Act2:会話
「ん……、こ、ここは?」
「あ、気が付いた?」
少女が意識を取り戻すとそこは浜辺ではなく薄明かりが射し込む涼しげな部屋のベッドの上だった。少女の目の前には黒髪の少年が椅子に座っていた。
少女は辺りを見回し部屋の中の様子をうかがった。部屋の中には、タンス、椅子、机、冷蔵庫など生活に必要な家具など一式が揃っていた。少女は再び視線を少年に向けて言った。
「あたし、どうなってたの?」
「浜辺で気を失って倒れてたんだ、だから助けたんだ」
少年は見た感じは20歳前後だが、その話し方はまだ幼さが残る小さな子供のようだった。
「……そう、……ありがとう」
「…僕の名前はレン、君は?」
少年は無邪気な笑顔で少女に質問する。
「あたし?あたしの名前はリタよ」
「どうして浜辺で倒れてたの?」
「……どうしてと言われてもよく覚えていないんだけど、たしか…あたしが乗っていた船が沈没して海に投げ出されたの…それで気を失って気が付いたらここに…」
少年の無邪気な笑顔がさらに無邪気になり再び質問する。
「……、じゃあ島の外の人なんだ」
「ほんとはね、この島に島の外の人を入れちゃあ駄目なんだ、…でもまぁこの場合なら仕方ないかな…」
少年は椅子から身を乗り出して答えていた。まるで生まれてはじめて見るものを見るように目は輝いている。少女はその目に戸惑いながらも答えた。
「そうなの?迷惑にならない?」
「多分大丈夫、それに困ってる人がいたら助けなさいって小さい頃から親に言われてたしね」
それを言い終わると再び少年は椅子に腰を下ろした。
「いまは…1人なの?両親とか兄弟は?」
「両親は10年前に天国に行った、兄弟はたくさんいるけどみんな別々に住んでいて、いまはこの部屋に僕1人で住んでる」
「そう、変なこと聞いてごめんなさいね」
「いいよ、それでもみんな幸せなんだから」
「えっ?そうなの?」
少女は不思議そうにたずねた。
「うん、だってこの島は天国に一番近い島なんだよ、世界一裕福な島なんだ」
「天国に一番近い島?」
少女はさらに不思議そうにたずねた。
「うん、この島はね、何をするのも無料で出来るし、欲しいものもなんでも無料で貰えるんだ、だから生活に絶対困らないんだよね」
少女はこの時思いだしていた。昔、そういう話しを聞いたことがあることを…。天国に一番近い島、全てが手にはいる島。少女は暫く黙り込んだ後、少年に向かって言った。
「やっぱり、あなたに迷惑になるからここから出ていくわ」
「え?大丈夫だよ?」
少年は少しビックリした顔で言った。
「ううん、それに少し調べたいことがあるし、助けてくれてありがとね」
少女はそう言うとベッドから降り、椅子に座っている少年の横を通りすぎて、正面にあるドアから静かに出ていった。




