1章-2
「やっぱりお姉ちゃんの作るホットケーキはおいしいね。」
口いっぱいに頬張りながら、フウタは笑う。
「お褒めの言葉どうもありがとう。もう、何年焼いてると思ってるのよ。」
「でもちょっと焦げてる…。」
「うるっさい。牛乳飲む?」
「うん。飲む。」
フェルトがコップを用意した時だった、突然フェルトの身体がビクッと大きく跳ねたのだ。フェルトは一度、フウタを見る。
「……私、ちょっと外出てるね。」
少しだけ焦ったようにして、
「あ、そうだ。悪いんだけど、洗い物お願いしても良い?」
「え?うん。…いいよ。拭いて棚に戻しておくよ。」
「よろしく〜。」
手をひらひらさせながら玄関を出ていく。
空を見上げ、結界に異常が無いか確認をする。
大きな異常は…無い。
そう判断しても良いはずだった。
でも、何かはあった。
顎に手を当て、考えるそぶりをした時、
「すみません。ここの家の方ですか?お尋ねしたいことがあるのですが。」
フェルトはゆっくりと振り返る。
まず、その顔を見る。
それから視線をわずかに落とし、装備を確認する。
人数は二人。
…軽装。だが隙はない。
そして、魔力。
澄んでいる。
その奥に、確かな強さがある。
だが、警戒は解かない。
「えぇ、そうですけど。」
その視線を真正面から受け止め、彼女は小さく微笑んだ。
「驚かせてしまったなら、すみません。」
「単刀直入にお聞きします。」
女性は真っ直ぐフェルトを見る。
「フウタという少年は、こちらにいますか?」
その名が出た瞬間、フェルトの内側で何かが確かに鳴った。
だが、笑みは崩れない。
「さぁ、知らないですね。どなたから、その名を?」
その横で、青年が口を開いた。
「ここに来る前に、何人かの住人の方に伺いました。」
「あなたが、その少年の世話をしていると聞きまして。」
そういうことか。
「分かりました。すみませんが、最後に一つ質問をさせてください。」
「フウタの好きなものは何ですか?」
フェルトの目元が、わずかに緩む。
「ホットケーキ、ですか?」
女性はわずかに首を傾げる。
その横で、青年が小さく息を吐いた。
「いや、待てよ。」
「確か……もう一つ言っていたな。」
少し考えてから、
「……グラタン、じゃなかったか?」
その言葉に、フェルトの目元が、静かにほどけた。
「正解です。どうぞ。」
フェルトは玄関を開け、静かに道を開けた。




