命じ、ものの数分で元の状態まで綺麗にしたのでした。 この部屋の元の状態を見たことがないけど。
って言うか2号なのに3体もいるってことにはツッコまない方がいいのかな。 いい気がする。
「すごい、チリひとつ落ちてない……」
「2号たち、よく出来ました! 後で魔導回路のメンテナンスをしてあげますわよ」
「「「ワーイ!」」」
「ほああ……あんな惨事がたった数分で……私もいつか図書館を持ったら何体か制作を依頼するとしようか」
「ゴーレムって1体で数百万スルくらいした気がするんだが出せるのかソル?」
「う……掃除用として1体くらいなら……」
掃除が終わった3体がフィムちゃんの持つ筒の中に戻っていく中、ソルさんが珍しく夢の図書館の話で妥協してる。 夢はでっかく持たなきゃ!
あれ? ここまで静かだったリップさんがウズウズした様子でフィムちゃんに近付いて行ってる。どうしたのかな?
「ねえフィムちゃん、どうして2号なのに3」
「ワーワーワー!! リップさん! ダメですそれは!」
「そうだぞ!! 聞くな! ロマンをぶち壊すな!」
「ユ、ユズちゃん!? キングまで……わ、わかったよ……」
ふう……ボクとキングさんの必死の抵抗によってロマン溢れる謎は守られ
「説明し忘れていたけれど、フィムフィム2号が2号なのに3体いる理由は3体で1組のトライゴーレムという種だからですわよ」
「へぇーそうなんだ!」
「「…………」」
……気を取り直して、大事なことを忘れているフィムちゃんに声をかけることにしよう。
「ところでフィムちゃん、お母さんは…」
「ああーー!! 完全に忘れていましたわ!! お母様〜!!」
「───もうとっくに起きてるの。 フィム、掃除してくれたことには感謝するの」
突如として何処からか声が聞こえてくる。 この声が錬金術師ディグセル・ヒュラライドさんかな……って、どこから聞こえてくるんだろう?
周りを見渡してもボクたち5人とフィムちゃんのほかには誰も居ない。本棚の裏側……にも居ない。 フィムちゃんも揃ってみんなで首を傾げていると、ガタガタと何かが揺れる音と共に再び声が聞こえてきた。
「フィム! とりあえずここから出すの!」
「お母様! そんなところにいらっしゃったのですね!!」
パァっと笑顔を咲かせたフィムちゃんが横の本棚から一冊の本を取りだし、ページをめくると……
「ぷぅ……ようやく外に出られたの。 母親を本棚に仕舞う娘がどこにいるの?」
本が、喋り出したのでした。
◇
話は冒頭に戻って、フィムちゃんは母親を名乗る本に叱られています。
「えっと……なんでこうなったの…?」
「ユズちゃん、何度現実逃避しても何も変わらないのよ。……10分くらい前同じこと言ったような気がするけど、だれだって現実逃避したいわねこの状況は」
「喋る本……興味深い……」
「1人を除いてな」
「ソルくん……」
頭良さそうなイメージだったけどみんなと一緒に行動しているうちに、どんどんソルさんへのイメージがぽんこつになって来てるんだけどボクは何も悪くないよね?
平常運転のソルさんは一旦置いておくとして、フィムちゃんと一緒に彼女をたっぷりと叱った本……ディグセル・ヒュラライドさんが浮遊する小さな板に乗って近付いて来ました。 普段からああやって移動してるのかな。
「それで、依頼の話なの。まずは花畑の西側、あなた達が入って来たのとは反対側の森の奥にある泉の源泉から高純度の魔力水を汲んで来て貰いたいなの。 次に無傷のスライムの核を5つ程。これは小ぶりでも構わないなの。最後に素材集めのついでに森を荒らすダークドライアドの討伐、その後はこの私謹製の除魔剤で完全に根から殺してくれなの。幹は可能な限り切り刻まないで、荷台付きゴーレムを用意しているからそれを使って持ち帰ってくれるといいなの。そのほか葉や枝は必要ないからあなた達の自由なの。報酬は……」
「待って、依頼……助けて欲しいことと言うのは錬金術の素材集めでしょうか?」
「その反応……フィム」
「ひっ……はい、お母様」
「後で説教の続きなの」
「そんなぁ……ですわ……」
「自業自得なの。私以外のヒトと話すのが初めてだからと言って、命令を正しく実行できないのならあなたの能力はゴーレム以下なの」
ディグセルさんが嵐のように突然長々と口頭で依頼の話をし出したと思ったらいつの間にかフィムちゃんが再び叱られていました。 内容? 知らないことだらけで脳みそがパンクしそうになったから途中で聞き取るのを諦めたよ……。
「情報量が凄いわね……とりあえずソル、さっきの依頼はメモしたかしら」
「メモはしていないが記憶した。問題ないよ」
ぽんこつモードばかり見てたから忘れがちだけど、今は頭がいいソルさんに感謝です。
「ある程度は優秀なようで助かるの。うちのフィムはちゃんと伝えなかったようだけど、この私が依頼したいのは特殊魂核式魔導人形の作成に必要な素材集めなの」
「スペシャルゴーレム?」
「要は魂を直接入れることによって自我を持っている人型のゴーレムのこと、何に使うかは……私の姿を見れば分かるなの」
「……なるほど。詳しくは聞かないけれど、自身の魂を移し替えるのが目的ということね」
「大体はそれで合ってるの。特殊魂核魔導人形は2度作成した事があるから、作成失敗からの再依頼の心配はしなくていいなの」
「1度失敗したけれど、それはわたくしのせいなので失敗には入りませんわ!」
「余計なことは言わなくていいから口を閉じなさいなの!」
……とにかく、ボク達はこれからスペシャルゴーレムっていうのを造るための素材を揃えれば良いということみたい。ある程度の特殊な素材はもう集まっているけど、ソルさんの復唱を整理すると
・純度の高い魔力水
・無傷のスライムの核×5
・ダークドライアドの幹
が必要らしいです。 ちなみにスライムの核は午前中に街道で倒したスライムのうち最後の1体以外は核を傷付けずに倒していて、核をボクのインベントリに収納していたので依頼リストからは除外します。
さあ、ボクが冒険者になって初めての依頼だ! ギルドを通した公式の依頼では無いとはいえ、困ってる人を助けることになるんだ。 がんばるぞーー!!
Fujino.さんよりファンアートをいただきました!
ありがとうございます!!
同時に9話にも掲載しています。
柚流 (ユズ)
「なんか、クセの強い人だなぁ……」
フィム
「お母様、怒ると怖いんですのよ……」
ディグセル
「このスライムの核なら使えそうなの」
これからも柚流の祈りが読者様に届きますように!
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