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閑話休題 アイツは俺が育てた

「5分間一本勝負! はじめ!」


カグヤの声で、考え事をしていたホムラはハッと現実に引き戻された。

「何を考えていましたの?」

カグヤは椅子に腰掛けながら尋ねる。

「あぁ、俺にも武器を投げる技はないかと考えていた」

「だと思いましたわ。あなたが静かな時は、だいたい戦闘関連なんですもの」

カグヤはため息混じりに言った。

「あー、やだやだ」

とまで付け加える。

「良いだろう? 武器のことを考えるのは、俺のライフワークみたいなもんなんだから」

カグヤは呆れたような顔をした。

(そんなにか?)

「そういえば、フウキさんの武器を見繕ったのもあなたでしたわね」


「ん? ……あぁ、そうだが?」


「私に聞かずに、なんでホムラに……」


カグヤはぶつぶつと文句を垂れる。


「男同士の方が話しやすいこともあるさ。それに、色々と試行錯誤はしていたみたいだしな」


そう言うと、カグヤはまだ何やら不満そうに口を尖らせていた。

だが俺は、フウキから武器の相談を受けた時のことを思い出していた。


それは、アイツが突然カグヤの居城に現れて二、三日ほど経った頃だった。

朝食の席で、フウキはおずおずと口を開いた。


『ねぇ。君……えっと、ホムラくん? ちょっと相談があるんだけど良いかな?』


『良いけどさ。俺のことは呼び捨てで良いぞ』


『じゃあ、ホムラ。エルさんに聞いたんだけど、君って武器が好きなんだよね?』


『ん? なんか語弊があるが、まぁ良いか』


俺は肩をすくめた。


『俺が住んでいた所には鍛冶師がいてな。色んな種類の武器があったんだ。だから、そういうのを見るのは好きだったな』

『じゃあさ、その目を見込んで頼んでも良いかな』


フウキは少し身を乗り出した。


『僕の武器を見繕って欲しいんだ』


『は? お前、武器を持たずにここへ来たのか?』


『いや、武器は無いけど、術は使えたからそれで何とか……』


痛いところを突かれたのか、フウキの目が泳ぐ。


『術が使えるからって、お前なぁ……』


俺は呆れたように額を押さえた。


『それに、武器を持つってことは、それなりの覚悟がいるんだぞ。分かってるのか?』


『それは分かってるんだけど……』


フウキは少し言葉を探すように視線を落とした。


『一応、色んな武器を持ったりはしたんだ。でも、どれもしっくり来なくてさ』


『ふむ』


『それに、僕自身も術だけじゃなくて、きちんと誰かを守れるようになりたいんだ』


フウキは真っ直ぐな目で俺を見た。

その瞳に嘘はない。

『それでさ。君なら、そういう武器にも詳しそうな気がして』


『あぁ、まぁな。むしろ好きな部類だから、答えられる範囲で探してみるけど……』


そう答えると、フウキの目がぱっと輝いた。


『頼む! 僕、武器のことは本当にさっぱりなんだ!』


そう言って、この通りと頭を下げる。


『分かった! 分かったから頭を上げてくれ!』


『探してくれるのか?』


顔を上げたフウキは期待に満ちた目でこちらを見た。


『一応、俺の見立てで良いならな』


『ありがとう〜! 君、良いやつだな〜!』


言うなり俺の手を掴み、ぶんぶんと上下に振る。


『お、おい!』


その勢いに思わず声が漏れた。

『投げても使える』


『近接もできる』


『術との併用もしやすい』


それがフウキの要望だった。


『なかなか難しいこと言うな、お前……』


俺は頭を掻いた。

一つ一つなら珍しくもない。

だが、その三つを同時に満たそうとすると話は別だ。

それでも心当たりがないわけではない。

俺は武器庫から四、五種類ほど武器を持ち出し、フウキの前へ並べた。


『まずはこれだ』


一本ずつ手に取り、特徴や扱い方を説明していく。

フウキはフウキで真面目だった。

武器を持ち上げて重さを確かめたり、軽く構えてみたり。

時には腕を組みながら、


『うーん……』

と唸っている。

『あぁ、それか』


俺は円月輪を見て頷いた。


『投げられるし、近接もできる。術を使う邪魔にもなりにくい。お前の要望を全部満たしてる武器だな』


『へぇ……』


フウキは受け取って何度か構えた。

だが、しばらくすると首を傾げる。


『ごめん。すごく良いんだけど、違う気がして……』


『マジか……』


思わずそう漏れた。

俺から見ればかなりの適任だったからだ。

『ありがとう! 助かったよ!』


フウキは飛び上がらんばかりに喜んだ。

武器のことで、あそこまで喜ばれたのは後にも先にもあれが最初で最後だったかもしれない。

その後、フウキは俺と何度も練習や模擬戦を重ねた。

棒術を自分のものにし、この城を旅立つ頃には、見違えるほど様になっていた。

――そして。


「まさか、兄弟で同じ台詞を言うとはなぁ」


思わず笑みが漏れる。

すると、


「ホムラ……」


カグヤがじっとこちらを見ていた。


「思い出し笑いをする人は、スケベなんですわよ」


「なんだその理屈は!?」


即座に反論したが、

カグヤは露骨に嫌そうな顔をしている。

失敬な。

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