大蔵<<<<<ミカちんさん(※これからの期待値)
「SAGAVA急便で~す♪」
そして届いたたこ焼き器。
「こ、こんにちは……」
そしてやってきた、榊原。
「ようこそ! バラさん!!」
それを出迎える、大蔵。
タコパだがカモネギである。
当初大蔵はこのタコパ計画にとても嫌な顔をした。
それらしい理由をつけてなんとか回避しようとし、『最悪自分は出ない』的な思考が透けて見えていた。
にも関わらず、既に瑞穂が榊原を誘い、彼女が来ると知った途端に手のひらクルー。
流石は大蔵、打算の塊。
しぶしぶ「仕方ありませんね……」などと言っていたが、無論、しぶしぶはポーズである。
生身の三次元体である大蔵のツンデレなど可愛くもなんともないが、二次元に変換させるとあら不思議。
好きな子が来るとなった途端の手のひらクルーしぶしぶポーズは滾る使える。
「あの、なにも持ってこなくていいって言われたから……ちょっと飲み物だけ」
「わぁ、ありがとうバラさん! 気を遣わせてごめんね!」
(ふふふ……なかなかイイ感じではないか! しかし気が利かない男だな! 『君が来てくれただけで……あっなんでもない!』くらいのジレ台詞くらい吐かんか!!)
使えるのは勿論少女漫画ネタ的に。
『だが、大蔵が如何せん使えねぇ……』予測していた大蔵のダメさにのっけから呆れつつも、そこは先んじて布石を敷いておいてある。
「大蔵くんとバラさんは材料を切って! キッチンはそう広くないし、私達はこっちで粉とかの準備してるから!」
布石とは、コレ。
瑞穂は強引にふたりをキッチンに追いやった。
キッチンは謎リノベによって、壁を挟んだ半カウンターというオサレな造りになっている。──つまり、半個室!!
ふたりきりの空間でイチャイチャ料理をしていただくのである。
「アモンちゃん、Vの用意よ!」
「御意」
ふたりの空間の邪魔はしないよう、監視カメラに似た魔道具によるリモートでの画面確認……要はデバガメ。
題して
『ときめき♡デバガメ・クッキング!~初めての共同作業で甘酸っぱいエピソードを作ってネタを提供しやがれ!!~』
……計画!!
しかし、悪気なく邪魔をしそうな奴がここにいた。
少女漫画ネタ作りという体で自分が『タコパ』と言い出したのもスッカリ忘れ、初めてのタコパにウッキウキの魔王子……デスヘルムト様である。
「余には!? 余にはなにかないのかッ?!」
「ムトちゃんは……はい、長芋をおろしてくれるかな?! アモンちゃん、ムトちゃんに説明して!」
しかし瑞穂はもう、デスヘルムトの扱いを大体覚えていた。
アモンのいい使い方も。
「デスヘルムト様、この作業は究極のたこ焼き作りの要のひとつです! 滑らかにすりおろした長芋から作られるとろろは生地のふんわり感を担い、粉とのツナギとなります。 それはまさにただの『ツナギ』ではなく粉ととろろの『絆』とも言えるもの……! 強い絆で結ばれしたこ焼きの勇者パーティーたる生地は究極そのもの!! ひとたび口にしたら、そのふんわり感にさしもの栗田〇子も『シャッキリぽん』以上のとんでもない形容を以て絶賛するに違いありません!」
「ぬう……そんなに重大な任務とは!」
勇者が対峙する相手は大体魔王と相場が決まっているのにこの喩え……
あとお馴染みのメタ。
要はなんでもいいのである!
ただの時間稼ぎだ!!
「ふっ……任せておけ!」
そしてデスヘルムトはまず、長芋の皮を剥き出した。
「手が痒くなるというリスクに耐えつつ丁寧に長芋をおろす姿って素敵よね~(棒)」
「そうですね、時間をかける丁寧さが肝要ですからね~(棒)」
ふたりの意識は既に、キッチン内の大蔵と榊原を映すタブレットに釘付けだ!
ふたりはややギクシャクしながら、まず荷物をキッチンの適当なところに置く。
「ええと……材料を、」
「あ、飲み物冷蔵庫に入れとくね?」
「あっごめん、気が利かなくて……」
「「……あっ」」
飲み物の入った袋に手を掛けようとした、ふたりの手が触れ合う。
「ごごごごめんっ」
「わ、私の方こそっ」
瑞穂は小さく叫んだ。
「──ベタだな!! くっそ、こいつらまだこんなことしてやがるのか!」
「やはり賢一様……進展は全くないご様子。 ご覧ください、あのしまりのないお顔」
「手が触れただけでェ……はぁ。 使えんのかな、コレ」
今女子ウケは、スパダリ。
もだもだもツンデレも変わらず需要はあれど、相変わらずの大蔵並スペックにはベタ過ぎてため息しか出ない。
「変わらずもだもだするにせよ、なんか新しい展開をどうにかしたいところよね……」
タコパはまだ始まったばかり──
そして今回、生憎まだ来てはいないが新しいゲストが登場予定。
そう、炭水化物に堕ちた天使、ミカちんさんである。
※そもそも大蔵ってツンデレでもないけどね!




