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あの大空の下で  作者: TKGーカシイナル
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Ⅸ章 決戦前夜

「……」

僕は家の自室で久々に好物のピザポテトを食べながら熟考する。

もうDreamerの正体は発覚した。ただ、誰にも言うつもりはない。

言いたくないのだ。僕は正体についてまだ確証がついていないのもあるし、それに

信じたくない。

「はあ」

最近ため息が増えた。忙しいのもあるが、やはり問題が多いからだろう。

いうて二つなのだが、そのひとつひとつが重い。

ひとつはDreamerのこと

そして……深雪のこと。

深雪についてはさっさと解決したいのだが、慎重に行かないと割と深雪が壊れるかもしれない。

しかし時間をかけすぎるとDreamerが総力戦仕掛けに来るかもしれない。普通に怖い。もしもDreamerが今総力戦を仕掛けてきたら、多分勝てない。……そして、その理由は、

いや、言わないでおこう。言わなくていいことだ。

「疾風~」

部屋に姉さんが入ってくる。部屋の時計を見るともう正午に近かった。

今日はNumberは休みである


「うお、もう昼か。ご飯作るね」

と、僕は部屋を離れようと椅子を立つ。

「……時間を忘れてピザポテトを食べてんのに、よう言えるわ」

振り返ると、苦笑いしている姉さんが居た。姉さんの顔を見て僕も苦笑した。

…まあ、姉さんの言うとおりなのだが。僕は時間なんて気にしていなかった。おかげで昼にスナック菓子を食べるというアホみたいなことをしていたよ。

「……姉さんのくらい作るよ。」

「優しいわね。じゃ、自室で待ってるわね」

「……ご飯できても呼ばないから、30分後くらいに来てね。研究始めて終わらないとかやめてね」

「はいはい」

姉さんは苦笑いを続けながら別棟にある自室というか研究室に戻っていった。

そんな姉さんの背を見たあと僕は下のキッチンへ向かった。

キッチンにつき、冷蔵庫を覗いた。

僕はハンバーグでも作ろうかなと思った。……が、肉がない。正確にはひき肉がない。そうだった姉さんの好きな肉はもも肉だからな……僕の好きな鶏胸肉と豚もも肉しか冷蔵庫に入ってないのを見て僕は苦笑いした。今日苦笑いが多いなあ、と思いつつもじゃあ豚モモの焼肉でも焼くか、と思い立った。

……流石に野菜くらい添えよう、と思ったが野菜庫から何も出てこなかった。もうなんかめんどくさくなったので昼食はハンバーグにすることにした。

……冷凍の。

姉さんに申し訳なく思いつつも、湯煎用のお湯を鍋で沸かしながら冷凍サラダを常温で解凍するのだった

……さて、後で深雪君のことをささっと解決しよう。

……とりあえず『恭子』を封印、もしくは深雪自身がコントロールできるようにする。

…あとは、深雪を捕まえたDreamerの男をサツg……捕獲しよう。

そんなことを考えつつ、沸騰した湯に冷凍ハンバーグをぶちこんだ




翌日。僕はバイクを突っ走らせていた。Number本部に行くためだ。

確か、今日は深雪は本部に来る日だったはず。だからこそ、今日がチャンスだと思っている。一回引き伸ばすと、引き伸ばしが続くかもしれない。まあ、深雪の空いている時間の長さにもよるが。

