第1話 「インターン魔法騎士団員。忙しすぎるだろ。これ。」
皆様。
お久しぶりです。
ベシです。
第2部。
開始いたします。
皆様に楽しく読んでいただけますように。
机の上に、三つの石が並んでいる。
どれも手の平サイズの大きさで、一見ただの石だ。
魔法文字が書かれている。それだけ。
だが今、そのうちの一つが青白く光っている。
目の片隅で、チラッとみながら。
スルーする。
「……光ってるっすよ。でなくていいんですか?」
ザウルが耳元で言った。
「でれないだろ。今。」
俺は論文から目を離さずに答えた。
魔導通信石。
俺とエーアイが半年かけて開発した、この世界版の携帯電話だ。
声だけ届く。
画像はない。
それでも十分だ。
きっかけは単純だった。
忙しすぎて、直接会いに行く時間がない。
エーアイはアルカナ魔法学校で、魔動船の開発。
テルメとリリはオーユバーラにいる。
レンはラハティとセルマを往来している。
フリギアも、トゥリで国を見ている。
全員バラバラだ。
だから作った。
仕組みがなければ、作ればいい。
それだけのことだ。
「自慢っすか」
「こんなの自慢でもなんでもない。」
朝の五時。机の上には四つの書類が積まれている。
タイカからの各国動向レポート。
エーアイからの魔導船設計図修正版。
学校の課題、属性魔法の応用論文。
そしてテルメからのオーユバーラ運営報告——汚い手書き。読みにくい。
「何から手をつけるんすか」
「全部だ」
「無理っすよ」
「やるしかないだろ」
なんだか、前世の忙しさを思い出すな。
最近、前世のリズムに戻りつつあるんだよな。
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午前の講義は「属性魔法の応用」だった。
大講堂に入った瞬間、空気が違った。
照明が落ちて、スポットライトが教壇に集中している。
ドンドンドンドン——
重低音が鳴り響いた。
ボーゲル先生が、サングラスをかけて壇上に立っていた。
「ウェイウェイウェイ!!諸君!!本日も最高の授業を届けるぞ!!」
……何だこれ。
ザウルが小声で言った。「先生、変わりましたね」
俺も小声で返した。「体育祭から、ずっとこうなんだ」
あの体育祭。
DJボーゲルとして実況をした日から——あの人、戻ってこなかった。普通の授業に戻れなく なった。
「では、いくぞ!!過給増幅魔法の基礎理論!!」
ドゥンドゥンドゥンドゥン——
ボーゲル先生が黒板に式を書きながら、リズムに乗っていた。
「魔力を一段、増幅させる!!イエー!!」
生徒たちが戸惑いながら拍手した。
「さらに増幅!!もう一段!!リピート!!」
……これは、複利の法則だ。 増幅した魔力に、さらにブーストをかける。 その結果が——次の増幅の元になる。
「ウェイ!!この式が——何を意味するか分かるか諸君!!」
誰も答えない。
ボーゲル先生がサングラスの奥で目を細めた。
「……魔力は、積み重ねれば指数関数的に増える!!イエーイ!!」
俺の心が、震えた。
……これだ。
ドゥンドゥンドゥンドゥン——
心の中で、太鼓の音が鳴り続けていた。
これを推進力に転用できる!! 魔導船の推進魔法、ずっと出力が足りなかった。
エーアイが頭を抱えていた問題だ。 答えが今、黒板に——書いてある!!
声に出さず、心で叫んだ。
これだーーーーーー!!!!!
ボーゲル先生がさらに乗ってきた。
「最後に!!この式を、実用に応用するなら!!イエーイ!!諸君ならどう使う!!」
トントは思わず手を上げた。
「推進力!!!」
教室が、静まった。
ボーゲル先生がサングラスを外した。
「……ほう」
一瞬、普通の声に戻った。
「正解だ、トントーーーー!
過給増幅は出力の連鎖を生む。
推進魔法に転用すれば——理論上、出力は数倍になる」
また、サングラスをかけ直した。
「ウェイ!!正解者にはリスペクトを!!イエーーーイ!!」
教室中が拍手した。
たまには為になる授業をするじゃないか、ボーゲル先生。
体育祭のDJの面影しかないが——よい「ながら学習」になった。
「……ニヤニヤしてるっすよ」とザウル。
「あぁ、ボーゲル先生、最高だな。
一緒に旅してみたいよ。」
はぁ?と、キックルはトントの顔を見た。
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昼。
通信石が光った。
エーアイからだ。
「推進魔法の出力、まだ足りないのよ。
三国同盟の旗艦船にするなら最低でももうちょっと、パワーが必要なんだけど」
「午前の講義でヒントを拾った。過給増幅魔法を推進力に転用できる」
少し間があった。
「どういったシステムなの?
