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赤い雨  作者: 結城陸空
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Act5:真実

 銃口はリタの頭をまっすぐ狙っていた。周りには人はいない。辺りに張り詰めた空気が張り巡らされた。銃を持った白衣の男と無防備の少女、この二人が辺りの空間を支配していた。しばら沈黙が続いた。しかし沈黙はすぐに破られた。


「銃?あなた達はいったい?」

沈黙を破ったのはリタだった。

「それはこちらの台詞だ。いったいどうやってこの島に入った?」

「・・・別に入ったわけじゃないわ。偶然流れ着いただけ、突然船が沈没したの」

「船?そうか・・・、あの船の乗組員か・・・。おそらく船長が航路を間違えたのだろうな。運が悪いな」

白衣の男は不敵な笑みを浮かべている。

「どういうこと?」

リタは聞いた。

「あの船を沈没させたのは我々だ。最もこちらは島の掟に従っただけだが」

リタは驚きの表情を隠すことなく浮かべた。

「この島には外のものを何人たりとも進入させるわけにはいかないのでな。

あの船は攻撃射程距離にいたので沈没させたまでだよ」

「なんて奴なの」

リタの顔は驚きから怒りに変わっていった。

「この島には掟がある『島の外から来たものは受け入れてはならない』という掟がな、そしてそれを発見した私にはお前を処分する義務がある」

白衣の男は笑みを浮かべながら言った。

「私を殺す気?いったいこの島はなんなの?」

「・・・まぁいいだろ。冥土の土産に教えてやろう」

白衣の男は語り始めた。

「この島の人間は働かなくてもいいのだよ。働かなくてもほしいものはすべて手に入る。食べたいものを食べることができ着たいものを着れる。だから苦労することや、悩むこともない・・・」

「島の人間は、二十歳になると必ず結婚する。相手は我々があらかじめ決めている。その後、女は一年に一度子供を生み、10年で10人の子供を生む。生むのはすべてこのビル内部でだ。そのときこちらで不妊が起こらぬように遺伝子を操作をする。」

「30歳になると強制的に天国に行ける権利が得られる。だが中には先ほどの少年のように18歳で天国にいけるものも存在する。」

「天国ってなんなの?」

話の隙を突いて、リタが聞いた。

「天国とはそのままの意味だよ。この島は天国に一番近い島だと言っただろ?」

「この島はすべてが手に入る島だ。この島の人間はほしいものはすべて手に入れることができる・・・。ただし」


「自分の命以外は・・・だが」


リタの顔は一瞬引きつった

「自分の命?」

「そう、この島の人間は自分の命など持てはしない。すべて我々研究者のモルモットに過ぎない」

「モルモット?どういうこと?」


「彼も含め、この島の人間はすべて人体実験の道具ということだよ」


リタは驚きのあまり息を詰まらせた。

「人体実験?」

「そうだ、それが天国に一番近い島の正体だよ」

「この島の人間は、自分がモルモットだということは知らない。すべて幼い頃からの教育で天国に行けば更なる幸せが待っていると教えている。いや洗脳していると言ったほうが正しいかな?」

「天国に行くとは実験体になるということ、つまり30歳になれば強制的に実験体になってもらう。必要とあれば30歳にならなくとも実験体となってもらう」

「つまりさっきの少年は18歳で実験体だ」

「実験体の個体数を減らさないように女には子供を産ませ、ストレスを与えないようにほしいもはすべて提供する。そして天国にいけることを最大の喜びとして洗脳してビルに簡単に連れ込むことができる」

「島の人間はすべてそうやって生きてきたのだ。お前が生まれる何年も前からな、いまさらお前が口をだせることではない」

「実験された人達はどうなるの?」

リタは真剣な顔で聞いた。

「・・・人は死ななければ天国へはいけない。最高でも30歳で天国に行く。この島は天国に一番近い島だ」


「・・・彼は・・・レンにはなんの実験を?」

リタは冷静に聞いた

「彼は、一つの大きな実験の最終実験に使う」

「おそらく成功するだろう、成功すれば戦争で勝てるものはいなくなる」

「・・・、彼の体内に核爆弾を埋め込む・・・そして神経回路と脳をつなぎ、

意思一つで核を爆発させることができる体になる」

「すばらしいことだぞ、人一人が核と同等の破壊力をもつ兵器となる、そうなれば」

「そんなことはどうでもいい!!」

突然リタの馬鹿でかい声が響き渡った。

「彼と島の人達を解き放って!!彼らは人間なのよ?」

「それは違うな、彼らは我々のモルモットに過ぎない」

「そして、お前は侵入者の一人に過ぎない」


「レンは、私の言ったことに反応して疑問を持ってたわ」

「関係ない。そろそろ実験は終了するはずだ。過去何人もの人体実験のおかげでこの実験は短い時間でできるようになったからな」


「実験が終われば彼は廃棄される、そしてここでお前を殺せばすべてが丸く収まる」

「あなた達は人の命をなんだと思ってるの!!?」

「人ではないと言っているだろう。分からない奴だ」

「まぁいいお前との話もそろそろ終わりだ。私も結構忙しいのでな。天国であの少年に真実でも語ってやればいいさ」

白衣の男に握られている銃の引き金がゆっくり引かれた。

銃口から発射された弾は、リタの額の中心を突き抜け後頭部から抜けて後ろの壁に当たった。リタは頭から大量の血を流しながら地面に倒れ人形のように動かなくなった。

「フン・・・」

白衣の男は不気味に笑い、銃を下ろした。

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