1章-1
目が覚めると、いつもの天井があった。
フウタはゆっくり伸びをする。
「…まだ九時かぁ。」
いつもより少し早く起きたようだ。
その時、玄関の方から物音がした。
「おっはよう。早いじゃない。起こしてあげようと思ったのに。」
聞き慣れた声が、勝手に部屋へ入ってくる。
「…フェルトお姉ちゃん。ノックくらいしてよ。」
「したわよ。返事無かったんだもん。だから入ったの。」
「理屈が無茶苦茶だよ。」
「で?朝ごはんは?食べたの?」
フウタは答えない。
「まだなんでしょ。うち来る?パンあるけど。
それともホットケーキ焼いたげようか?」
「…じゃあ、ホットケーキで。」
「はいはい。」
フウタの返事で、フェルトは小さく笑った。
「あ、そうだ。
一昨日頼んだ仕事ってどうなった?」
「それなら机の上に置いてあるよ。」
「仕事早くて助かるわ〜。」
フェルトは机の上に置いてある箱を取り、
「帰りがてらアイツにも挨拶してくわね。」
「うん。お兄ちゃん喜ぶよ。」
そう言って、フェルトは手を振りながら出ていった。
フウタの家を出て、フェルトは村外れの墓地へ向かう。
村外れに近づくほど空気が酷く静かになる。
「久しぶり。」
墓石の前で立ち止まる。
「あんたの弟、しっかりしてるわよ。
仕事も早いし。ちゃんと生活出来てるし。」
少し微笑む。
「私が後見人て、要らないんじゃない?」
そう言いながら、指先で冷たい石を撫でる。
しかし、墓石には何も書かれていない。
「…ここで話しても意味ないか…。」
そう言って、フェルトは背を向けた。




