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冒険者ギルド

 




「着いたぞ、ラウルス皇国だ」

「おお…!!」


 はい、ということで、到着しましたラウルス皇国。ハイルたちと出会って6日目にしてようやく辿り着いた。城壁に囲まれたラウルス皇国には四方に巨大な門があり、俺たちが着いたのは南にある門だった。



 ああ…、疲れた。そして眠い。寝付けないからってダンジョン作成に励むんじゃなかった…。

 疲れているのに慣れない野営で良く眠れず、どうせ眠れないならと毎晩せっせとダンジョンを作っていたのだが、さすがに昨日はやめておけばよかったな。睡眠時間が足りず疲労がやばい。


 そういえば、APで提供した料理がべた褒めレベルで好評だったのには驚いたな。[カタログ]内の料理がこの世界の人の口に合うか知りたくて何種類か交換してあったのだが、ただのシチューがあんなに喜ばれるとは思わなかった。

 結構好評だったし、ダンジョン運営のついでに宿屋を経営するのもいいかもしれない。カタログでちょちょいと交換すれば美味い料理が出せるのだから、いちいち作らなくて良ので楽だ。

 それに、食事が出来てしかも安心して寝泊まりの出来るところが近くにあれば、ダンジョン攻略もしやすくなるし人も集まるだろう。というか、俺がダンジョン攻略側だったら嬉しいと思う。ダンジョン攻略後にいちいち街や村に帰る必要が無いのだから、楽だし便利だしで凄く助かる。


 ちなみに、料理屋は宿屋より忙しくなりそうで嫌なので却下だ。まあ、俺はある程度安全に安定して稼げれば、他に強い拘りは無いけどな。


「止まれ!」


 門番に止められ、求められるままハイルたちは身分証を提示した。


 冒険者にとって身分証とはギルドカードのことである。貴族や王族が身分を証明するために家紋入りアクセサリーを身に着けるように、冒険者は冒険者ギルドで発行されるカードを身分証明証として持ち歩くのだ。

 ギルドカードには氏名、種族、職業、冒険者ランクが表示される。発行する際、カードに自らの血液を垂らすことで本人以外には使用不可能にするという、なかなかの優れものである。


「ん? その、後ろの子供はどうした?」


 おっとこの野郎、全力で子供扱いかこんちくしょう。


「ん? ああ、拾った」

「拾った?」


 おおい、ハイルさーん? 拾ったって何だ、拾ったって。間違っちゃいないが、もっと他に言いようがあるだろうが!





 *





 入国税として銅貨20枚を門番に渡し無事ラウルス皇国への入国を果たした俺は、ハイルたちと共に冒険者ギルドへと赴いていた。


 冒険者ギルド・ラウルス皇国支部は、二階建ての大きな屋敷だった。木造ではあるが窓や壁には装飾が施されており、周囲の家々と比べても十分豪華な建物だと言えた。

 正面の大きな扉を開け中に入ると、ゲームでよく見るありがちな内装だった。

 右手は長テーブルと長椅子が置かれ酒場になっており、冒険者たちが酒を片手に世間話に花を咲かせているようだ。正面には二階への階段と扉があり、奥の部屋は出入りする者の服装からしてギルド関係者用の部屋のようだ。左手は仕切りで区切られたカウンターに職員が並んでおり、そこが依頼等の受付を行っているところだと思われた。


 ハイルは迷いなくカウンターに向かうと、手近な受付嬢に声を掛けた。


「こんにちはー」

「こんにちは、ようこそ冒険者ギルドへ。どういったご用件でしょうか?」


 カウンターで俺たちを出迎えたのは、とんでもなく美人なお姉様だった。腰まである美しい金の髪に赤みがかった茶色の瞳、男を惑わす魅惑のボディを持つ美人受付嬢。軽く一目惚れしかけるくらいには美人だ。


「ロサから物資輸送の依頼を受けて来た。依頼書と品物だ、確認してくれ」


 そう言ってハイルは、依頼書らしい丸まった紙を差し出し、品物が入っているのだろう布袋をゴトリと硬い音をさせてカウンターに置いた。

 彼らはここに来る前に依頼を受けていたのだ。ただ移動するより、護衛や物資輸送などの依頼を受けた方が、ついでに金が稼げて効率がいいからな。


「ポーション16本とマナポーション4本ですね。はい、確かに受け取りました」


 ちらりと見えたが、袋の中身は水色と紫色の液体の入った10数センチ程の小瓶だった。数から見て水色の方がポーション、紫色の方がマナポーションだろう。

 中を確認した美人受付嬢は笑顔でそれをカウンターの下にしまい、かわりに銀貨3枚と手のひらサイズの袋を出した。ジャラ、と音が鳴る。


「こちら、報酬金の360アウルムです」

「どうも」


 ポーション16本とマナポーション4本を運んで360アウルム、ということは一人90アウルムか。報酬として高いのか低いのか分からないな。いや、道中の危険などを考えると少し安いのだろうか。

 その辺も詳しく知る必要がありそうだ。


「じゃあ、俺たちはもう行くよ」


 用事を済ませたハイルが、俺の頭に手を置きながらそう言って笑った。依頼達成の報告をするところを見せてもらうことになっていたのだ。ここまでの護衛や情報提供などをしてもらったし、最後まで子供扱いなのはこの際目を瞑るとしよう。


