私の困惑。3
「美島さん、入ります」
衣装に着替え、ヘアメイクも済まし。
出来上がった自分自身に目を疑いながらも時間がないから早く早く、と促されるようにスタジオに戻された。
プロのヘアメイクさんの腕前って、凄いのね。
鏡の中の自分を見て、思わずうわ別人。と思ったのは致し方ない。
下着を変えた後もアレコレやられ、髪の毛はくるっくるに巻かれて。
出来上がった自分はとりあえず、高校生には見えないだろう。
「…碧依?」
「慎ちゃん、プロの人の腕前って凄いね…!」
用意されていた靴は、私の足には大きすぎて(22.5cmの私に24cmなんてぶかぶかすぎる)大人っぽい衣装とヘアメイクだけど足元だけローファーで。
なんだか、そのミスマッチさが今の私にぴったりな気がしてる。
「まぁ、プロの方々だからね。―碧依、綺麗だよ。とっても」
ほら、と手を取られて、スムーズにエスコートされてチェアにすとんと座らされる。
え、と思って見上げると、慎ちゃんは私の足元で座って、ローファーを脱がしてて。
「し、慎ちゃん?!」
「靴サイズ合わなかったから、裸足で撮影に変わったって聞いてるから。セットに行くまで裸足で歩くと冷たいから」
―そう。靴が大きすぎて見た目にも綺麗じゃないので急遽ちょっとした演出変更になってしまったようで。
元々今回の演出では女優さんはベッドで寝ていて、王子様=慎ちゃんのキスで起こされた後王子様に靴を履かせてもらってダンスを踊る。というものだったらしいんだけど。
ダンスなんて未経験―フォークダンスしかしたことないし、そもそも運動神経0の運動音痴が優雅にダンスなんか無理な芸当だし。ということで、抱き締められたりキスされたり、とかまぁ甘々イチャイチャ(By坂田さん)に変わったらしい・・・。うん。
「はい」
靴を脱がされた後、脇に両手を入れられて持ち上げられる。
―慎ちゃんにだっこされたの、何年振りだろう。
「…重くない?」
「重いわけないでしょ。碧依はもっと太ってお肉つけなさい」
それに彬兄ほどじゃなくても俺だって鍛えてるよ。なんて言われると何も言えなくて。
でも、いくら生まれたころから何もかも―それこそおねしょしたときや、生理始まった時ですら知られてる幼馴染だとしてもそれとこれとは話が別で。
…あ。思い出したけど私お兄よりホント慎ちゃんにばっかり遊んでもらってたし構ってもらってたや。
「それに、きっと大学に入ったらもっと女性らしい体つきになるから。今はまだちょっと、成長過程だな」
「…慎ちゃんのえっち」
慎ちゃんの視線が胸元に注がれてるのに、ちょびっと膨れる。私が今一番気にしてることなんですけどね!
「これからラブシーンなんだしね。…碧依、怖がらないでね」
「頑張る」
生まれてこの方一度も彼氏のできたことのない私に、ラブシーンなんて正直ハードルが高いけれど。
女は度胸だ、やってやろうじゃないの!と心の中でこぶしを握り締めて、小さいころから見慣れている慎ちゃんの顔を見上げてベッドに横たわった。




