謎の女性はやはり!!?? 3~~次の目的地は 1
「そーかそーか、トムが一人で熱くなっていたんだもんな」
「何が言いたいんだよ、グレイ!!」
グレイだけでなくメイには兄の言いたいことが理解できたらしく、後の話を継いだ。
「トムにはあの人の瞳が訴えかけていることがわからなかったのね」
「ハッ! 見たくもねーよ」
実際はアイラの闘気に押されて、瞳を直視できなかっただなんて言える訳がない。なので話にならないとそっぽを向いてごまかす。
「トムは熱くなると周りが見えなくなるんでしょ」
そうグレイに問いかけられたトムはその通りで何も言い返せない。
「あの人の瞳には不思議な事に一点の曇りもなかった……。それに……」
グレイが思った事に、メイが自分の主観も上乗せする。
「それに……ね? あの悲しげな目……。何か理由がありげだったわ」
「話しになんねーよ、帰るぜ!」
いくらそう言われても、トムが自分で感じたものではないので話は平行線のままだ。どことなくやるせない怒りを足音で表現しながら宿屋に戻っていった。
「くすっ。まーた怒っちゃった」
小悪魔な笑みを浮かべてメイが舌を出した。トムの後ろ姿を見ながらグレイも妹のメイに同意する。
「でも本当の事なのになー」
「ま・ね~。さー、グレイあたし達も帰りましょう」
トムを驚かすためにズルをするメイ『テレポート』
部屋の寝床に腰掛けて、メイは部屋に入ってきたトムに手を振って愛嬌を振りまいた。
「はろーん、トム」
「おいっ……」
何かを言いたそうなのでメイは続きを促す。
「なぁに?」
「なんで……お前ら俺より早いんだよ!?」
今更何を言っているのと呆れた感じかと思いきや、そんなことはおくびにも出さず軽い口調で言うメイ。
「そりゃあ瞬間移動できるから~~」
(そうだった……)
先に部屋に戻ることで少しでも反省するつもりだったトムはそれも出来ずに意気消沈した。
実力の足りなさを憂慮しながらトムが改めて双子ちゃんに愚痴る。
「この頃、全ーー然、レベルが上がらないよな」
理由の想像はついているけど、トムを納得させるためにメイは召喚で精霊リリィを呼ぶことを提案した。
「久しぶりにリリィさんに聞いてみよっかー?」
「そうだな」
簡略召喚で呼び出せるリリィをメイが召喚した。「召喚、リリィ」すると光が射して――
「は……ろ~~。お久しぶりっこですねーみ・ん・な~~!」
無意味にぶりっこ(?)のマネをしながら登場するリリィに3人は無言になる。この場に気まずい空気が流れて時間が止まっているかのように静寂が周囲を包んだ。しかもトム達3人とも反応するつもりがなさそうである。どうしようもないのでリリィは苦笑しながら要件を尋ねた。
「ありゃっ、はずしちゃいました? アハハ……で、何の用です?」
「この頃さ、レベルが上がる様子がねえんだよ。なんでだ?」
こめかみに2本指を当てて、リリィが質問を返す。
「あのですねぇ……。あなた達……戦ってますぅ?」
思い立った時に戦闘するくらいなのでメイが正直に言った。
「えー? あんまりィ……」
「だめですよ!! あなた達、いろんな相手と戦って経験を積まないとレベルは上がりません! レベルよりいろんな敵と戦って適応能力を上げることに従事して欲しいですが」
「そっかー……」
メイのわかっていたはずなんだけどという感じの返事の仕方に、リリィの心配の種が増える。
「まったくもう。『そっか~』じゃありませんよ! 困りますね……あなた達の使命わかってますよね?」
「ん~~、一応わかっているつもりよ」
「じゃあ簡単で良いので説明して下さい」
リリィに説明を求められたメイは使命についての再確認を求められたが、どう言っていいのかわからずに言葉を濁した。
「う……そう言われるとわかんない」
「ほらご覧なさい。わかってないじゃないですか」
トムを納得させるつもりで呼んだ精霊に、メイが一番注意されている感じが嫌で話題を別の事に持っていく。
「そ……そんなことより後いくつ経験を積めば良いの?」
「話をはぐらかしましたね? まぁ、いいですけど……。後300回くらいでしょうか」
「さ……300ぅ!?」
せっかく戦ってきた何度かの戦闘なんて神経をすり減らした割に意味を持たないと感じたメイが精神的な疲れを言い訳に寝っ転がった。
「ああ~~~~、もう駄目……。疲れた……これといったことはしてないけど」
そんなメイの様子に精霊リリィが優しくさとす。
「な~に疲れているんですか? でもご安心なさってメイ。これからの話を教えてあげれば、『だからか! すぐすぐ』と納得すると思いますよ」
「な~んだ、ホッ」
小さくメイが吐息をもらす。そして、これからの行動について精霊リリィの意見を聞いた。