本部に着くと……

『出せやゴルアアアアアアアア!!!!!!!!』

という怒鳴り声。…なんやアイツ。うっさ。

僕はエントランスに入る

「うっさいんじゃボケエエエエエエエエエエエエエエ!!!!」

俺はNumber.2モードになっていた。…この叫んでいたおっさんは小汚かった。禿げて、ボロボロの服着て、フケを撒き散らしながらとんでもない一言を言い放った


「は?何だてめえ。早く天ノ川恭子を出しやがれ!ここに居ることは知ってんだよ!」


「……」

そのセリフを聞いた瞬間、僕は口を開けた。

「疾風さん、どうしまし―――ひっ」

受付の女の子が心配そうに見てきたがすぐ怯えて引っ込んだ。なにに怯えたんだろうか

僕は頭の中が真っ白になった。何も考えられない、というのはこういうことか。

「……」

「ああ?!なんとか言えや!」

怒鳴るおっさん。……どうしよ。とりあえず思考を回そう。居ないって嘘つくか。どうやって嘘つこうかな。…そうだ。

「……はあ。すみません。深―――恭子は今居ません。シンガポールにいます。あの国を南北に縦断する地下鉄を作っています。......本当は、あの頃が恋しいと言ってましたけど、でも今はもう少しだけ、知らないふりをするらしいです。」

僕は心のなかでドヤ顔をしながら涙声で言い放った。ネットサーチをしたときに知った構文……ッ!私ったら素晴らしい

「はあ?シンガポールに居るわけねえだろ!本部に居るのは知ってんだよ!はよ出せや!」

「何…言い訳構文がバレた……だと……?」

思わず心の声が漏れた。まずい。まさかこの言い訳構文を知っているとは…

気にせずに暴れるおっさん。

「うるっせえな。とりあえず黙れ」

うるさいので重低音で言い放った。

「ああ?何様だてめえ!いいか、俺様は―――」

今度は自分語りかいな。うんざり。いい加減イライラしてきた。鬱陶しい限りである。

その俺をイライラさせるおっさんが更に鬱陶しい素晴らしさを滲み出している自己紹介を始めようとした。

その時だった。

なにかの感覚が背中に走った。気配を感じる。近くに誰か居る感覚。

ストーカーに見られてる感覚に近いのだろう。

それがあった。そして、その気配は女だ。

そして、前に一度感じた気配だった。一度だけ、一度だけ感じた気配。

憎しみに満ちた気配。怒りと憎しみ、苦しみ、などなど。負の感情のみ感じられる気配。ここまで殺意を孕んだ気配を感じたのはあれっきりだ。そしてその気配をもう一度感じたのだ。

……やばい。僕は直感でそう感じた。逃げたい。ただし、僕が逃げたらNumberの全員死亡するかもしれない。そのレベルの人間なのだ、こいつは。多分。

もしこの気配の正体があの子なら―――いや。僕は確信した。この気配の正体は―――


「……ようやく会ったな…………………………



……………東ッ…………………………」


予想通りの低い女の声が響いた。僕は思わずこう呟いた。




「……天ノ川………」





次の瞬間。鮮血が飛び散った。東と呼ばれた男を見ると、急所は外れたようだが、割と致命傷に近い傷を負っていた。一瞬だった。周りが悲鳴をあげる。

しかし、もっと驚くところがある。

「……素手で、こんな傷を……?あ、違うか」

深雪―――恭子の手には血が大量に付着していた。

……鮮やかな、まるで先程ついたばっかのような。

鼻息荒く呼吸する『恭子』。よく見ると、手にはナイフが握られていた。なるほど。だから一瞬であんな傷をつけられたのか。

「お前は……お前、だけは───────ッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

倒れるおっさん。大声を上げながら馬乗りになる恭子。おっさんは腹部に傷を負っていた。だから……

「あああああああああああああああああああ?!?!?!?!?!?!?!」

痛みで叫ぶのは当然のことだ。馬乗りのままナイフを振り上げる。

僕は、それを見てポケットに手を突っ込み────

「恭子!」

バン!

