表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/29

4.私は、呪われてるの?

 アンジェリカは、それをどう使うべきかも、光が何故現れたのかも知らない。

 でも、自然と身体が動いた。

 まずアンジェリカは、扇子を持っている右側の腕を上げた。

 扇子はまだ、この時点では閉じられている。

 それから、アンジェリカは右手のひらの動きだけで扇子を開く。

 バッと、扇子が空気を切る音がした。

 純白で、レースの細かい刺繍が入った、それはそれはアンジェリカも見たことがないような、美しい扇子だった。

 その扇子の綺麗な面を、アンジェリカは怨霊の塊の方に向けた。

 言葉は、自然と出た。

 

「消えろ!!!!」


 そのままアンジェリカが扇子を振り下ろすと、扇子から真っ白い光が放出された。

 その光は、ミシェルが放った矢よりもずっと、強く目に痛い。

 光はまっすぐ怨霊の塊への向かっていく。

 怨霊の塊はちょうど、コレットにまさに触れようとしていた。

 

(届け届け届け!!!)


 アンジェリカは祈った。

 怨霊の塊は、コレットの髪に触れた。

 コレットのふわふわな髪が揺れ始めた。


(間に合え!間に合って!!!)


 その髪と怨霊の塊の間を、アンジェリカが放った光が通り過ぎた。

 その瞬間、強い風が吹き荒れた。


「きゃっ!!」


 コレットが風の勢いで地面に倒れそうになったところを、ミシェルが駆けつけて抱えることができた。

 コレットは、そのままかくん、とミシェルの腕の中で気を失った。


「コレット!」


 アンジェリカは、自分のせいでコレットを傷つけたのではないかと焦った。

 

「大丈夫! 気を失っているだけです!」


 アンジェリカの考えを察したミシェルはすぐに言葉でのフォローを入れると、そのままアンジェリカに説明した。


「祈りなさい!」

「祈り?」

「この怨霊たちが、この世界から消えることを!」

「ど、どうすればいいの!?」


 アンジェリカは、ミシェルが言う祈りの意味が分からなかった。

 けれど、ミシェルはこう断言した。


「今さっき、あなたがしたことを繰り返すのです!」

「私がしたこと!?」

「そうです! あれだけの強い光を出すためには、強い想いが必要なのです! アンジェリカ様はさっきそれができた! 同じことをすれば良いのです!」

「さっきと、同じ……」


 アンジェリカが必死に考えている間に、怨霊の塊が金切り声をあげながらアンジェリカに視線を向けた。

 これは、アンジェリカに攻撃対象を切り替えたということだ。

 視線に殺気が含まれていることにも、アンジェリカは気づくことができた。

 処刑場で受けた視線と、全く同じ鋭さだったから。 

 

(まずい……!)


 アンジェリカは焦り、そして恐怖した。自分に、気持ち悪いぎょろっとした目玉の視線が集中してしまったことに。


(どうすれば良かったの……!?)


 アンジェリカは必死に思い出す。

 さっき、自分はどうやってあの強い光を出したのか。

 ふと、視線にぐったりしたコレットが入ってきた。


(そうだ……! さっきは……!!)


 怨霊の塊が、ものすごいスピードでアンジェリカに襲い掛かろうと迫ってくる。

 アンジェリカは、また扇子を持つ腕を上げた。

 そして、今度は確信と共に叫ぶ。


「くたばれ!!」


 その瞬間、扇子からはさっきよりも強い光が放たれた。

 今度は、風は出なかった。

 けれど、その光はそのまま怨霊の塊の黒くて巨大な身体を包み込んでいく。


「ぎゃあああああああ!!!!」


 酷く重い断末魔が、光が広がると共に空気に溶けていく。

 すっと、その声が消えたと思ったら、光も弱まっていった。

 そうして完全に光が消え失せ、空間の本来の明るさを取り戻した時は、怨霊の塊は消えていた。

 この時、アンジェリカの息は荒かった。

 呼吸の、本来の心地よいスピードを取り戻すまでに、何回も肩を上げ下げして呼吸しなくてはいけなかった。

 自分の身体の周りだけ、重力がよりかかったかのようだとアンジェリカは感じていた。


「い、今のは……」

「神が、授けたんですよ。2回目の人生を今度こそあなたが正しく、生き残れるために」


 ミシェルはそう言うと、コレットを抱き抱えたまま扉の方に向かった。


「正しく、生き残る?」

「今度こそ、あなたを自死させないため……ですよ。何故ならあなたは、次の神候補なのですから」


 神候補。

 それは、夢の中だと思っていたあの雲の上で、自称神から言われたことだった。


「教皇様……あなたは一体どこまで知ってるの?」


 それだけではない。

 アンジェリカには聞きたい事がたくさんあった。

 それらはまだ、1つも聞き出せていない。


「呪いは? 私は、呪われてるの?」


 1週間前のことを覚えてないの?と母親に言われた時、もちろんアンジェリカはすぐに記憶を漁った。

 けれど、何1つ心当たりが見つからない。

 何故なら、私の本当の1週間前は……アリエルが毒を飲んだ日であり、私たちが処刑宣告を受けた日なのだから……。


「こちらへお越しください」

「え?」

「後ほど片付けますが、こんな部屋の状態では集中できませんからね。場所を移動します」

「どこに向かうんですか?」

「祈りの間です」


 それは、聖堂の中心に位置する場所だ。


「そこで、お話しましょう。アンジェリカ様の今までと、そして……今後について」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