ヴァルマーのヘマ 4
「小娘め! 自分の仲間を攻撃するようなマネがここまで出来るとは。ん? うおおおおー」
心なきトムの接近にヴァルマーが気づいた時にはもう遅かった。思いっきりぶつけられたヴァルマーはトムの理玉を落としてしまった。それがトムの口に転がり込んで体内に入る。
「失敗した。しまったー。これでは小僧も元に戻ってしまうではないか」
「う~ん、こいつは一体? 体中アザだらけだし、傷も出来てるし、口の中火傷しているしでもう痛さ通り越してんじゃん」
トムが戻ったことを知ったデュアは難度の高い回復系呪文で傷を癒した(今のところ無意識)
「おぉっ、デュア。どうなってんだこれ? うぅっ、そういえば」
デュアがトムを心配そうに見つめていると、本気になったヴァルマーが力を発揮してくる。
「この私もラストチャンスなのでなぁ。貴様らに残る可能性の芽というのをすべて潰してやろう」
謎のジェスチャーを繰り返してヴァルマーが何かをしようとしていた。光の加護を受けているデュアはそれに気づいたがもう手遅れである。
「召喚、魔術法 両双術式封印、魔族流・禁じ手」
魔法で攻撃しようとしていたデュアにとっては誤算であった。そうすると同時に魔族の力をヴァルマーが溜め始めた。
「さあ、ひざまつけ。勝てるはずないと泣いて許しを媚びてこい。その姿はそのまま貴様らの敗北に直結するのだ」
会心の力を込めたグレイの斬りかかり。ヴァルマーに斬撃を浴びせようとしたが、いともたやすく躱されて反撃をモロに食らってしまう。
「愚かなっ! 自ら死を選ぶか。そこの小娘も光の加護だか何だか知らんが無意味だと教えてやる。早くオレにダメージを与えられるものならやってみせろ」
本気になった魔族の幹部が一人、ヴァルマーはやはり強大だった。
「つ……強すぎる。心を失っていたトムより上をいくかもしれない」
その時の気がすまなくなったトムが、グレイに謝罪する。
「謝るしか出来ねえ。グレイ、悪かった」
「そんな事をしている場合じゃないわ。トム、来るわよ」
デュアのおかげでトムはどうにかヴァルマーの攻撃を避ける事が出来た。
デュアがヴァルマーを倒す方法を考えていると、トムが思い出した事を伝える。
「デュア、あいつを今のオレ達が倒すのは基本的に無理だ。でも何とかあいつに隙を作らせることくらい出来んだろ? その後はオレに任せてくれ」
ヴァルマーの次の攻撃に備えながらも、トムとデュアで作戦会議をする。デュアはトムから聞いた作戦を実行しようとしていた。
「全員まとめて倒す、寝言か……っと!? 何だ、小娘。貴様からか? お前だけは生かしておかんとな」
「それは嬉しいわ。でもねっ、そう上手く行く程世の中甘くないのよ」
光の力を身につけたまま、最後の力を振り絞ったデュアの行動が予想外だったらしくヴァルマーは隙を見せる。そこをトムが斬りつけた。
「そこだ――――!!」
トムの一撃は空を斬った。身を翻してかわしたのだ。そこへ雷が落ちてくる。
「雷鳴の指輪! 油断したわね、ヴァルマー」
私を忘れないでとばかりにメイがシャドーマの落としていったアイテムを使った魔法攻撃発動。ヴァルマーにダメージを食らわせる。そこへ追加するかのようにトムが再度斬りかかった。
「何のマネだ? 小僧。しまった、最初から弱点が狙いだったか」
トムの斬撃が肩から肺付近を傷つける袈裟斬りな感じで決まる。その付近に核がある様で大ダメージ。
「最後までオレ達が諦めなかったからだな」
魔族幹部ヴァルマーはデュア達一行に祝福のエールを送り潔く、自分は今後の境遇を思って嘆く。
「俺にとって最後のチャンスと言われていたのに。こんな結末を迎えるとは。大人しく受け入れてやるわ―」
そういいながらも、敗走するだけのヴァルマー。まだ倒せた内に入っていないようである。闇のワープ出現を知った暗闇の城主バラスがマーヤに確認した。
「マーヤ、最初っからこうなるとわかっていたのか?」
マーヤはローブのフードで目を隠した状態で、バラスの問いに目を細めた感じで応える。
「ええ。私の占いは外れる確率が極端に低いですからな」
闇のワープ空間が消えるまで、こちら側ではデュア達一行は気が抜けないでいる。
また新たな強敵が出てくる可能性も否定出来ないので背中に嫌な汗を全員がかいていた。
「トム、よくこんな方法を思いついたわね。そうじゃなきゃ危なかったわ」
「心の機能を失っている時の事を断片的にでも思い出せたんだ。でも実はメイの方が主役級活躍だったな」
「そんな事ないわよー」
闇のワープにヴァルマーが転送されたことでやっとそれぞれで感想をもらす。これからも強い魔物が山ほど現れるだろうから(幹部クラスも数名いそうだし)精進しようと彼らは話した。敵の組織を潰すまでデュア達は表世界に戻れない。冒険はまだまだ続いていくだろう。