銃声が響き渡る。悲鳴がパタリとなくなった。

見ると、恭子のナイフが砕けていた。

恭子はぼーっとその刃が砕け、柄のみが残ったナイフを見つめる。

見てみると、馬乗りにされているおっさんは失神していた。

「誰か救急室に運んどいてね」

僕は愛銃、駿河をポケットにしまう。

恭子は不意ににぃっと笑った。

僕は拳を構える。

恭子が立ち上がる。周りの受付嬢は震え上がっていた。

「…来いよ。『東恭子』」

僕がそう煽ると、恭子は

「……あはは、あっはははははは……



あははははははあああはははははあはははははははははははははははあはははは!!!!!!!!!!!!」




奇声を上げながら突っ込んできた。相変わらず足が早い。

まずは正拳突きが飛んでくる。とっさに横に回避する。

次に回し蹴り。下段に飛んできた。

それをジャンプして避け、ついでに僕も上段に回し蹴りを飛ばす。

恭子はそれをしゃがんで避ける。

着地する寸前にかかと落としを構える。着地と同時に足を振り抜いた。

恭子はそれを後転で避ける。若干かかとがかすった。

いつの間におっさんは運ばれていた。受付嬢も避難していた。

……逃げ足だけは早えな

後転を終え恭子は立ち上がり、僕を見据える。

その目は、憎悪そのものを表すかのように黒ずんでいた。

恭子はポケットに手を入れる。

ポケットから手が出る。

その手には。黒い鉄の塊が握られていた。

……本気モード、ってことか。

拳銃を壊すわけにもいかない。かといって恭子本体に傷をつけるわけにもいかない。

「……きちいな」

僕も駿河を取り出す。

恭子が引き金に指をかける。僕はそのタイミングで横に華麗にステップを踏む。

刹那銃声が聞こえる。うん。避けておいて正解だった。

足を踏み込む。反動をつけて全力で地を蹴る。恭子は察した様子で右に移動した。

僕はそれを見逃さない。もともと恭子が立っていた場所で体をねじり、無理やり右を向く。同時に足を後ろにのばし、再び地を蹴る。

恭子は慌てて拳銃を構え、撃鉄を起こす。

引き金に指をかけるときには、僕は恭子の懐に入り込んでいた。

僕は銃身を振り抜く。狙いは脇腹。深雪は引き金を引く。

鈍い殴打の音と、甲高い銃声が同時に響いた。


静寂が流れる。

先に倒れたのは僕だった。ドク、ドクという音が足から聞こえ、床を真紅に染めた。

その後に恭子が拳銃を落とし、倒れる。相当痛かったろう。鉄の塊で殴られたんだから、内臓は無事にしても骨が折れているかもしれない。

「…………」

無言で僕に覆いかぶさるように倒れる。びっくりするほど軽い。

……やばいな。これ

無線を胸ポケットから取り出す。番号を入力する。繋ぐ先は―――

『こちらNumber.0。どうした』

姉さんに繋いだ。

「あーこちらNumber.2。足撃たれて失血死しそうなんで本部の受付来てください」

『はあ?!えちょ』

無線を切る。意識が朦朧としてきたので体を床に委ねる。手を前に出し、無線が潰れないようにする。

「…先輩……あり、がとう。」

意識が飛ぶ寸前、聞き慣れた声が耳に届いた。

「…感謝するなら、僕が治るまで代理、頑張れよ」

それだけ言うと僕の視界は暗転した






















「変わんないな、ここも」

女は客間の僕の向かいのソファに座り、そう呟いた。

「久しぶりに会って最初に言う言葉がそれかよ……」

僕、小林圭はそう呟いた

「はは、冗談だ、冗談。…懐かしいな。お前とこうして話すのも。」

「……そうだな」

「疾風とはどうだ?最近お前に会いに来ていたか?」

「……おま、息子だろ。知らないのかよ」

「はは、あいつは一人暮らししてるんだぞ、忘れたか?」

「……だとしても、だ。たまに連絡取るくらいするだろ…」

「いやあ……携帯を持ってないもんでね。」

「……機械音痴も変わってねえな」

「まぁな。」

優雅にソファの前のテーブルに置いてある紅茶を飲む女。美しい姿と態度からは感じられないが、気品さを感じるその所作に少しドキッとする。

この女は、疾風の母親、神無月楓だ。

疾風の前ではこんな態度しないんだがな。昔はこんなもんだった。

多分、今は丸くなった方なんだろう。

「……なあ、お前、そろそろ前に戻るきはないか?」

楓は急にそう言ってきた。

「……なんでさ」

「疾風と理奈はもう立派に育ってくれた。お前のようにな。と、言うことで、私も子育てから離れようと思っていてな。…10年ちょっと、毎日パートに出かけ、金を稼ぎ、二人を養うのはなかなかにキツかったぞ?」

