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気持ちの甘さ(改稿版)  作者: 霜三矢 夜新
この幹部は……!
31/112

魔物退治終了 敵側では、次なる幹部?

戦闘終了したのとほぼ同時に天気が変わる。


ポツっと冷たいしずくがあたってきたことに気付いたデュア達。空を見上げると、雨が降ってくる。

(え゛……! あ……雨!? やっ……やばいよ。僕っ、熱が上がってくる……!)

 グレイが内心焦っている事を隠している間に、デュア達もどうするか協議していた。

「雨だ! どうする? ふえっくしょお~んっ。あ゛~~さぶっ。帰っかー?」

「そうね、風邪を引いたりしたら大変だし!」

「帰るに決まったの?」

 意見を出さないのは不自然だと思われそうなので、グレイも賛同する。

「う……ん。そ……れがい……と思う……よ」

 

 体調の変化にメイがいち早く気付いた。

「どうしたのグレイ。震えているわ……」

 状態を判断して、デュアが一つの仮定を出す。

「……! わかったわ。傷が完全に治っているわけじゃなかったから、体に熱を帯びちゃったのかも。そうとなったら大変だわ! また薬草をすらなきゃ!」

 そして、デュアは全員を自分の体の近くによってきてもらった。

「みんなっ、あたしにつかまって!」

「おっ、おうっ」


 シュン……っとデュアが加速魔法(覚えていたけど何の能力なのかわからなかった。最近気づいた魔法)で街の宿屋のそばまで超スピードで来る。

「テレポートみたいな魔法……デュアも出来たのね。……んもうっ、早く教えてくれればよかったのに!」

 最近気付いたばかりだし、確証はないので教えなかったと伝え、それよりも今はグレイを寝かせるのが最優先と指示した。

「そんな事言っている場合じゃなくない。❔ トムもボ~っとしてないで早くグレイをベッドに運んで寝かせる!」

 いけねーと思いながらも、トムはグレイをベッドに連れていく。


「おっ、おう。早くつかまれよ」

「ゔ~~、悪いなトムーー。ゔっ! 息が……!」

 無理にお礼を言うなと伝え、トムはグレイの様子を気にかけた。

「わー、あんまりしゃべんな。今度は長期離脱とか勘弁してくれよ」

 トムの慌て様に、グレイが苦笑しながら言う。

「縁起でもないことを言わないでくれよ……」

「しっかりつかまっとけよ! もう少しだからなーっ」

 部屋に着いた所でグレイがつぶやいた。

「ふーっ、やっと着いたか……早く寝たいな……」

「おう、寝ろ寝ろ。熱があるときは早く寝るのが一番だぜ」


 宿屋のベッドに入ると、すぐに眠りそうになる。

「う……ん。おや……すみ……」

 思った通り、グレイはすぐに眠りの世界に落ちた。

「ふうーっ、病人がいると疲れるぜ。早く元気になってくれよな」

 その頃のデュアとメイ――

 宿屋の階段で二階にあがりながら、メイが文句を言っている。

「もーっ、デュアったら意地悪なんだから! さっきのような魔法が出来るならあたしが出来なかった時、試してくれても良かったんじゃない」

 ふくれっ面でメイが言っていることを、デュアは軽くいなしていた。

「でもね……私が出来る確率あっても確実性を考慮に入れておきたかったから。私は能力の理解をしてからやりたいタイプだし、メイちゃんが努力してくれる方が嬉しくて!」


 とりあえず試してみるタイプのメイが、デュアに自分自身でもまだ自信がなかった事を伝える。

「だってだって。あたしも最初は出来るなんて思ってなかったんだよ。ふざけてやってみたら出来ちゃったってだけで!」

「それでもやれそうなら徹底的にやれるように努力してほしいから」

「ふーんだ、説教なんてしないでよ」

 デュアとメイがくだらない言い争いをしていた。

「説教したつもりないけど。注意しただけだよーだ」

「あー、そうですか……」

 精神的には少し大人なデュアが、グレイを休ませている部屋に着いたことを教えて言い争いをやめる。


「ほらっ、メイ。すねてないで。部屋に着いたわよ」

 グレイが休んでいたら悪いので、デュア達は静かにドアを開けた。

「トム~~、グレイの具合はどう?」

 部屋に来たデュア達に気づいて、トムが応える。

「ん? あ~、大丈夫みたいだぜ。すぐ寝たんだから早く治んだろ」

「薬草は? すってくれた?」

「そんな状況じゃなかったぜ、運ぶのに一苦労だったからよ。それにこいつ、ベッドに横たわったらすぐに寝ちまったから飲ませるヒマもなかっただろ」




 トムがもっともな意見を言うので、デュアとしてもそれ以上のことは言えなかった。

「……そっか。じゃあ仕方ないねーっ」

「だろ? ……それよりお前ら疲れてんじゃねーか? 今日結構戦闘したからなーっ、休んでいいぜ」

 トムの一理ある返答にも、デュアはその中に隠されている本音を見つけ出す。

「そんな事言って~っ。本当はトムが休みたいんでしょ?」

