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気持ちの甘さ(改稿版)  作者: 霜三矢 夜新
この幹部は……!
73/112

グレイの帰還 2

             ◇


 翌日――――――

「う゛~~ん、頭痛いよー。飲みすぎた~~っ」

 メイがどれだけ酒に弱いんだかという感じだが、氷のうで頭を冷やしながら辛そうにしている。

「お前な~~、ホント覚えてね―のかよ。半狂乱な状態だったぞ」

 トムが仕方ないやつといった感じの目でメイに語りかける。メイは恥ずかしそうに「覚えてない」と言った。

「ハハハ、僕を祝う会じゃなかったの? ま、楽しかったのには変わりないんだけどね」

「そうよ、メイったら一人でほとんど飲んで騒いで大変だったんだから」

 兄のグレイのいじりやデュアのそんな事があったんだよという報告に、メイはうなだれるしかない。


「……メシ食ってくるから大人しくしてろよ」

 食欲がないメイはうなづきで返事をする。デュア達は食堂に行こうと階段を降りていった。

「ふ~~っ、僕もちょっと気分が悪いかも」

「大丈夫かよ、吐いたりしねえだろうな……」

 トムが疑いの目を向ける。グレイはちょっとすまし顔で「さあね」とうそぶいた。おいおい、さあねじゃねーよとトムは気が気でない。

「大丈夫よ。水……とーっても冷えているやつを持ってくるわね」

 多分だけどグレイは平気だろうとデュアは思っている。食堂に向かうデュアにトムが声をかけた。


「じゃあ俺はグレイと一緒に部屋で待ってるからな」

 お願いねとトムに目配せして食堂に水をもらいに行った。


――食堂


「お冷くださーい」

「あいよっ、デュアちゃんっ。持ってけドロボー!」

 数日宿泊させてもらって食事はここですませているので顔なじみになりつつある。食堂のおばちゃんとの冗談の言い合いも少し楽しい。

「まあっ、失礼ねっ! あたしドロボーじゃないものっ!」

 おふざけしちゃったとばかりに舌を出す。もらったお冷やを手に小走りで部屋に戻るって言っていたわねと自らの記憶を探った。


 食堂からまず階段までの距離は少しだけあった。そこにトムらしき人影があったので手を振る。

「おーーい」

 階段の近くでグレイがぐったりと柱に背を預けている。何かイヤな予感を覚えた。

「トム……グレイはどうしちゃったの?」

「ん? おお、持ってきてくれたんか。いや、ちょっと蘇生したばかりだからなのか体調が思わしいとはいえね~みたいなんだ」

 グレイのやつ大丈夫かといった瞳で見守っていたトムだったが、デュアがお冷を渡すとグレイのほおに押し当てる。


「うひゃあ!」

 相当びっくりしたようだった。

「飲んで。スッキリするよ、きっと」

 んっ……と小さく返事をして少し冷えた水を口に運ぶ。急に冷たい飲み物を口にしたからかキーンときたようでこめかみを抑えながら「効くなこれは」というような表情を浮かべる。

ふぅ……と一息ついてお礼をした。

「あ……ありがとう……。少しでも楽になったよ」


 ずれた眼鏡を直して

「さーて、僕の調子もこれくらい戻れば問題ないよ、そろそろ行こか?」

「う……うん!」

 トムはまだ半信半疑である。

「大丈夫か? 本当に」

「だーい丈夫だってば! そこまで……心配しなくとも」

 グレイがまだ無理をしているようなというのが顔色で判別できるとトムは思っていた。その考えは間違っていなかったようでグレイの意識が朦朧もうろうとしているのをさりげなく支える。


(うーん、ヤバイ……意識が……やっぱ蘇生したばかりとか影響してんのかな……足元もふらついてきてるし)

 心配をかけまいと気丈に耐え忍ぼうとしても、グレイは本人は気づいていないが辛そうに顔を歪めているのでデュアも無理は禁物だと優しく説得した。

「ねえ、グレイ。やっぱり休んだ方がいいんじゃない?」

「そんな事――……」

 これくらい体調は良いんだと見せるつもりが、グレイはバランスを崩してトムにガッシリと受け止めてもらう。

「バ、カ。無理してんじゃねーぞ。寝てろ!」

「いや~~、お心遣いありがとう。でもお腹に何か入れないと……」


「……そうね。でも消化の良い食事だけにして休みなよ」

 強がっているグレイに体調の悪い人なら起こしかねない状態にはなるなと釘をさした。

「言っとくけどな! くれぐれも食ったものを戻すなよ? 絶対だぞ」

「わかってるよ~~、信用してくれよォ~~」

「わーったわーった。でもマジでやめてくれよ?」

「無理だけはしちゃダメよ」

 デュアにまで言われて、グレイは少しうんざりし、苦笑いする。

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