「……お疲れ。僕も金は入れたけどね。」

「養育費と生活費は違うんだよッ……」

「でも生活費要らないって言ったのは……」

「あー!あー!聞こえない!!!!!」

「……やれやれ」

楓は負けず嫌いなのだ。彼女は当時『生活費くらい自分で稼ぐわッ!』と譲らなかった。

「と、いうことだ。……圭、また一緒にならないか?」

「……なんでこのタイミング……」

僕は頭を抱える。考えて出した結果が―――

「……疾風の、Number.2の問題が片付いてからにしよう。もし僕らが今一緒になったって、疾風は混乱するだけだ。Dreamerは僕の因縁の相手でもあるし、Dreamerが潰れるまで待とうや。疾風たちが困惑して仕事をミスるとか洒落にならん。」

「……」

楓は黙り込んだ後、突如笑いだした。

「…ははは!お前らしい!お前も変わってないな!はははは!!」

腹を抱えて笑う楓。

「……おいおい、こっちは真面目なんだぞ。疾風は事実一回疾走、というか死亡論出たんだからな。これ以上やらかしちまうと―――」

「んなこたあわかってる」

急にガチトーンになる楓。笑いも収まり、ガチトーンになる。昔よく見た凛とした顔だ。また少しドキッとする。」

「……私はお前とまた一緒になりたい。その意志は揺るがん。早く一緒になりたいってのはあるが、疾風も母親の朗報を聞けば、だいぶ喜ぶだろう。……あいつは辛いことばっか起きてる。少しくらいいい報告をしてやりたい。……頼む。母親と―――お前の責務だ。」

