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気持ちの甘さ(改稿版)  作者: 霜三矢 夜新
この幹部は……!
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ディリーとルフランの戦闘 4 それから

(なんだ? 一体……!? ま……さか……)

 満足そうな表情をして地面に体が倒れかけているルフランを見て、ほんの一瞬理解が追いついていなかったディリーが彼を支えた。

「ルフランッッ!!」

 何と言えばいいのか、ディリーは混乱していた。その混乱している状態でも心配をしている。それなのに責めてしまっているという矛盾のあるセリフを口にしてしまう。

「おま……ルフランどうして!? そんな事をしたらお前……!」


 ディリーが泣きそうになってしまっているからかどうか

「い……いいんだ……。俺なんて……大丈夫だ……から……! そんな顔をすんなよ……。な?」

 彼を安心させるためか、ルフランは笑ってみせた。それを見てディリーは何故か体が怯えを感じてしまっている事に気づく。そして死にゆく人について考えがよぎった。ルフランの体が少しずつ冷たくなっていき、ぐったりして、力の抜けた手がディリーの手をすり抜けて音もなくだらーんとした状態になる。



――いやだっ――

 半狂乱になりかけのディリーが情けない事を自覚のないまま口走っていた。

「死ぬなっ、頼むっ。俺はお前がいないと友達ダチの一人も作れない暗いやつなんだぞ」


 


達観した感じでルフランが最後までディリーに前を向いてもらいたいという言葉をかける。

「何を言ってんだよ、俺なんていなくてもディリーは大丈夫さ」

 子どもがイヤイヤするかのごとく、ディリーは首を振っていた。日の光が2人を照らす、まぶしいほどに。

「きっとお前は大丈夫だから、自分の事を卑下しちゃダメだ。ディリーならまず大丈夫! 良い剣士になれるよ。自信を……自分に自信を持ってやれば……」

 ――ディリーは理解する。遂に訪れてしまった。想像してしまった事が……。現実に……」

「――――――――――っ」

 涙が頬をつたった。


 ふるふると首を振ってディリーは「きっ」とした目つきになって上を向いて涙を押さえこんだ。

(ルフランはきっとこんな俺が悲しんでいる姿を望んでいないハズだ……! 俺、絶対に良い剣士になってみせる! そらで見守っていてくれ)

 遠くからディリー達を呼ぶかのような声が聞こえる。

「ディリー!」

 口数が多くないのでディリーが剣士試験で実力を認めさせたセディという同期のやつが話しかけてきた。

「セディ……」


 魔物がかすかに動いたように見えたのでハッとする。

「セディ、どいてくれ……ッ」

 急に押されたが、セディはまだ状況を飲み込めていなかった。

「?」

 凍りつきそうな、冷たいような目でディリーがゾンビ化魔物に怒りを静かにぶつける。

「許さん……ッ、貴様だけは……ッ。絶対に……!!」

 ストレートスラッシュ!! 

一直線に魔物が弱点コアごと切り裂かれ、緑色の血しぶきが飛び散った。


 返り血を浴びたディリーは放心状態になっていた。どれくらい時間が経ったのだろうか。

……リー、ディリー!!

呼……んで……る……!? 俺を……?

誰が……? ルフラン……? 真っ暗で何も見えない……

意識のはっきりしていないディリーだったが、少しずつ光を感じ出した。ぼやけている眼が晴れてくる。そこにいたのはセディだった。

「ああ、良かった。目が覚めたんだねっ」

「……ここ、何処だ?」


 優しく包み込むかのような声音でセディが教えてくれた。

「教会だよ、神父さんに部屋を貸してもらったんだ!」

 はっきりしない意識の事も思い出せるかと、頭の中が霞がかっている感じになっているがさっきまでの状況を整理していく。

(そうか、俺はあの憎い魔物を倒してからの記憶がおぼろげなんだな)

 思い出したようにルフランの顔が浮かんできた。胸が、心が痛い……目頭が熱くなってくる。ベッドに顔をうずめた。セディが(実はディリーをここまで運んだ)セルジオを呼んでいたのだが――


 ディリーの悲しんでいる様子に気づいたセルジオは気を遣って一言慰めの言葉をかけてすぐ出て行こうとしたが、彼にしっかりと手を掴まれた。

「行かないでくれ……。一人にしないでくれセルジオ」

 セルジオは黙ってベッドに座った。わざとではないが、セルジオはディリーの足を踏んでしまっていたようである。

「痛ェ~~!! な、何すんだ」

 悪気はない事を謝罪した後で、セルジオが目を細めて微笑む。その時の状況はまだ数ヶ月前だというのにどこか懐かしそうに語り出した。


「……初めて俺に出会った時にお前がどんな態度を取ったか覚えてるか?」

「……さぁ?」

 あまりに興味が無さそうにするので、セルジオはズルッとベッドから落ちそうになってしまった。

「なんだそりゃ、ディリーは僕のコトなんて~~見向きもしなかったんだぞ!!」

 ディリーがあっさりと「そうだったか」と言う。再びズズッとこけたい衝動に駆られるくらいに。

「んなあっさり言うなよ~~」

 セルジオが情けない表情になった。


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