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四十七個の宝玉  作者: 黒灰 賢二郎
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 加賀 アスミ side



 無事に防人様達を回収出来た私達は、毎回利用している研修施設へ向かいました。

 

 行く途中で局長に無事に回収出来たことと、このまま研修施設へ向かうことを報告しました。


 局長は何故、自分の所へ先に挨拶させないのか、と私に言ってきましたが、防人様の体調の方が心配です。

 慣れない環境でかなり疲れているようです。


 その事を局長に言い、明日改めて研修施設で顔を合わせることが決まりました。


 しかし、局長はいったい何様のつもりなのでしょうか?


 施設で一泊してもらい、次の日にまず現在と過去のこの国の状況や妖魔の情報、それから前回の防人様の情報をまとめた映像記録を、視聴してもらいました。


 この記録を編集したのは私ですが、じつはこれであることに気付いてくれれば思います。

 

 私は前回、防人様の世話係りをした時、最後の方は担当を外されました。

 そして、私の知らない内に最後の宝玉を使わされ、死んでいったのです。


 前々回の防人様の時もそうでした。




 初めて防人様の担当になった時、私は局長に呼び出されました。

 そしてそこにいたのは、軍の幹部達に局長、それに国防大臣までいて、私は何事かと思いました。


 彼らは私に、転移者が宝玉を全て使うと死んでしまう、と言う情報を防人様に決して漏らすな、と強要しました。


 私が理由を問うと、作戦上必要だからだ、とかしか言わず、また、もし漏らした場合、今までの父の功績が無かったことになるとか、私を含め、父の養子である義兄弟達がどうなるかわからない、だとか言って私を脅しました。


 私は兄弟達まで迷惑をかける訳にはいかず、彼らに屈するしかありません。


 しかも、その場で誓約書まで書かされたのです。


 結局、私から防人様に最後の情報を伝える事はできず、しかも毎回最後の方で担当を外されて、私はなにもする事が出来ませんでした。


 防人様が宝玉をこの世界の為に使ってくれるのは嬉しいのですが、最後の一つは自分の為に使って欲しい、とずっと思っていました。


 ですから今回は、この世界の紹介をする時に小細工をしました。


 それが功を奏しました。


 防人様達が不信感のある顔をしています。


 そして案の定、防人様達は局長とぶつかります。

 

 毎回、局長と防人様はよくぶつかりますが、今回は特に酷かったです。


 また、毎回局長と防人様との関係を潤滑にするために奔走してきましたが、今回はする気はありません。


 防人様達が局長に不信感を持てば、最後の宝玉を彼らの為に使う事はないでしょう。


 局長と防人様達がぶつかった後、局長を促して部屋を出ようとした時でした。


 「ねぇ、局長ぉ、使う予定の無い宝玉なら昨日お願いした事に使えないかしら」


 何を言っているのかこの(ひと)は、と呆れて西脇 梨香の方を見ます。

 彼女は自分が、宝玉の恩恵にあずかれる事を、当たり前だと言わんばかりの顔で局長にねだっています。


 局長好みの濃い化粧が、正直気持ち悪いです。


 局長が返事をします。


 「フム、それはよいな、おい、そこの貴様、その宝玉を「局長!それは、局長判断で貴重な宝玉をそのような事に使ったと関係各部署に、報告してよろしいのですね」いや、それは困る、分かった、この件はまた後にしよう」


 私が止めなければ、無駄に宝玉を使わせるところでした。


 このような事が私のいない間に行われてきたのか、と肩を落としそうになりますが、今はその時ではありません。


 西脇 梨香が私の方を睨んできますが、関係ありません。


 今のやり取りでまた局長は、信用が無くなったようです。

 そして隣室に移動した私は、資料などを整理しようとしたのですが、局長から言われます。


 「加賀君、隣の様子が見れるのだろう?すぐに映したまえ」


 「私が出来ますわ」


 西脇 梨香が横からリモコンを取り、モニターを起動させました。

 西脇 梨香も今回の防人様に思うところがあるようです。それは自分の欲望の為でしょうが!


