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気持ちの甘さ(改稿版)  作者: 霜三矢 夜新
この幹部は……!
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謎の女性はやはり 2

 しかし、トムもハンデを与えられる実力差は別としても許せないらしく――

「俺は自分だけ有利ってのは卑怯なマネだと思っちまう主義なんだよ……。グレイ!」

 グレイの近くに彼が剣の柄を持てるように投げ渡した。

「うわっ……。とと……」

 ちゃんと剣の柄がグレイの手元にいったので、受け止めた。メイはトムに怒られる可能性があるけど、何か嫌な予感がひしひしと体を支配してくるので召喚術詠唱中である。当然町の出入り口が見える範囲といえど、草原の中で町側まで被害がいかないだろうと予測済みだ。誰か人が来るかもという心配はなさそうと考えている。お祭りの終わりに近づいて片付けるお店もあるけど、外に出てくる人はいないはずだと見越しているから。

「言っておくけどあたいは強いよ。3人まとめてかかってきても軽くあしらう自信があるわ」

 なめやがってと、トムが考えの甘さを変えさせるために殴りかかった。


「女だからって手加減しねえぞ! コンチクショウ!! やってやらぁ」

 それでも女の子を殴ったことはないので、心に迷いを持たせない様にぎゅっと目をつぶっての一撃である。しかし、古い例えかも知れないがガキ大将なトムのパンチ一発はアイラに片手で受け止められてしまった。

「あらぁっ、これがあなたの実力? フフッ……そんなんじゃ勝てっこないってコトを思い知らせてあげる」

 気を高めたアイラがパンチに気をのせて放つ。

「召気拳!!」

「ぐはっ……」

 トムのお腹付近にアイラがマジックアーマーも物ともしない技を当てる。脂汗をかきつつ、トムがお腹をおさえていた。


「う……ぐぐ……ッ、クソ……。油断したぜ……俺としたことが」

 どこか冷酷さを秘めた視線で、トム達に教えるアイラ。

「それは油断とは言わないわ。アナタの実力がまだ未熟ってことよん」

 召喚術詠唱にまだ時間がかかるメイがアイラにつぶやいた。

「あんた……」

「フン……あたいが最強の武闘家と知っていて戦いを挑んできたわけでもないの?」

 驚愕の事実である。それではどう頑張っても敗戦は必至ではないか。そう思ったトムが、アイラに対して無駄な可能性が高くとも一言ひとこと言わずにはいられなかった。まだ攻撃を受けたダメージによる痛みが残っているが、怒りに身を任せるという愚行。それでもどうにかダメージを与えられそうな選択肢に踏み切ろうとしたのだが――


「おいっ!! てめえ……んなこたぁきーてねーぞ!?」

「フンッ……あたいは今言ったばかりだからね」

「てんめぇ~~」

呆れたようにアイラが首を横に何度か振ると、無駄な時間を使ったわといった感じですごい速度でこの場を立ち去っていく。

「今のアナタ達じゃ相手にもならないわ。つまらないからもっと上達レベルアップした時にまた立ちはだかってあげる」


挿絵(By みてみん)



 せっかく召喚術で召喚魔法を発動させようしようとしていたメイ。なのにアイラが立ち去るという予想外なことで何も出来なかった。立ち去った場所を見つめて困惑した。

「何だったのかしら?」

 魔族のアイラの考えを理解できないグレイも肩をすくめるしかない。

「さぁ?」

 戦士として精魂尽きるまであがこうとしていたトムだったが、アイラにこんな戦いはどうでもいいと思われたことに悔しい思いをする。爪が手の平に食い込む程握りしめていたのでうっすらと拳から血がにじんでいた。メイが心配そうにトムを見守る。声をかけたくても適当な言葉が出てこないので何を言えなかった。


「そんなに熱くなるなよ。あの人……そう悪い人って言い切れないぞ」

 さっきのイベントバトルは何だったのか? それを否定された気分になったトムがグレイにつかみかかる。

「~~どうしてそんな事がわかんだよ!! お……俺達を殺しに来たって言っていたじゃねえか」

「……それは……」

 トムを説得するための言い分をまとめられずにいると、トムが我が意を得たりといった感じで話を続けた。

「ほらっ、言い返えせねーだろ!? だったらそんな事を言うなよ!!」

 しかし、メイにはグレイの言いたいことが伝わったので兄の意見の方につく。

「トム……あたしもそう思うわよ」

「あ゛!?」

 ガラの悪い声を発したトムに気圧されないように、メイは毅然きぜんとした態度で主張した。


「だからっ!! グレイの意見と同じって事よ」

 グレイとメイの双子ちゃんの意見に賛同しかねるトムが、先頭で戦っていた感覚で思った事を口に出す。

「なんだよ!! お前ら!? どう見たって悪人だったじゃねえか!」

 どうしようもないんだからあんたはといった目で、メイがトムを小馬鹿にした。

「バッカね~、トムは」

「バカとは何だ……。バカとは」

 悪口を言われては黙ってはいられなかったが、その後に続くメイの質問に腕を組んで逆ギレした。逆切れの理由はそう思わなかった恥ずかしさもあったかもしれない。

「あの人の目……見なかったの?」

「あー! 見てなかったさ」



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