アトリエ・デイジー
更新大変遅れまして申し訳ありません!
昨日、7/31でTS巫女1話投稿から半年が経過しました!いつも更新は遅く、半年でようやく20話です!
どうぞこれからもよろしくお願いします!
「む……このキノコは熱帯林にしか生育しないはず…?」
「おーいソル! キノコなんか観察してないで行くぞ…おっなんだそのキノコ!? 気色悪りぃ色だな…」
「なに見てるのふたりとも…うわ気持ちわるっ」
「正直だな君たち!? 散々な言われようだがこの種は……」
ソルさんはそれぞれ似たような感想を述べるキングさんとリップさんにキノコの効能を教えてるみたいなんだけど、あの紫のキノコ正直めちゃくちゃキモい。紫のカサが3段なのはまだ良いとして、キノコの柄の色がどぎつい深緑色地に黄色のツブツブが出ていてどう見ても毒キノコか何かに見える。
ソルさんの説明では何か薬効成分がある様だけどその辺の話は早口でよく聞き取れなかったです。
閑話休題。サーブリア地方へ向かっていたボクたちでしたが、もうすぐ街道を抜けるはずだったところで突然大手を振って呼び止める女の子が現れたのでした。どうしても助けて欲しいことがあるということで彼女に連れられ横道に逸れ、少し行った先にある彼女の家へと向かっています。
「ええと、フィーメルちゃん」
「わたくしの事は フィムと呼んでと言ったと思うのだけれど」
「出会ってまだ数分だし……」
「むむむ……あら、そういえば貴女の名前を聞いていませんでしたわ!」
「あ、たしかに。えぇとボクは琴音 柚流って言います。みんなはいつの間にかユズって呼んでるから気軽にそう呼んでくれて……あ」
「うふふ、ユズル…いえユズ!わたくしの事もどうぞフィムと呼んでくださいまし!」
「わ、わかったよ……フィムちゃん」
「う〜ん……まあ、それでいいでしょう」
うーん錬金術士を名乗るだけあって策士だ……物凄く頭がいいんだろうなぁ。この世界に来てから出会った人で呼び捨てになるほどの関係になった最速はレイの一晩だったけどたった数分で塗り替えられてしまった。チキでさえ今日のお昼ころまでさん付けしてたものだからコミュ強の距離の詰め方は恐ろしい…。
閑話休題その2。街道で出会ったのは今ボクとの距離を一瞬で詰めてきたフィーメル・ヒュラライドと名乗る女の子。彼女は偉大なる錬金術師『ディグセル・ヒュラライド』の一人娘なのだと言うのですが当然ボクはその偉大なる錬金術師様を知らない。
何か知ってるかと思ってチキに話しかけようとすると丁度チキが口を開いた。
「しかしあのディグセル・ヒュラライドにこんな大きな娘が居たなんてねぇ……」
「チキでも知ってるってことはそんなに有名な人なの?」
「そうかユズちゃんは知らないのよね。…失礼ね!いくら私でも知ってるくらい有名な方よ……少しは」
折角なのでチキからこの世界の有名人の話を聞きながらフィムちゃんの家へ向かうとしようかな。フィムちゃんもお母さんの話を聞けてなんだか満足気な様子だし。
◆
曰く、とある財政難に陥っていた王国の孤児院で育ったディグセル・ヒュラライドは天才的なセンスと謎の発想力によって様々なマジックアイテムの創り方を発見。
そのレシピを躊躇いもなく魔導具ギルドに公表し21という若さで巨万の富を手にしたものの、自身の求めるレシピに必要な物を買ったあとは残りの財産の殆どを自身の生まれ育った孤児院に寄付し、その後は自身のアトリエごと行方をくらましたとされているのだという。