 私もモニターの方を見ます。


 彼らは、一ヶ所に集まって何やら手元で手を動かした後、それを他の人に手渡しながら会話をしています。

 内容はどうでもいいことです。


 もしかして何か使って筆談をしている?もしそうなら期待が持てます。


 「何だこいつらは、私がわざわざ席を開けてやったというのにくだらん話しばかりしよって」


 局長は彼らのやっている事に気付いていません。


 私は嬉しくなりました。

 

 今回の防人様は、今までの防人様と違います。かなり頭の切れる人物がいるようです。

 多分あの宝玉の力を暴走しかけた人でしょう、名前は間壁 草太様だったはず。


 彼は随分と他の防人様達に信頼されているようでした。

 彼のような人物がいれば、この国と防人様との関係も改善されるかもしれません。


 しかし、室田様が行った、宝玉を使って間壁様の病気を治そうとした事が気にかかります。

 一度、じっくり話しをしてみたいです。


 しばらくして、彼らの話し合いも終わりました。


 「フン、こやつら結局たいした事は話していないではないか、所詮、異世界人だという事だ」


 「まったくですわ、やっぱり十五歳なんてこの程度の知能しか無いんでしょうね」


 二人は、彼らが何かをやってることにまったく気づかなかった様子です。


 少しすると、連絡用のベルが押され、私達は会議室に戻りました。


 防人様達は、映像記録を見ていた時と同じように規則正しく並んで椅子に座っていました。


 私達が、前面に並んで立つと栗林様と間壁様が立ち上がり、声を発しました。


 「私達、いろいろ話し合った結果、この世界で私達がやらなければならない事、やれる事、出来ない事を考えて目標を立てました」


 栗林様がまず、自分達が何をしたいか話し始めました。


 「目標を言うので、僕が前に行って書きますね」


 今度は、間壁様が前に出てきてホワイトボードの前に立ちます。

 私達から見て斜め横です。


 栗林様が小型の板状の物を見ながら、彼らが掲げた目標を発表して行きます。


 あれはスマートフォンでは?


 そんなことを考えていると、次々と目標が発表されます。

 そして間壁様が言われた事をそのまま書きます。


 その内容は、私から見ても素晴らしい内容でした。

 特に三つ目は、私自身がこの世界の住人に訴えたい言葉でした。


 さらに話しは続きます。


 「私達は、この目標を達成する為にあなた達に次の事を要求します」


 その内容を聞いて、私はこの目標を達成する為には、当然の要求だと思いました。


 しかし・・・・・・


 「ふざけるな!なんだこれは、こんな要求が通ると思っているのか!」


 局長が激昂して彼らの要求を退けようとします。

 局長にとって防人様は、情報を与えず、自分の都合よく動くコマでないといけません。

 彼らの要求はそれを真っ向から否定する内容でした。


 「貴様ら、いつこんなことを決めた?さっきはこんなこと、話し合って無かったはずだ」


 局長は、彼らが筆談していたことを気付いていません。さらに自分から盗聴していたことをばらしてしまいました。


 ここで間壁様が口を開きます。


 「なんで、あんたが僕らの話し合いの内容を知っているのさ、もしかして盗聴してたぁ?」


 局長は、話し合いの様子を盗み聞きしていたことを責められ、冷静さを欠き、だだの脅し文句を口にします。


 「貴様ら、こんなことを私が通すと思っているのか!」


 それに対し、間壁様が


 「言っとくけど、この要求はあなたにしたものじゃ無いよ!これはこの国に要求してるんだ!もし、この要求が通らなかったら僕達は一切、あなた達の為に宝玉は使わないから、これは三十人全員の総意だから、そのつもりで!」