閃いたの?」
「授業が役に立ったんだよ!」
「……まあ、使えそうなら。試してみる」
通信が切れた。
俺は窓の外を見た。
この船は単なる移動手段じゃない。
セルマ、ラハティ、トゥリ——三国が初めて同じ船に乗る。
物流、外交、観光。
全部この船が繋ぐ。
三国同盟の礎は会議室じゃなく、甲板の上で生まれる。
早く完成させなければならない。
トントはなぜか、焦っていた。
何故、焦るのだろう、自問自答した。
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夕方。
騎士団の執務室に呼ばれた。
タイカが地図を広げて待っていた。
細身の体にサングラス。
モロッコの民族衣装、ジュラバ。
の様なフード付きの黒いローブ。
騎士団長とは思えない軽い立ち姿だ。
「いいですか~
トントさん。
これが、今週の各国動向です~
色々、起こってますよ~」
地図の上に、いくつかの印がついていた。
「ズマルアから商人が各国に散っている。
売ってないんすよね〜。置いていくんす。"元気になる薬"を」
俺の手が止まった。
置き薬だ!!
そんな事あるのか、この異世界で!??
江戸時代、富山の薬売りが日本全国を歩き回った。
先に薬を置いておく。
使った分だけ後で代金を回収する。
信用を先払いして、依存を後から刈り取る。
天才的なビジネスモデルだ。
そしてこれをやっているのが——
「声に出てますよ」とザウル。
「えっ……まさか。」
いつのまにか、独り言。
「マジっす」
「薬を受け取った村は"助かった"と言っている」とタイカが続けた。
「で、騎士団への協力要請が、減っている」
「依存させている。騎士団を必要としない村を作っている」
「そうじゃないんですよね〜」
「え?」
「もっと深い。国ごと、騎士団から切り離そうとしてる」
なんか、根本的だな。。
トントはゾクっとした。
「ラハティのレンから調査依頼が来てます~
村に商人が来て、色々あったらしいんですよね~
で。行けますよね〜??」
「……明日、課題の締切があります」
「そうなんですね〜」
まったく気にしていない顔だった。
「わかりました。行きます」
「課題どうすんすか」とザウル。
「ふう。。馬車の中で書く」
なんか、忙しいな。
やる事いっぱいあるぞ。
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また。通信石が光った。テルメだ。
「なあトント、オーユバーラにお客さん呼ぶ話どないなっとん?
ヴァンハさんも首長くして待っとるで」
「船ができたら動く」
「船っていつできんねん」
「……エーアイに聞いてくれ」
「エーアイは"トント次第"って言うとったで」
「あ〜」とザウル。
背後でリリの声がした。「ご飯できましたよ」
「ほな切るわ、飯や」
ぷつっ。
「……切られましたね」とザウル。
「くうう。」
トントは思った。
あーーー
あれもこれも、それも。
マルチタスクとか言うけど
こんなの無理があるな。
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深夜。
ラハティへ向かう馬車の中。
膝の上に論文、設計図、動向レポートが重なっている。
窓の外は暗い。揺れるたびにペンがずれる。
「……何がしたいんすか、結局」
ザウルが聞いた。珍しく、静かな声だった。
俺は少し考えた。
「整えない世界を、整えたい」
「……トントさん。」
「なんだ?」
「そんなトントさんが整っていないのでは?
?」
「うるさいなぁ、やるしか無いんだよ!
私しか、いないんだ!!」
ザウルが何かを言いたそうにしている。
究極のマッチポンプを狙ってるのか、この子。と。
「あぁ、もう、ラハティに到着??
全く時間が足りないよ!!!」
トントは、何かに焦っている。
だが、何に??
自分でもわからない感情の波を
抑えきれない。
遠くに、ラハティの灯りが見えた。
もう、着いたのか。。
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第1話 了
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最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
皆様にお願いがあります。
感想・いいね。なんでもいいので
反応。お願いいたします。
それが、夢想の最大のモチベーションになります!
次回もぜひお楽しみに。




