200年後の世界!?➁
「……で、場所は本当に分からないんだな?」
「正確なアジトまでは……。ですが『今どのあたりに潜伏しているか』という、大体のエリアなら分かります!」
「それだよ! それが知りたかったんだシエル!」
健斗が胸をなでおろし、シエルが具体的な地名を口に開こうとした――まさにその瞬間だった。
ドスドスドスと、複数の重厚な足音が古びた小屋の周囲を取り囲んだ。
『――古代封印不法解除の容疑者、シエル! 逃げ道はない、出てこい! お前は完全に包囲されている!』
魔導具で増幅されたような、威圧的な男の声が外から響き渡る。
『お前は封印を解き、解き放たれたドラゴンによって罪もない人々の命を大勢奪った! お前たちのしていることは、到底許されるものではないただのテロだ!!』
小屋の隙間から外を覗くと、そこには煌びやかな甲冑に身を包んだ「国家騎士団」と、禍々しい装備を纏った「高ランク冒険者」たちが、数十人規模で武器を構えていた。
(テロ……うん、俺もまったく同感だわ。ぐうの音も出ない正論ですね)
正義の味方の主張に心の中で深く頷く健斗。……だが、すぐに血の気が引いた。
(待てよ?? 俺、今シエルと一緒にここにいるよな? もし俺の顔が外の奴らにバレたら……新聞のトップを飾る『世界最悪の大罪人』がここにいるってことにならないか!? シエルどころか、俺の方が集的に狙われるんじゃねぇの!??)
転生早々、世界規模の指名手配犯としてエンドレス逃亡生活が確定する未来が見え、健斗はハァと深い溜め息をついた。
詰んだ。完全に詰んだ。
自分が戦う術を持っているかも分からないニートの状態で、国家騎士団と高ランク冒険者の大軍に囲まれるなど、絶体絶命にもほどがある。
健斗が本気で絶望しかけたその時、抱きついていたシエルがそっと身体を離した。
その可愛らしい顔立ちから一切の感情が消え去り、瞳には冷酷で冷ややかな殺意が宿っていた。シエルは健斗に向かって優雅に一礼すると、鈴を転がすような愛らしい声で、けれど恐ろしいほど冷徹に言い放った。
「……レディオン様の手を煩わせるまでもなく、あのような羽虫ども、私が一瞬で塵に変えてまいります」