一説では追い求めるレシピの完成の為に旅に出た説、はたまた創り出したマジックアイテムの強大さに誰も居ない辺境に引っ越した説。果てには恋を患った彼女が男を追って大陸中を渡り歩いた説等々……
ちなみに突然の失踪はつい5年前のことであるが、それにも関わらずこのような大量の説が生まれているのはそれだけ彼女の失踪が人々を震撼させた大事件であったことと、全くもって失踪以後の彼女の情報は見つからなかったからであるといえる。
◆
……すぐ隣の地方の町すら知らなかったチキの知識からこんなに大量の情報が飛び出すあたり本当にとてつもなく有名な人なんだとわかる。
「うふふ! お母様のその後の話ってそんなに沢山の憶測がでていたんですのね。わたくしつい最近までお母様から森から出ることを禁じられていたということもありまして、5年前からの世間の情報を少しも知らないのです」
「えっフィムちゃんは5年も森の中で過ごしてたの!?両親と3人で寂しくなかった?」
「わたくしお父様はいませんの。…待ってくださいまし! そんな風に落ち込まないで下さるかしら!勝手に哀れまれるほど悲しいことじゃないんですのよ。わたくし1度もお父様に会ったことが無いですし……そもそもお母様以外と顔を合わせるのはこれが初めてですわ」
「そ、そうなの!?気にしてないのならよかったけど……」
どちらかというと不用意な質問をしてしまって落ち込んだ顔をしたらすぐにそれを否定されたから驚いているんだけど、どちらにしても本人が気にしてないんだったら一安心だ。
でも本当にこの少女は伝説的な錬金術師の娘なのかな。なにか証拠を証明出来るものでもあるのなら…と思ったけどボク、この世界のことに全然詳しくないから見せられてもわからないような気がしてきた。
「うふふ、私が錬金術師ディグセルの娘であることを疑っていらっしゃるの? 証拠ならわたくしの……わたくしのお母様のアトリエに着いてからいくらでも見せて差し上げますわよ」
また顔に出てた!? 証拠、あるんだ……。
◇
鬱蒼とした森に入って30分くらい? 時計がないし木々で太陽も良く見えないから正確にはわからないけど、そこそこの時間を歩いた。周りの木は街道そばに生えている木とは違って来ていて段々と幻想的な色の葉をつけた榦がぐにゃぐにゃな変な木ばかり生育している。これも錬金術っていうのの影響だったりするのかな。
でもこの辺りはうっすらと霧もでていて何だか涼しい。さっきまでの街道とは大違いで丁度いい感じの温度に感じるのは気のせいじゃないんだと思う。
と思っていたけど突然霧が晴れて急に眩しくなってきた!?
「お母様謹製の霧と幻の結界を抜けて、見えてきましたわ。こちらが私の母ディグセル・ヒュラライドのアトリエ、その名も『アトリエ・デイジー』と、母のだいすきな花、ホワイトデイジーの庭園ですわ!」
「わあぁぁ!!すっっごく綺麗!!!」
「馬鹿な……さっきまで図鑑に乗っていない木々を見て興奮していたと言うのに! あれは幻だったというのか……?」
「おいこらソル、お前なんか驚くとこ違くねぇか?」
「ふたりとも!見てよあのお花畑!! 一面ホワイトデイジーが咲いてて!すごい!いい匂い!!かわいい!!!」
「確かに見事な花畑だけど…リップはもう少し落ち着いた方がいいわよ…」
視界いっぱいに広がる白い花弁の絨毯を見て、みんな思い思いの感想を漏らしています。当然ボクもこんな光景は見たことがない! この広い庭園を管理するのは大変だ……あれ、でもフィムちゃんはここにお母さんとふたりきりで生活してるんだっけ?
