ディリーとルフランの戦闘 2
◇ ◇
少し遠くの方に騒がしい感じがあり、誰か不明だが何人かの慌てているかのような声が耳に届く。そんな中ではあるが、ディリーとルフラン2人とも気付かずまだのんびりしていた。ディリーは「ん……」と喧騒のせいか声をもらし、目が覚める。寝ぼけ眼なので視界がぼんやりしていた。
慌てている様子で「お~~い!!」と大声で彼らを呼びつつ来た少年が。目をこすりディリーは視界をはっきりさせた。そこにやってきたのは血相を変えてやってきた同期のセルジオである。
「ルフラ~ン、ディリー~~~~!!」
!?
彼の顔色が尋常ではないように思えたので何か大変な事が起きているのではないかと推測する。さすがにルフランも真剣な表情で尋ねざるを得なかった。
「どうしたっていうんだ!?」
「どうしたもこうしたもない!!」
セルジオが興奮冷めやらぬ様子で身振り手振りで説明してきた。
そのすぐには頭で理解するのがやっとなだけの衝撃的な出来事は2人の驚きを加速させる。
………………………………!!!!
「魔……魔族が……」
「襲ってきた!!??」
自分の腕前に自信を持っているディリーが率先してセルジオに怒鳴る。
「そこに案内しろっ!!」
ディリーの口調が命令形になってしまっていたが、彼の実力のわかるセルジオは一度うなずき一目散に彼ら3人が仕事する場所に走っていった。
みんな……! みんな……!
――無事でいてくれ!――
全力で走りついた場所は……! 身寄りのない子どもを援助している施設、今は傷病人も一時的に運び込まれているみたいだ。
「施設の人達が……!」
別にこういう施設出身という訳ではないが、3人ともこの町の子どもという事でここの神父さんやシスターさんに何度か遊んでもらった覚えがある。そこで神父さんやシスターが無残にも血を流し、青白い顔で血だまりの中で横たわっていた。ディリーの怒りがふつふつと湧いてくるようだ。ルフランも同じように怒りが湧いてきていた。
そこは――
まるで――
魔の巣窟。どこもかしこも魔物が我が物顔で闊歩しており廃墟同然にされてしまっている。
「ルフランッ!!」
「ディリーッ!!」
彼らが戦闘の方を優先しようとしているのでセルジオが治療できそうな人は木の下へ運ぶ。剣を握り直し戦闘準備を完了させ、剣を手にした。
「いくぞぉっ!!」
「おうっ!!」
グギャアアという耳をつんざく叫びを発した魔物。そいつらを葬るために落とさないように ぐっ! と剣を握り直して勢い良く走り魔物と対峙する。
「ぐおおお~~~~~~!!」
魔物の体を斜め傷をつけるように強く斬りつけた。いくら普段は温厚なはずの魔物でも本能のまま人間を襲うようになっては……(どうしてこうなったかの調査なんて出来そうもないが)
そういう――――
悪い子は――――
お し お き だ っ !!
「ライトニングスラッシュ」
剣から雷鳴のようなものが発せられ、魔物の肉体が真っ二つに裂かれる。一筋の閃光の力だろうか。
2人はひたすら凶暴化してしまっている魔物を――
斬る! 斬る! 斬る!
魔物の肉片と真っ赤な血が地面にも飛び散り、息を荒くしている2人も返り血を大量に浴びている事に。そんな生臭くぬるい液体を浴びてもディリーにルフラン双方とも立ち尽くし、息を整えるのに精一杯だ。気にしている場合ではないのである、どこから湧いて出てきているかわからないくらいの圧倒的な数でも2人は一瞬でも気が途切れるくらい戦った。意識をはっきりさせるために首を振って目眩を振り払う。
――もう少しもう少しだ
――もう少しで終わる
――人間にやってきた事の報いだ、その報いを受けるが良い!――
ディリーとルフランが完全に息を合わせて放った斬りが炸裂した。
「ツインスラッシュ!!」
クロスしたように斬った2人の剣速によって上昇気流が発生し、魔物が吹き飛ぶ。
どれくらい倒しただなんてわからない、疲労のためか2人が倒れかかった。
「これで終わり……か」
そう思った矢先、体力や精神力が限界に近づいている彼らにとって絶望的な魔物の人語が耳に入ってくる。
「オノレ、ニンゲンゴトキニヤブレルワレデハナイ」
「お前か!? お前がこいつらの親玉なんだろ!?」
「ソノトウリダニンゲン」
魔物の感情も何も感じられない無機質な声はディリーとルフランの癇に障った。
「よくもまぁ、ぬけぬけと応えられるな」
「俺は貴様を意地でも倒すっ!」