「本当にありがとうございました」

「もうああならないように気を付けなさい?」

「頑張ってね、リョータ」

「また会おう」


 彼らにはこの国で冒険者をしてみるつもりだと言ってある。再びこの国に来た時に再会出来ると思っての言葉だろう。


「じゃあな、リョータ。元気でな」


 名残惜しそうに俺の髪を撫でるハイルにもう一度礼を言うと、彼らは笑ってギルドを後にしていった。騒がしいが、いい連中だった。


「あの」


 少し感傷に浸っていると、さっきの美人受付嬢に声を掛けられた。


「あ、すみません。俺、邪魔してますか?」

「いえ、それは大丈夫ですよ。今の時間帯はだいたい暇なので」

「そうなんですか」


 冒険者なら普通、昼時は依頼をこなしているのだろう。現に酒場の方はそれなりに人がいるが、6ヶ所あるカウンターは俺がいるこのカウンターを除いて一つしか使用されていない。


「それより、貴方も何かご用件があるのではありませんか?」

「あ、ええ、そうです」

「やっぱり。そうだと思いました」


 よかった、と言うように胸をなでおろす彼女。はて。俺はここに来て「俺自身がギルドに用事がある」といったことは一言も言っていないはずだが。


「よく分かりましたね」

「うふふ、何となくです。女の勘、でしょうか」


 はあ、と曖昧に返す。第六感(おんなのかん)か、それは侮れないな。


「それで、ご用件は何でしょう?」

「えっと、冒険者になりたいんですけど」

「ああ、そうでしたか。では、冒険者登録とギルドカードの発行を致しますね」


 こちらにご記入ください、とB5サイズの紙とインク壺に入った羽根ペンがカウンターに置かれた。それを素直に受け取り、さらさらと書き込んでいく。


 氏名、リョータ・ソノダ。種族、ヒューマン。職業は…何だろうな。まさかダンジョンマスターと書くわけにもいかないし、冒険者と名乗れるのはこの登録が終わってからだしな…。

 しかし、今書かないもしくは書けない場合、専用の道具で適正を調べられる。そうなったら、全ジョブ取得済なのがバレてしまう。何かしら書かなくてはなるまい。


 前衛職は俺には荷が重いし、生産系ならそもそも冒険者には向かない。かといって占星術士や召喚士、精霊魔導士などは自らが攻撃しなくていい代わりに、珍しいジョブのためどこかのパーティーに混ざろうとした場合目立ち過ぎるので選べない。

 となると、パーティーに混ざった時に中遠距離から攻撃するような職か、後衛でサポートするような職がいいだろう。しかし、攻撃系の場合レベルに合った丁度いい威力が分からない。


 と、いうわけで。


回復士(ヒーラー)っと。うん、よし」


 基本は薬で回復して、なんとか回復魔法を覚えて[薬士]から[回復士]になったということにしよう。薬メインなら威力云々は気にする必要は無い。


 ちなみに、文字に関して心配は無い。固有の[言語翻訳(日本人対応)]のおかげで、日本語は書いたそばからこちらの文字になり、こちらの文字は脳内で日本語に自動翻訳される。翻訳機能が素晴らしい効果を発揮してくれるおかげで、俺は何ら問題なく書き取りも聞き取りも出来るというわけだ。チート万歳。

 正確には、レベル上げを頑張った俺とゲームキャラのステータスをそのまま俺に反映してくれた森田さん万歳、だな。まあこの世界的にはチートみたいなものか。


「あ、適正職はもうご存知なんですね。回復士ですか」

「ええ。駆け出しですが」

「そうなんですか。でも回復魔法が使えるというだけで、パーティーにも国にも重宝されますからね」

「そうですかねぇ」

「ええ、そうなんですよ。…はい、では、こちらのカードに血を一滴お願いします」

「あ、はい」


 会話で場を繋ぎながらしっかりと仕事をこなす受付嬢は、今度は手のひらサイズのカードと針を差し出した。針で指を刺しカードに血を付けるということか。

 正直それすらちょっと怖いと思ってしまっている俺は、恐る恐る針の先で指先に傷をつける。ちくり、と小さな痛みが走った。傷の近くを押して小さく開いた穴から血を出すと、プクッと血の玉が出来たのでそれをカードに擦り付けた。痛い。


 それを受け取ると、受付嬢はまた会話で自然に場を繋ぐ。なかなかのやり手だ。ちなみに彼女、マリアというそうだ。名前まで美人感がする。


「お待たせ致しました、こちらがリョータさんのギルドカードです。リョータさんは初めての登録ですので、冒険者ランクはFからになります」

「どうも」


 冒険者ランクは低い方からF、E、D、C、B、A、Sとなる。ランクは依頼(クエスト)をこなしたり、ダンジョンを攻略したり、有用な情報を提供することで上がっていくそうだ。

 一通りの説明を受けた後、最後にマリアさんに「頑張ってください」と言われた。それに少々にやけながら「ありがとうございます」と返し、後ろ髪を引かれながら冒険者ギルドを後にした。美人の引力は凄い。


 さてと。気を取り直して、早速行動開始だ。


 


  【 冒険者ランク 】

 ギルドランクとも呼ばれる、7段階に分かれた冒険者の階級。


F…駆け出し冒険者。下級プレイヤー。世界に約7万人と言われる。

E…一人前の冒険者。一般プレイヤー。世界に約5万人程いる。

D…強者(つわもの)冒険者。中級プレイヤー。世界に約2万人程いる。

C…玄人冒険者。上級プレイヤー。世界に約6,000人程いると言われる。

B…一人で一国の軍相当の強さを持つ冒険者。世界に800人程いる。

A…一人で一国を滅ぼせる程の強さを持つ冒険者。世界に120人しかいない。

S…本気を出せば世界征服出来る程の強さを持つ冒険者。世界に13人しかいない。


※参考レベル

F 1~14/E 15~29/D 30~39/C 40~49/B 50~59/A 60~69/S 70~


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