ここでボクたちみんなが同時に疑問に思ったようで……
「この庭園、どうやって管理してるの?」
「それでは先程見つけたあのキノコも!?………!ほっ……よかった…」
「なぁ、毎日の水やりなんか大変だろ?」
「フィムちゃんフィムちゃん!どうしてこんなにホワイトデイジーを?」
「あら、お花の白に同化して気が付かなかったけどあれがアトリエなのね」
……キングさんとしか質問が同じじゃなかった。というかソルさんは未だに採取した植物やらが入ったカバンをごそごそしてる……。キノコは無事だったけど霧が出てきてから採取した植物は全部ただの雑草だったりして愕然としててちょっとかわいそう。
閑話休題その3。改めてフィムちゃんに庭園の管理方法を聞こうとすると庭園の奥から答えがふよふよとやってきました。
「あれは…」
「あちらはわたくしが創った、水やりバブルゴーレム『フィムフィム3号』! 」
「ヒソヒソ…ネーミングセンスねぇな……」
「何か言ったかしら」
「いやなんでもねぇ…」
センスはうちのパーティメンバーも大概だけどね…。
ネーミングセンスは置いておくとしてバブルゴーレムというふよふよと浮遊しながら移動する泡の集合体から雨のように水が降っている。あれが水やりを自動でしてくれるのならすごく楽なんだろうと思うと合点が行きました。
ゴーレムって言われると土人形のイメージだったけど魔導回路が仕込まれた自立人形はだいたい魔導人形と呼ぶのが正しいみたい。
そんなこんなでそのほか茎間引きゴーレムのフィムフィム4号 (カットゴーレム)、肥料やりゴーレムのフィムフィム5号 (ソイルゴーレム)などを見せてもらいながらアトリエ内に案内されるのでした。
ガチャ…キィィィ………
「お邪魔しま」
「お母様〜!!フィーメル・ヒュラライド、只今帰りましたわ〜〜!」
フィムちゃんの大声でボクの声がかき消されちゃった。チキの声ととどっちが大きいかな?
「…どうかした?」
「ううん、なんでもない」
バタンッ!ドサドサドサドサドサッッ!!
『きゃあああ!!』
「お母様の声!? お母様〜!!」
何かが倒れる様な音と何かが大量に落ちる様な音がし、それと同時に悲鳴も聞こえてきた。フィムちゃんは音がした左の部屋のドアを開けて走って行ってしまった。
「入っていいのかな…?」
「緊急事態の匂いがするわね……私たちも行きましょう。どちらにせよ挨拶をしなければいけないし、そもそも私たちのパーティの運営方針は?」
「「「「困っている人がいたら助ける!」」」」
ボクたちもフィムちゃんを追いかけて部屋に入ると、そこは本棚が倒れて沢山の本が床に散らばってしまった書斎でした。本が霧散してなければちょっとした図書館の一角のような部屋なんだろう……とそんなこと考えてる場合じゃなかった!
フィムちゃんが泣きそうな目で本棚を持ち上げようとしている………まさか!
「み、皆さま! お母様が本棚の下敷きに…!!」
「チカラ仕事なら任せろ!」
「私も手伝うわ!」
巨大な本棚だけど6人も人がいれば簡単にと言えずとも動かせる! 大部分はチキとキングさんのパワーな気がするけど気にしないことにした。ボクもこっそり一時的なパワーアップをみんなに祈って持ち上げるのを手伝います。
「「うおおおぉぉぉっっ……りゃあああああ!!」」
横たわっていた本棚が宙に浮くほど吹き飛んだ! ……吹き飛んだ!?
ドォォォォォン……バタンッバタンッ!!……ドサドサドサドサドサドサドサドサッッッッッ!!!!
……ええっと、何が起きたのか説明タイム!
少しだけのつもりだったけど、ボクが祈ったことによってパワーアップしたみんなのパワーが強くなりすぎた結果、本棚は斜め上に吹っ飛んで行きました。……当然宙を舞った物体は重力に従って落下してくるわけで、落ちてきた本棚は別の本棚に激突!
そしてドミノ倒しのように部屋の本棚が全て倒れてしまいましたとさ。
「お母様〜〜〜!!!」
ソル
「ユズくん、ここ5日間の文字の勉強の復習だ。この本の題を読めるかな?」
柚流
「か…ぴ…『カピルュキ☆ルクンィテ』だ!……あれ?その本逆さまじゃない?」
キング
「お前ら現実逃避してる場合かぁ!」
フィーメル・ヒュラライド
「お母様……」
ディグセル・ヒュラライド
『………(気絶しています)』
これからも柚流の祈りが読者様に届きますように!
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