クイの様子見? 2
体調不良だったため、遅れました。
グレイにはこう思われている。
(偶然だろうけどな)
そんな一時的に和気あいあいな雰囲気になっているデュア一行のところへ10才くらいの男の子がやってきて――デュアの服を引っ張った。
「ん? なぁに坊や」
用事っていうかといった感じの男の子。目線をライスボールに移しつつも、知らない旅人さんにこんな頼み事をするのはどうなんだろうと躊躇している感じだ。
「ううん、別に。僕も仲間に入れて欲しいなーっと思っちゃって……」
別に街近くの丘なんだから男の子の一人くらいいてもおかしくないかと考えてデュアが他の皆に尋ねた。
「……だって。いーい? みんな」
デュア以外の3人が声をそろえて
「いーよ、別に」
一緒に遊ぼう(話そう)という風に誘われて、男の子が喜ぶ。
「わーい、ありがとー。お兄ちゃんお姉ちゃん達」
獣道なら魔物も生息しているのだろうが、町と町をつなぐ正式ルートなら魔物よけの色んな効果を人の手によって施されているのでまず出現しない。この丘は街の人の憩いの場所として大都市魔法軍が結界を張っているらしく、町の人がいても何の不思議もないのである。子ども一人なのかと思いはしたが、結構な数の大人が周囲にいてそれぞれが好きに遊んでいる。なのでこういう事も普通に行わていて人の親切を受けているようなので不思議に思った事が氷解したような気がする。
「ボク、名前は?」
元気よく返事をする男の子。
「クイ!」
名前を聞いたので、今度はこっちが自己紹介してあげようと4人が簡単に名前の紹介だけをした。
「ふぅん……あたしはデュア。デュア=ローレンス」
「オレはトム。トム=ライトだ」
「あたしはメイ=キートン」
「僕はグレイ=キートン」
親の躾が良いのか、クイが嬉しそうに挨拶をしてくる。
「よろしくね! お兄ちゃんお姉ちゃん」
気付かれないように一度後ろを向いて何かを企むクイ。一番しておきたい事を小さく口に出して行動に移そうかと思った。
「ふぅ……ん。バラス叔父さんの言う通りすっごい優しいんだな。そうだ! ペンダントを確認しとこうかな!」
ペンダントを指さしてそれ大切なものなのとクイが質問する。
「え……これ? これの事だよね。パパの形見なのよ……。バラスって魔族幹部に命を奪われちゃったんだけど……」
悪い事聞いちゃったかなといった様にしょげかえったフリをするクイ。
本音はまたもや自分だけで何かを確認するかのように物思いにふけるように考えるのがやりたいことだったりする。
(へぇ。叔父さんってば自ら足を運んで殺してしまうなんて珍しいな。いつもなら部下にやらせそうなのに。災いの元は早く始末したってワケか。叔父さんらしー)
トムが純粋に好意でクイにおにぎりを差し出した。クイが黒い事を考えていたなんてわかるはずがないのでやりたくてやっている事だとわかる。
「なあ! ボウズ! これ食わねーか? うまいぞ」
ここで断っては怪しまれるかと思い、年相応の子どものフリをしてクイは受け取った。
「うん! 頂きます」
パクッ!
「うえ~ん、酸っぱ~~い。ナニコレ~~」
急に口の中で酸っぱさが広がったのでクイが表情に出した。
「ありゃ、それは梅干しだったか。わりぃ」
「んも~。ビックリしたよ。でも美味しい」
結局普通に食べ始めたクイを見て、デュアがニッコリしながら珍しがる。
「フフッ、珍しいわね。酸っぱいタイプの梅をパクパク食べる子どもっていうのも」
「……っくん! ごちそうさまでした」
一応メイがお礼を返した。
「お粗末さまでした! ……なんてね」
食べ終えて4人が一時的にだらけ出す。
「ふ~、食った食った」
結構近くでクイが不敵な笑いをしているのに4人ともが気付かなかった。
メイが早速食後に体を動かしたいのでトムを誘う。
「ねlち、付き合ってよ」
「ちょっと待てって!」
「じゃ、勝手に運動しちゃお!」
どーぞご自由に……とトムが手をひらひらさせた。
当然クイに言ったつもりなんてないが、ちょうど良いタイミングだと思ったのかレアな能力を使用してデュア達の動きを止める。
コォォォォ……と何やら不穏な音にトムが驚きの声をあげていた。
「うわ!! なっなな。なんだぁ!?」
たまたまその場にいなかったグレイ。どこへ行っていたかなんていうのはお察しの通りである。それでクイの脅威の能力から逃れられたのだから運が良いともいえる。
「!! みんなが固まってしまっている……!?」




