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【32話】いつか瀬戸内海のように

 阿多田交流館あただこうりゅうかんを後にして、神花山じんがやまに二人で向かう。

 徒歩で10分ぐらい。おしゃべりしながらだと、あっという間だ。


 まずは最初に、木花開耶姫命このはなのさくやひめのみことの祠にお参りした。


 小銭をお賽銭箱に入れて。

 二礼ニ拍手一礼。


「なにお願いしたの?」

 美和が訊いてきた。


「世界平和」


「私も」


「だよね」


「受験の合格祈願は?」


「それは自分で何とかすることだから」


「偉い!」


「えっへん! 

 ……だから受験勉強で困ったときは、神様仏様になりかわり、美和様お助けください!!」


「頼る相手が神様じゃなくって私になっただけかい!!」



 そこから道なき山道を登って頂上へ。

 神花山古墳じんがやまこふんの山頂から瀬戸内海を観るためだ。


 小学生の頃よりはスムーズに登れた。

 虫よけプレーも用意していたので、虫刺されの心配も少なく済んだ。


「わたしは、ここから観る瀬戸内海が一番好きかな!」

 わたしは、両手バンザイのポーズで、大きく背伸びをしながら言った。


 いかにも瀬戸内海らしい、穏やかな海だ。

 空の青、海の青、白い雲。

 ほほをなでる潮風が、とても気持ちいい。



「何度も聴いた、耳にタコだよ!」

 親友は、ツッコんでくるが声色はやさしい。


 お互い何も言わずに海を観ている。


「知ってる? ここの祠に祀られてるのは、木花開耶姫命このはなのさくやひめのみことって言うの」

 美和が話しかけてきた。


「しってるよ!前に調べたもん!!」


「じゃあ、これは?

 木花開耶姫命このはなのさくやひめのみことは桜の神さまなのよ?

 さくら、あんたと一緒ね!」


「へぇそうなんだ……?」


「そして、木花開耶姫命このはなのさくやひめのみことには、お姉さんがいるの、名前が石長比売いわながひめって言うんだけど……」


「ははーん、さては名前が似てるからって、

 あの時みたいにお姉さんマウントを取る気だな?


 わたしが妹の 『このはなサクラひめのみこと』 で

 自分が姉の 『ミワながひめ』 だって!!」


「察しがいいわね。

 美人でモテた木花開耶姫命このはなのさくやひめのみことに対して、

 石長比売いわながひめは不細工で、モテなかったの、

 性格ブスで、嫌われ者の私と一緒ね!」


「ええ!? ごめん!! そんなつもりないよ!!

 それに、美和は美人だよ! 見た目も性格も!!

 全わたし垂涎の、かわい子ちゃんだよ!!」


「ありがとう、他の誰にもモテなくても、

 咲良にだけモテれば、私は十分だわ!!

 あと、ヨダレはダスナ!」


「わたしも、美和にだけモテれば十分だよー」


 わたしは美和に抱きついた。

 美和も、わたしを抱きしめ返してくれた。



 二人とも黙ってしまった。

 でも不快じゃない、ずっとこうしていたかった。



「私ね、ホントは不安だったんだ、

 私はアンタと違って、人に好かれる性格じゃないから

 いつか、アンタも離れていくんじゃないかって……


 ずっと怖くて、不安だったの……

 だから、何もできずに待ってばかりだった……」


「わたしは、離れてなんか行かないよ!」


「離れていくわ、きっと、だって進む道が違うんだもの。

 自分の強みを生かす道を進もうと思えば、

 私は、勉強が好きだし得意。

 咲良は、スポーツ、特に剣道やフェンシングなんか向いてると思う」


「…………」


「だけど、この絆は切れない、切らせないわ!

 どんなに離れた所にいても

 何かあったら私を呼んで!


 どんな場所に居ようと

 今度は私から咲良を抱きしめに行くよ!

 ……3日以内にね!」


 美和は、わたしを抱く手に力を込めて言った。



 沖を小さな船が走って行った。



「楽しかったね、謎解き旅行」


「うん」



「来年の今頃は、受験勉強かな」


「うえ……

 どこの高校に行くか決めた?」

 わたしは、さっきの話の不安から、つい探りを入れてしまった。


「まだ…… その先も見据えて進路決めないとね」


「自分で選べるだけ、幸せなのかな?」


「分かんないよ?

 他人に決められて進んだ道で、

 幸せになる人だっているし、

 自分の選んだ道で、不幸になる人もいる」


「選んだ時点で、正解なんて分からないから、

 選んだ道を、正解にする努力が一番大事だよね」


「そうだね……」



「私ね、中村のおばちゃんって、瀬戸内海みたいな人だなって思ったんだ。

 穏やかで優しくて、時々厳しくて、


 昨日と同じような今日を、毎日繰り返してるけど、

 でも、それだけじゃないんだよね。


 長い歴史の中で、色々あった上での穏やかさって言うかさ……

 ちょっと、咲良に似てるかもって思った」


 親友はちょっと照れくさそうだ。


 そうだね。

 わたしは、美和にちょっと似てるって思ってたよ。


 私は声には出さずに、心でそっと言った。

 たぶん伝わってると思う。


『瀬戸の花嫁連続誘拐事件!』これにて無事に完結です!

土日の2日間、怒濤の一挙更新にお付き合いいただき、本当にありがとうございました!!

本作は「JR西日本×BS12 トゥエルビ じゆうに文庫小説大賞」への応募作品です。

二人のフェリー旅を楽しんでいただけたなら、作者としてこれ以上嬉しいことはありません。

もし「面白かった!」「咲良と美和のコンビが好き!」と思ってくださったら、最後にページ下部から【ブックマーク登録】や、【評価の星(★★★★★)】をぽちっと押して応援していただけると、コンテストの大きな励みになります!

改めて、最後まで読了いただきありがとうございました!


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