 おろおろしているトムの挙動でバレバレだった。

「ギクッ! 図星ー、するどいなーっ」

「見え見えよ、全く」


トムはそんな訳だからとベッドに寝っ転がる。

「ふーーっ、今日は心身ともに疲れた……」

 男性陣が寝息を立てているので、メイも眠気を感じたらしくデュアに尋ねる。

「ねーっ、デュア。あたし達も休むう? 疲れた~」

 メイも結構疲労しているらしく、体の動きが緩慢になりつつあった。

「ううん、まだいい。でもちょっと横になっていようかな……」

 今晩はもう一つ他に部屋を取って男女別々の部屋を借りて寝るつもりだったのだが、メイは眠ってしまっているしヘタレと病人なら大丈夫かなと思い直す。

「うーん、じゃあお休みデュア……」

「……おやすみ」


                   ◇


 しばらく横になって体を休めていたデュアだったが、窓の外の空の方から視線が感じられた。

(な……なんだろう? 視線……ずっと見つめられているような……)

 可能な限り冷静に、仲間に助けを求められるように。そう考えながら視線の正体を注意深くデュアは探る。

「おお! なんと鋭いのだろうか! まさしく……私が探していた「心」を持つもの……」

 デュアがどうしようか、どう隙をつこうかと考えている事を知ってか知らずか、視線の主ヴィアンがシーオンという愛馬ペガサスと話していた。

(この娘は本当に私達の求める『心』を持っているのでしょうか?)

「当たり前だろう! 私の視線に早めに気付いたのだから……」

(そろそろ降おりになりますか? ご主人)

 ヴィアンは注意すべきはデュア一人だと判断しているようである。


挿絵(By みてみん)



「そうだな……そろそろ降りるか……この娘も一人だし……」

(一人じゃないですよ、他の3名の方は寝ているだけです)

 目立ちたがりな部分もあるヴィアンが、そう出来ない事を残念がっていた。

(ダ・メです! 音なんて立てたら誰かが起きちゃいますよ。絶対にダメです!)

「わ……わかった……さあ、降りてくれ」

 ヴィアンの命に従って、天馬が宿屋の窓の外で羽ばたいているので美しさに魅いられてデュアは宿屋の窓を開けてしまう。

(天馬……!? そんなわけないよね……あれは伝説上の動物)

 目をこすって、もう一度窓の外を見る。天馬の背中に誰かが乗っていたので声をかけた。

「だ……だれ!? 誰か乗っているの?」


※イベント発動


 天馬の背中の上で、その何者かが名乗りを上げる。

「我が名はヴィアン。そなたの『心』頂戴しにきた」

 月夜に照らされた何者かの顔が見えたデュア。そいつに警戒しながら訊いた。

「あ……あなたもバラスの側近ね! ヴァルマーみたいなバカで卑劣ひれつじゃなさそうだけど」


ヴィアン レベル40 適応能力 45 かしこさ 102


「そうとも」

 おかしな所でヴィアンとデュアが意気投合した。それはそれでよかったのだが、自らのすべきことを思い出して何を敵と馴れ合っていたのだろうと考え直す。

(はっ! 私としたことが娘と意気投合してどうする。私はこの娘の敵……目的を果たさねば……)

 やり直しとばかりにヴィアンに有無も言わさぬ口調で告げられた。

「私と一緒に来てもらおうか……」

 そう告げられてデュアが素直にうなずくわけがない。


「いっ、嫌よっ。私の『心』を狙っているのでしょう! そんな事はさせない」

「その通り。お主は頭がいい……だがこれが私の仕事なのだよ、悪いね」

 デュアはもしそうされたらを仮定して、ヴィアンに聞くまでもなさそうなことを確認した。

「仕事仕事ってやっぱりあなたも冷酷な魔族ね。そして私の『心』を奪ったら私を操り人形にでもする気なんでしょう!」

 ヴィアンが心外だと言わんばかりの表情をした。教えても構わないだろうとばかりに自分がするだろう事を公言する。

「私は……ヴァルマーのようにはしない。そなたは美しい……だから私のそばにぬけがらのまま置いておくことをバラスさまに進言するつもりだ。ぬけがらだから断られはすまい」


 ヴァルマーの行動にデュアは鳥肌が立つ。こんな発言をする奴の元になんか行きたくないと思った。

「と……とんだ変態ねっ。それだったら操られた方がまだマシじゃないの」

 顎に手を当てて何かをヴィアンが納得しているかのような感じになっている。

「ほほう。操られた方がマシねえ……だが、生憎あいにくわたしはそういう力を持ち合あわせていないのでね」

「……そう……でも私はどんなことをされても行く気はないったらないからね」

 覚悟を決めるデュアではあるが、ヴィアンが不敵な笑みを浮かべて告げた。

「抵抗するだろうとわかっていたがね。それでは私にも考えがある。こっちもどんな事をしてでも連れて行かねばならない」

「どうしてよ!?」



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