新たな幹部 1
暗闇の居城(魔族アジト)
負けて戻って来たヴァルマーにバラスが叱責する。
「それで何かわかったのか?」
「ええ、それが……」
ヴァルマーがデュア達一行が想像以上に手強い事を話すと、バラスはヴィアンを呼び寄せうことに決めた。
「ふむ、そうか。それならばヴィアンに頼むかな」
ヴァルマーにとって、そいつに役目を取られるのは面白くない。
「えーーっ、なぜですか? なぜトレヴィアーンなんかに……」
そこでヴァルマーに毎回毎回と言った感じで現れる影。
「トレビアーン! ではないと何度言ったらわかる!」
「あっ、どっからわいてきたの?」
ウマが合わない二人、お互いに気に入らない関係なので罵りあった。
「バラス様のお呼びがなければ来るわけないだろう、馬鹿ヴァルマーが!!」
「誰がバカじゃい」
ヴァルマーの怒りに油を注ぐような言い方をするヴィアン。
「おっとバカじゃないなら大馬鹿だな、ハハハハーだ」
(ぬっ、ぬわにぃーーお前の方がバカだよ。バカっていった方がバカだろうが)
ヴィアンは心を読んで冷酷な言葉を浴びせた。
「ふん、思うだけでなく口で言え。バカヴァルマー。無理か、負け犬だしな!」
「やっぱり思っていることを読みやがったなヴィアン、スケベな野郎だ」
「だあれがスケベじゃいっっ。お前の方がよっぽどじゃねーか」
「へんっ! お前よりましだいっっ」
バラスはため息をつきつつも、お互いのいがみあいよりさっさと本題に入るように忠告する。
「ハア……こいつらを会わせるのはさけてきたが……。そろそろ本題に入れ!!」
続けてバラスの命令。
「おい! ヴァルマー。そいつにマーヤから聞いたことを教えよっ」
「はいっ、バラス様! ありがたく思え!」
態度の豹変ぶりもヴィアンは気に入らない。
「~~~~~~~」
怒りのあまり、ヴィアンは声をあげられなかった。
「大声では言えないから耳を貸せ」
ヴァルマーがヴィアンの耳を引っ張る。
「よーく聞けよ。鼻血ブーしそうな話だからなっ」
「話さなくてもいいぞ。読めるから心で話せ!」
ヴァルマーにとっても、わざわざ声に出して答えなくて言いぶん楽だというのはあった。
「ふん、わかった」
そして、心のなかでヴィアンに問いかける。
(さっき教えただろ? 緑の髪の娘の話だ)
テレパシーのように二人だけが理解できる感じで情報を伝えあった。
(ん? ああ、わかるぞ。そいつが『優しい心』の持ち主といったところか)
(そうだ! それでなっ、契約履行のためにはあんな事やこんな事をしなくてはならないと言われた)
ヴィアンが心なし赤面しながらも、ヴァルマーを鼻で笑うことは忘れない。
(うっ、うわっ。それは鼻血が出てしまうかもしれんな! ハンッ、貴様はそんなことに免疫ないから仕方ないか)
(だろう~っ? 俺様はデリケートだからその……あの……あんなこと、そんなことなんぞ出きん。だからバラス様がお前に汚れ役を引き受けさせるつもりなんだろうよ)
「んなことをバラス様が言うはずがない」
ヴァルマーの妄想の混じった言動を皮肉るため、ヴィアンはバカの話を聞き続けてやった。
(ん……まあ、それについては嘘なんだが。俺様がデリケートなのは本当だぞ。そういう行為のことはさっぱりわからん。ヴィーちゃんがやってよ)
ヴィアンはそんなことよりも、デュア達一行のしぶとさに興味を持つ。
「OKだ。そういうことをすることになればテレる。けどなっ、やってやるぜ」
(さすがヴィアン! 頼んだぜ!)
ヴァルマーを自分より下だと思っている(実際にヴィアンの方が強さは上)ヴィアンが、命令口調で言った。
「なんだあ? その言い方は? えっ!? もっと丁重に頼みたまえ」
(チッ、なんだよ偉そうに)
毒を吐いているヴァルマーの心中がわかるので、指摘する。
「偉そうなのはお互い様だと思ってやる。さあ、頼め!」
(ヴィアン様、いたいけな私に代わって成し遂げてきてもらえませんか)
「フンッ、いいだろう。やってやらあ! ありがたく思え!」
ヴァルマーは怒りをどうにか押しこめつつ、お願いした。
(下手に出ていればいい気になりやがって。クソッ、あーイラつくっ)
「フッ……行ってくるぜ」
かっこつけているヴィアンは若干ナルシストが入っているかもしれない。
(せいぜい気をつけろよ、じゃーな)
「ではバラス様、万全を期するため三日後でも問題ありませんよね? よろしくお願いします」