 そしてさらに、私に向かって話しかけてきました。


 「加賀さん、今後の予定を教えてくれた時、国民へのお披露目パレードやこの国の首相と会見があったんだよね?その時に国民と首相にそのまま要求するから」


 局長は絶句して唖然としています。


 私は、感心してしまいました。


 情報戦を見事に制した上に、私から与えられた情報を上手く利用して、逆襲までしています。

 これでは、局長など彼らに太刀打ち出来ません。


 ですが局長もなんとか反撃しようと言葉を並べます。


 「例え、国民や首相の前でそんな要求なんかしても通らないぞ」


 「それならそれで、この国から出て行くだけです」


 局長の言葉にすぐさま栗林様が言い返しました。


 「そんな事、許されないぞ!」


 「許すも許さないも無いでしょう。私達はこの国の人間ではないのですから、あなた達が私達を拉致したから起こっている事だと理解していますか?」


 拉致とは犯罪です。それをあなたがやったからと、つまり局長、あなたは犯罪者ですよ、と栗林様は突き付けたのです。


 栗林様以下、他の防人様達の眼差しは”絶対にお前の言いなりにはならない”と言う迫力で局長を睨み付けています。


 気圧された局長はそれ以上何も言えませんでした。


 「あと加賀さん、少し確認したい事があるんだけど」


 急に間壁様が私に話し掛けてきました。


 「はい、なんでしょう?」


 「さっき、入力ミスって言ってたよね、それどういう意味?もしかして僕達って最初からとんでもなく危険な目にあってたってこと?」


 「それは」とつい西脇 梨香の方をチラリと見てしまいました。

 しかも私だけでなく、局長までもが見ています。


 誰がミスしたかバレバレでした。


 「確かにそう言うミスがありました。申し訳ありません」


 と、私は素直に謝るしかありませんでした。


 すると栗林様が


 「そう言う事があったのなら、なおさらこの要求を通してもらわないと困るわね。元の世界に帰るのをあなた達まかせには出来ないって事じゃない」


 私は全くの正論だと思いました。


 「そんなぁ、私、言われ通りやっただけで、局長、何とか言って下さい!」


 西脇 梨香は、反論する事も出来ず、局長にすがりつきますが、局長は何も言えません。


 そして数人の女性の防人様達が騒ぎ始めました。


 「え~、あのケバいおばさんに私達、危ない目に会わされたってわけ?最悪」


 「あの化粧ってありえないよねぇ」


 「若作りしすぎ、キショイ」


 西脇 梨香は、目を丸くして何やらぶつぶつと呟いています。


 「お、おばさん?ケバいって、若作り?」


 西脇 梨香を無視して私は、局長に話し掛けました。


 「局長、私は防人様の要求は妥当だと思います。局長がどう判断するかわかりませんが、防人様は要求が通らない限り、宝玉は使わないとおっしゃっています。これ以上は局長の権限を超えているのでは?」


 局長は私の言葉で我を取り戻しました。


 「加賀、貴様、要求が妥当だと、どっちの味方だぁ!」


 局長は私に怒りをぶつけてきました。


 「私は、どちらの敵でも味方でもありません。私の職務は防人様の手助けです。私は職務に忠実なだけです」


 と答えると局長は、怒りをあらわに吠えようとします。


 「貴様ぁ~、貴様のようなやつは、「ちょっと待ったぁー、悪いけどもう一つ要求を追加させて」な、何だと?」


 いきなり間壁様が私と局長の会話に割り込んできました。


 「僕達の担当は加賀さんなんでしょ?加賀さんは僕が宝玉を暴走させそうになった時、自分の身もかえりみずに僕に語りかけてくれた、この世界で唯一、信頼出来る人だ。彼女がもし担当じゃなくなったら、僕らの要求は通らなかったとみなすから!」


 「ぐっ、何だその要求は!」


 間壁様の要求に局長は、呆れた声を出しますがそれ以上何も言えません。

 そしてそのまま部屋を出ようとします。


 「局長、私はこのまま防人様の面倒を見ますので」


 と私が声をかけると


 「勝手にしろ」


 と言って、西脇 梨香を連れて部屋を出て行きました。


 私は間壁様の方に向き直ります。


 「間壁様、ありがとうございます」


 私は、自分が認められた事がたまらなく嬉しかったのです。

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