第9話
「アン様ー!」
「あら、フィリップ、リリィ、アンソン。そんなに急いでどうしたの?」
村の子供達がアンのところに走ってきた。
「見てみて!今日こんな大きな芋とれたんだぜ!」
「アン様に見て欲しくて!」
「走ってきた!!」
「まあ、すごいわね!」
あの後の事。アンは最後に向かった村の村人達を領地に連れてきてめんどうを見ることにした。村人達は住み慣れた土地を手放す事を最初は拒んだが、アンの説得で手放すことを選んだ。
「こうして、安心して暮らせるのはアン様のおかげです。」
村人の老婆がそういいながら微笑む。
「いいえ、私のおかげではないわ。貴方達が働きものだから今の暮らしがあるのです。」
「お嬢様ー!」
「?爺や?どうしたの?」
「第1王子がお見えです。」
「…………また?」
アンは呆れた顔で屋敷へと戻る。そこに待っていたのは自分を断罪した王子ことドランバルドがそこにいた。
「何の御用でしょう?」
「そんなの聞かずとも分かっているだろう!!」
「さぁ?」
アンは白々しくとぼける。
「さぁ?じゃない!俺と婚約しろ!」
「はい?」
「無実の罪を公爵家令嬢に着せた挙句、地位を剥奪、財産没収、そして、国王を殺害される要因をつくったとあっては俺の面子はぶち壊しだ!!」
「それが何か?」
「何か?じゃない!!お前と再び婚約しなければ俺の顔が立たない!!頼む!!婚約してくれ!!」
「知りません。そんなの。」
「なんでもくれてやる!何が望みだ?!」
「いい加減にしてください!私はもう貴方と婚約はしないと決めています!!」
「アン、そこをなんとか……」
「帰ってください!!」
王子はしばらく粘ったが帰っていった。
「全く、都合のいい方ですこと……ねえ、ノア。」
「全くです。ですが、婚約しなくてよいのですか?」
「婚約なんてもうしないわ。」
「私はアン様が幸せになれるなら婚約を推奨します。」
「!」
「?」
「もうっ!知らない!」
「?」
なんて話しをしながらも、アンはノアとの日々を楽しんでいた。アンが庭でアフタヌーンティーを嗜んでいると、子供達が集まってきた。
「アン様ー!」
「フィリップ、リリィ、アンソン、どうしたの?」
「それがさ、変な石見つけたんだ。」
「とっても気味が悪いの。」
「真っ黒なんだぜ?」
「?!」
それはエミリが使っていた石によく似たものだった。
「これは、暗黒魔法の、媒体!」
「ええ?!」
「きゃー!」
「うわぁ!」
3人の子供は慌てて石から距離を置いた。
「大丈夫よ。でも、気をつけた方がいいわね。何か起こるかもしれないわ。」
それから夕方になると突然嵐が起こった。
「アン様!危ないですよ!屋敷に戻ってください!!」
「ダメよ!皆で育てた芋が!」
「でも!」
使用人達はアンを止めるがアンはそのまま芋を魔法で守る。その時スマホが震えた。
「アン様、魔法で天気を晴れに変えてください!」
「そんな大掛かりな魔法、私には……」
ノアが人型になる。
「私もお手伝いします!」
2人は手を取り合って力をこめる。
「晴れて!!」
その瞬間辺りは光に包まれた。目を開けると嵐は嘘のように止んでいた。
「アン様……」
「ノア?!」
ノアはスマホ型に戻ると付かなくなってしまった。
「ノア?!嫌っ!!ノアぁぁああああっ?!」
屋敷へ戻る。
「どうして、つかないの?!」
アンは半ばパニックになっていた。
「どうしよう?!水が入ったのかしら?!どうすれば……」
改めてスマホを見ると充電のマークが付いていた。
「全く!心配したんだから!」
「すみません。充電がなくなってしまって……」
「もう!もう会えないかと思った……」
「アン様、大丈夫ですよ。私がいなくても今のアン様ならなんでも乗り越えられますよ。」
「!ばか!」
アンは怒ってスマホを置いて部屋を出ていった。
嵐は暗黒魔法によるものだったらしい。もしかするとエミリがいたのかもしれない。そう思うとアンは少し怖くなった。部屋に戻る。
「ノア?」
そこにはノアの姿はなかった。




