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全てを捨てて消え去ろうとしたのですが…なぜか殿下に執着されています  作者: Karamimi


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第45話:戻って来られました

「う…ん」


 ゆっくり瞼を上げると…


「セーラ?もしかして、目が覚めたのかい?これは夢か?」


 エメラルドグリーンの瞳と目が合った。その瞳からは、涙が溢れている。


「ワイアーム様…あなた様を泣かせてしまったのですね。ごめんなさい」


 ワイアーム様を見つめながら、にっこりとほほ笑んだ。


「セーラ、よかった、本当によかった。まさかセーラの意識が戻るだなんて。こんな奇跡が、あるのだろうか?」


 ギューギュー私を抱きしめるワイアーム様。ふと周りを見ると、お母様やお兄様、お義姉様、アナ叔母様の姿も。懐かしい我が家の使用人たちの姿もある。


 あら?よく見たらここ、私の部屋だわ。どうしてここにいるのかしら?


「私、侯爵家に戻って来ていたのですか?」


「いいや、今日たまたまワイアーム殿下が、セーラを連れて我が家にいらしたのだよ。いつまでたっても目覚めなかったからね。我が家に残されている先代の手記を見たいとの事でね」


 お兄様がそう教えてくれた。


「そうだったのですね。それで私まで一緒に、侯爵家に来ていたのですか?」


「僕はセーラとずっと一緒にいたくてね。君の意識がない間、公務にもずっとついて来てもらっていたのだよ」


 そうワイアーム様が教えてくれた。よく見ると、ワイアーム様、埃まみれだわ。一体どこにいらしたのかしら?


 でも、今はそんな事はどうでもいいか。


「ワイアーム様、私を連れ戻してくださり、ありがとうございます。どうやら私は、自分の持つ力を使って地上に戻って来たそうなのですが、その副作用で魂だけ、別の場所に飛ばされてしまっていて…キース様からは、もう帰る方法はないと聞かされていたので、本当にショックで」


「セーラはあの男と一緒にいたのかい?この半年、ずっと?」


 ワイアーム様の目つきが変わった。これはマズイわ。


「いえ、ずっとではありませんわ。キース様もどうやら私のいた場所には来られない様で、体は透けていらっしゃいました。話しをしたのも数分ですわ。それに私の傍には、お父様もいらっしゃいましたし」


「父上が傍にいただって?それじゃあ、セーラは一度、命を落としたのかい?」


 私達の話に入って来たのはお兄様だ。お母様も目を丸くしている。


「いいえ、私はまだ正式に亡くなったわけではありませんでした。それにお父様も、透けておりましたし。生と死の境目みたいな暗い場所にいたのです。そんな私を心配したお父様が、様子を見に来てくださったのでしょう」


「そう…あの人が…セーラ、お父様はどうだった?元気そうだった?」


 お母様が目に涙を浮かべている。


「ええ、元気そうでしたわ。お父様は私と一緒に、体に戻る方法を探そうとしてくださったのですが。すぐに温かい光に包まれて。ワイアーム様、あなた様が私をここに連れ戻してくださったのでしょう?」


 あの温かい光は、間違いなくワイアーム様のものだった。


「僕がかい?僕は何も…あっ」


「セーラが目覚める寸前、龍の力が暴走されたのだよ。もしかしてその龍の力がセーラの体に流れ込み、この世に引き寄せたのかな?」


「お取込み中失礼いたします。殿下は感情が爆発し、龍の力が暴走した際、国を一つ滅ぼしてしまうほどの破壊力があるのです。ですが、見て下さい。この部屋ひとつ壊れておりません。きっと殿下の莫大な龍の力を、セーラ様が取り込んだことで、この世に戻って来られたという事で間違いないのでは?龍の力は本当に神秘的で、時に想像を絶する力を発揮すると言われておりますから」


 近くに控えてきたワイアーム様の執事が、そう教えてくれたのだ。


「お父様もその様な事を、おっしゃっておりましたわ。ワイアーム様、私を連れ戻してくださり、ありがとうございました」


 ワイアーム様のお陰で私の魂は、肉体に戻って来られたのだ。それにしても龍の血とは、恐ろしい力があるのね。びっくりしたわ。


「僕の方こそ、戻ってきてくれたありがとう。まさかこの力のお陰で、セーラが戻って来られただなんてね。とにかく、意識が戻ってよかったよ」


 再びワイアーム様に抱きしめられた。温かくて落ち着く。


「そうですわ、お父様から、伝言があったのでした。“私はいつでも、君たちの事を見ている、君たちの幸せを願っている。母さんには、愛していると伝えてくれ”だそうです」


 お父様の言葉を伝えた。すると


「あの人ったら…本当にもう」


 そう言って泣き崩れてしまったお母様。お兄様とお義姉様も泣いていた。まさかお父様に会えるだなんて。急に命を落としてしまったお父様。さぞ無念だっただろう。


 でも今回、思いがけずお父様に会う事が出来て、最後に言葉を伝えられてよかったわ。


 きっと今頃、お父様も天国で私たちの様子を見てほほ笑んでくれているだろう。なんだかそんな気がした。

次回、最終話です。

よろしくお願いします。

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