第41話 国境沿いの基地×創設者の意思
セレスクロニクルとの国境に隔たる山脈『ホワイトベルト』。
1年中雪で覆われたその山脈の中に位置する国境防衛基地【スカイ・ベルト】。
国境沿いの基地とあって、国内の重要拠点となっている。
イービルズで休養した後、何も聞かされず護送車みたいな厳重な馬車に乗せられ移動。窓もなく、2つの席と俺たちの荷物だけという殺風景な室内。人も俺とミラちゃんのみで、小さなランタンだけの光が照らす空間となった。
でもミラちゃんと一緒だったからその程度の事は些細な事で、移動中は楽しく話をして過ごした。旅先とかの移動中の車内で話すのって、なんだか特別感があっていいよね。
そして気が付いたら、ここにたどり着いていた。
雪が降る山脈の近くとあり、めっちゃ寒い。イクシオンでの季節は春で桜が舞っているというのに、ここでは雪が舞っている。
まったく逆の風情を感じながらも、寒さから逃げるように基地の中に入り、ミラちゃんに案内されるがままに奥へと進む。
厳重な警備が敷かれた廊下を進み、建物の一番奥の部屋へ。札には司令長と書いてある。部屋の中はシンプルで、作業机に本棚があるのみ。窓もない殺風景な仕事部屋だ。
ミラちゃんが何の変哲もない壁に触れると、数秒前まで存在しなかった扉が出現。その中はトンネル状になっていて、幅3メートル程度の広さの道がスッと伸びている。等間隔に置かれたランタンの光りが、白銀の壁を照らすが道の終わりがまるで見えない。
方向的には、ホワイトベルト山脈の中に入っていくような形になっている。まさにトンネルの様に掘っていったのかな。
「はわぁ……なんだか秘密基地の入り口みたい」
「秘密基地ですよ。この防衛基地に所属している人でさえ、この場所の存在を知っているのはごく一部にすぎないらしいですよ。そんな所によく作れたものだと感心するばかりです。では行きましょうか」
特に変わることの無い景色の中を歩き始めた。外に比べてもこの空間は程よく温かい。振り返れば扉は消滅しているし。流石秘密基地。ソワソワしてしまう。
「そういえばミラちゃんって、この組織に入ってどのくらいなの?」
「まだ1年ほどですかね。ヴァルフリート家の権限がアイリスお嬢様に移った時に、この組織の話を聞いて入ったという感じですよね。組織の創設にお嬢様の亡きご祖父様である、先々代の当主が関わったとか何とかで」
「そうなんだ! ヴァルフリート家って想像以上に凄いね。騎士団の創設にも、この組織の創設にも関わってるなんて。じゃあ先代当主のヴァルフリートさんの父親も組織メンバーなの? 気まずくならない?」
「いえ。あの人はこの組織の存在も知らないようですので、心配無用ですよ。先代は自分の地位を守ることにのみ固執して、いとも簡単に他人を切り捨てる人でしたので、組織に関わらせるべきではないと判断して教えなかったようで。そもそもあの人、自分以外はどうでもいい主義なので入れなくて正解だと思いますね」
素直な彼女にここまで言わせるとは、話を聞く限り本当にヴァルフリートの父親っていい人柄ではなかったんだね。
財力や権力があっても人柄も良くなくては組織に入れないって、なんとも秘密結社っぽくていい。俺も別に聖人君主と言うような良い性格ではないけども、ほどほどな性格であってよかった。だってもしダメな性格ならあの時点で…ね?想像しただけで恐ろしい。これだけまっすぐに育ったのも家族と彼女のおかげだ。
「本当に先代の功績はミラちゃんをヴァルフリート家に引き入れた事くらいだね。まぁ……それがきっかけで再会できたと思えば感謝することだけど」
「そうですね。どういう思惑があれ結果として、今こうしてアナタの隣を歩けているのですから最低限度の感謝はしても損はありませんね。ここまで来て、何か不安な事はありませんか? 全くなさそうですけど念のため」
「ないよ~。離れていても心が繋がっている大切な人の隣にいる……こんなにも心強い事はないね」
「フフフ、エドガー君らしい。では……いきましょうか」
「ふぇ!?」
刹那、目に前に扉が出現した。
隠匿魔法か幻惑魔法?全然気づかなかった。念入りに何重にも魔法を張って、敵から察知されないようにしているわけか。
いったいどんな秘密が待ち受けているのか。不安はないけど、心のざわめきが少しずつ広がっていく。俺の知りたい真実に、近付けているような気がする。
扉の先は、ロビーにみたいになっていた。ぱっと見に広さは騎士団本部とそう大差ない。いくつかの扉や部屋が見える。山の中を掘っているのに、よくこんなものが作られたものだ。
受付の人にミラちゃんが声をかけて奥に進む。一番奥、3メートルくらいの立派な扉が姿を見せた。スカイ国の国旗が彫られていて、荘厳な雰囲気が醸し出されている。
そして感じる。
この奥から桁違いの気配が複数。決して重々しい雰囲気とかではないのだが、圧倒されるような強さが扉越しにも伝わってくる。
そんな扉を彼女がノックし『スターリースカイ君をお連れしました』と声をかけると。
「了解。入っていいよー」
聞こえてきたのはフリューゲルさんの声。いつもと変わらず優しい声色だ。
「失礼します」
扉は開かれ中へと諭され入ると、部屋の中央に置かれた円卓に座る8人が一斉に俺を見た。
その視線の強さだけでも、一気に空気が変わった。全員から放たれる強者のオーラというか、歴戦の経験からなる風格とでもいうのか。自然と背筋が伸びる思いだ。




