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四十七個の宝玉  作者: 黒灰 賢二郎
9/25

09

 剛志は、愕然として立ち尽くしてしまった。


 僕は、そんなものだろうと思った。


 将たちや、クラスメート達も剛志を残念そうに見守っていた。


 だが、そのままと言う訳にはいかない。

 使えなくなった宝玉をどうにかしなければ。


 「加賀さん、この宝玉はどうすればいい?」


 「その宝玉は、また室田様の体内に戻して頂けたらと思います。そのまま自分の体に戻るように念じてみて下さい」


 「ほら剛志、戻るように念じてみて」


 「だけど、なあ、ホントに無理なのか?」


 剛志が加賀さんに再度確認を取ろうとした。


 しかし、そこに声を荒げて参入してきた者がいた。


 局長と呼ばれていた男だ。


 「貴様ら、何故勝手に宝玉の力を使っている!」


 「はあ、何言ってんだ、おっさん!」


 剛志が、訳が分からないという感じで答えると、局長はさらに激昂して剛志に向かって叫んだ。


 「貴様ぁ、宝玉の力は国の管理下の元で使用しなければならんのだ、勝手に使うな!」


 この言葉に藤本君や古川君をはじめとしたクラスメート達がキレた。


 「なんだよそれ、ふざけんな!」


 「国の管理って・・・これって俺達の力だろ!」


 「だいたいよぉ、あんたらが勝手に呼び出しておいて何なんだよ、その言いぐさはよぉ!」


 「お前らの都合なんか知るか!今すぐ帰せ!」


 「そうだ、今すぐ元の世界へ帰せ!」


 「そうだそうだ、今すぐ帰せ!」


「「「「カエセ!・カエセ!・カエセ!・カエセ!・カエセ!・・・・」」」」


 ついには、帰せコールが始まってしまった。

 このままでは収拾がつかない。僕は声を張り上げて言った。


 「みんな待って!みんな、一旦落ち着こう」


 僕だけじゃなく、委員長の栗林さんも声を上げる。


 「みんなぁ、間壁君の言う通り、冷静になって!」


 僕と栗林さんが、声を上げた事でようやく帰せコールが落ち着く。


 だが、またちょっと煽れば再燃しかねない状況だ。

 だから少しでも早く事態の収拾に動く。


 「加賀さん、一旦、僕らだけで話し合いがしたいんだけど」


 「分かりました。局長、ここは言われた通りにするのが賢明だと思われます。会議室を一度出るのがよろしいかと」


 加賀さんは、すぐに理解して局長を促してくれた。


 「オ、オゥ、分かった」


 局長の方は帰せコールで唖然として止まっていたようで、加賀さんに言われて再起動したような感じだった。


 加賀さん達が会議室を出ようとしている横で、僕は剛志に声を掛ける。


 「剛志、宝玉を戻そう」


 「しかし、なあ」


 剛志はまだ諦めきれないという感じだ。

 だが、そこに内容がよくわからない言葉が聞こえてきた。


 「ねぇ、局長ぉ、使う予定の無い宝玉なら昨日お願いした事に使えないかしら」


 それは、あのケバい女の人の声だった。

 そして、それに局長が応えようとする。


 「フム、それはよいな、おい、そこの貴様、その宝玉を「局長!それは、局長判断で貴重な宝玉をそのような事に使ったと関係各部署に、報告してよろしいのですね」いや、それは困る、分かった、この件はまた後にしよう」


 そう言うと、そそくさと会議室を出ていった。


 今のやり取りは、どう考えてもあの村田という男が、宝玉をろくでも無いことに使おうとして加賀さんに、とめられたと見るべきだろう。


 尚更、あの村田と言う男には嫌悪感がわいた。


 それは僕だけではなく、クラスメートのみんなも同じだったみたいだ。


 そんなことより、いい加減剛志の宝玉を戻さねば。


 「剛志、宝玉を戻そう!」


 「う~ん、でもなあ」


 「後でも検証出来ると思うぞ」


 「そっか、そうだよな」


 ようやく納得して、宝玉を引っ込めた。

 宝玉を戻すのは、出す時の逆再生のような感じだった。


 剛志の方が片付いたので、クラスメートの方に向き直る。


 このクラスは、本当に仲がいい。

 僕は今までのクラスの中で、このクラスほど仲の良いクラスに出会ったことは無かった。


 今までは僕の体の事で、誹謗中傷されることがあったが、このクラスではない。


 たぶん剛志達、小学校からの仲間がクラスメートみんなに言い聞かせたのだろう。

 そしてクラスカーストみたいなものも無い。

 みんな好きなことをそれぞれ、言い合える仲だ。

 もし、クラスカーストみたいなのがあれば、僕は最底辺だろう。


 だから僕は、このクラスが大好きだった。


 クラスメート達の苦しんだり、悲しんだりする姿を見たくない。

 僕はクラスメート達が、この世界でうまく生きていけるように最大限、努力する事を心の中で誓った。


 クラスメート達に歩み寄りながら一人の女子生徒に声を掛ける。


 「北原さん、ちょっとスマホ、借りていいかな?」


 北原さんは、数少ないこの世界にスマホを持ってきた一人だ。

 僕の願いに、不思議そうな顔をしながらも心よく貸してくれた。


 そして、文字入力を利用して、ある文を打ち込む。


 『みんな、この部屋は盗聴、盗撮がされていると思う!』


 この文章をみんなに見せると、みんな納得した顔をする。

 そして他のスマホやケータイの所持者達もそれぞれ持ち出し、文字入力をしていく。


 「昨日のさ、晩御飯の味付けさぁ、濃くなかった?」


 意味の無い会話を始める。ダミーの会話だ。

 こう言うのは浩幸が得意だ、すぐに乗ってくる。


 「オゥ、あまり美味くなかったな!その辺も文句言おうぜ!」


 僕らに続き、クラスメート達もダミーの会話を始める。

 そして肝心のヤマトの国対策の会話は、スマホやケータイの文字入力で行われた。


 『あの村田と言う男は、信用出来ない』


 『宝玉の力をアイツのいいなりに使うのは反対だ』


 『でも、この世界で生きて行くには、彼らの協力が必要よ』


 『それに、一般の住民に罪はないんだ。彼らが妖魔の被害に遇うのはどうかと思う』


 『だけど、その為の軍人がいるんだろ』


 『銃とかが効かないんじゃ、軍なんか意味ないよ!』


 『だけどその為に、私達が危険な目に遇うのはどうかと思う』


 みんながそれぞれ意見を言いあった。

 しかし、このままではいつまでたっても話しが決まらない。

 だからまず、この世界で僕らがやらなければならない目標を決めた。


 一つ 全員無事に元の世界へ帰る

    事。


 二つ 僕達、転移者でなければ出

    来ない事は、なるべく協力

    するが、道義的に問題のあ

    る事は行わない。


 三つ この世界の人は、宝玉の力

    を宛にしすぎている。宝玉

    の力以外も、もっと研究し

    、利用する事をこの世界の

    人々に勧める。


 そして、この目標を達成するためにこの世界の人々に要求する事をまとめた。


 一つ この世界で使えるスマート

    ホンのような通信機器を全

    員分、準備してもらう。


 二つ 全世界の情報が取得出来る

    インターネット環境を準備

    してもらう。


 三つ 国連などの国際機関や、マ

    スコミなどに自分達の扱い

    を監視してもらう。


 他にも細かい事を上げれば切りがないが、取りあえずこれくらいでヤマトの国と交渉することにした。

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