そういって頭を下げる楓。

……悩む。

疾風が困惑すると考えるか、喜ぶと考えるか。

僕は紅茶を飲み、ふうっと一息つく。

……小林圭。お前の心は決まっているはずだ。楓と同じ想いのはずだ。

僕は楓の言葉をうけ、出した結論は―――

「……わかったよ。もう一度、今、一緒になろう。楓。」

その言葉を聞き、楓はガバっと顔を上げ

「本当か?!」

と叫び、ダンッと机を叩いて立ち上がる。

僕はゆっくりソファからたちあがる。ゆっくり言葉を紡ぐ。

「本当、だよ。」

僕は後ろを向き、首だけ楓を見る。

「……僕も君と想いは同じだろうからね。ま、疾風も喜ぶならそれでいいさ」

顔を楓から背ける。

照れくさいので僕はそこから立ち去ろうとする。

すると、

「……全く、なに照れくさくなってるんだよ。」

背中に重みを感じた。

「……ごめんよ、ヘタレで」

「ったく。ヘタレが」

多分笑顔で楓が言ってくる。

僕らは黙ったが、優しい時間が流れる。

急に客間のドアが開く。僕は見えなかったが、聞こえてきた声で察した。

「…リーダーたち、未だにラブラブっすね。おっと、失礼します」

ドアが閉まる。多分部下たちはにやけてた。あいつら僕と高校からの付き合いだから僕と楓のことも知っている

なんなら楓は昔の僕らのチームの副リーダーだった。

「……圭。」

楓が僕から離れた。

「…楓。」

「さ、今日はお開きだな。続きはまた今度な。……今度はお前から来いよ」

「え、ちょま」

「じゃあな。私はあいつらと話してから帰る。」

一方的に話を終わらせ帰る楓。

「……鬼嫁……小悪魔……」

僕は誰も居ない客間でそう呟いた



「入るぞ~」

僕は病室のドアをノックし、ドアを開け、松葉杖をついて中に入る

「よお。調子はどうだい」

ドアを閉め、ベッドに近寄る

「…先輩」

ベッドには弱々しくそうつぶやく深雪。

「久しぶり。元気かい?」

ベッド近くの椅子に座る。松葉杖を壁に立てかけた。

「ほれ、見舞い品だよ」

僕は背中に背負うバックからお菓子とその『見舞い品』をとりだし、袋を開け、中身を渡す。

「……これは」

受け取った深雪が目を大きく見開く。

「いや~。驚いたよ。起きたら僕のバックに見たこと無い拳銃が入ってたんだから。」

「……」

袋の中身は、僕の足を撃ち抜いた深雪の拳銃だった。

「……ありがとう、ございます……えっぐ」

「……」

泣き始める深雪。僕は何も言わなかった。

「……ありがとうございました、先輩。……おかげで、恭子はもう大丈夫です。」

「大丈夫、とは」

「……父親は死んだんです。恭子はもう……」

「あー……」

そういや言ってなかったな。あのあと、東は結局死んだ。急所は外れたと思ったが、心臓に傷がついていたそうだ。

「……恭子は、もう私の中に囚われなくていいんです。」

「……とらわれる、か」

僕はそう呟いた。弱々しく言葉を発する深雪は、どこか寂しそうだった

「……囚われていたわけじゃないと思うけどね。」

「……え?」

「君が大事だから、恭子は父親を殺したんでしょ?んじゃあ、恭子は恭子の意思で君の中に居たってことじゃない?…彼女は父親を殺し、僕に抑え込まれた。恭子はもう勝手に凶暴化する要因が無いんじゃない?……君が恭子と対話できるなら。彼女と一度話してみるといいさ」

僕はそれだけ言って松葉杖を取る。

「……先輩」

「お詫びならあとでいいから、二人で話してみな」

松葉杖をつき、病室のドアを開ける。

「あ、お詫びしてくれるなら今度叙々苑奢ってね」

それだけ言って僕は病室を出た。









「……最悪だ……」

俺―――Dreamer―――はアジトの自室で頭を抱える。

Number.2は生きている。

そして、俺はNumber.2に正体がバレたかも知れない。

「…クソ。」

机を拳に力を入れて叩く。

……また、あいつの。あいつのせいで……

「クソッ!!!!!」

「……残念だったね。正体がバレて。」

急に部屋に入ってくる男がそう声を発した。

「……クソ兄貴が。てめえのせいで、てめえのせいでええええええ!!!!!!!!!」

俺は立ち上がり、部屋に入ってきた男、クソ兄貴に殴りかかる。

「……無駄だよ」

クソ兄貴は俺の拳を軽々受け止める。

「……――家。確かに皆殺し屋として優秀な家系だ。でも僕は頭脳明晰ではなかった。……君も。だからこそ、先に成長し、Numberに入った僕に嫉妬し、Dreamerを作り上げた。……だがしかし、君は強い意志を持たない。僕に負けたのが悔しいから、Dreamerをつくり、僕を潰しにかかった。……でも」

兄貴は俺の手をひねり上げる。

「あがっ……」

「君には無理だ。僕を倒すなんて。実力が違いすぎるんだ。……負けを認めることも、時には大切だ」

そう呆れたように言い放ち、兄貴は俺の腕を開放する

「……いてえ……」

「……まして、Number.2に勝つことなんか無理だよ。……バイバイ」

そして、兄貴は去っていった。

「クソッ」

俺は本気で木製の壁を殴った。

木製の壁はベコ、と言う音を立てながら凹んだ











「……あのさあああああああああ」

「ん?」

僕―――睦月優斗は神無月疾風に話しかける。

疾風はNumber本部の部屋で松葉杖を壁に立てかけ、ソファーで寝ながらスマホをつついていた。

「あああああああ愛しの安藤○紗の星5がすり抜けたーーーー!!!!!!!なんでこのタイミングでミ○アム・○・グ○ピウスが出るんだよおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」

ソシャゲのガチャですり抜けたのか疾風はスマホをぶんぶん上下に振り回す疾風。…ほんとに足をぶち抜かれて戦闘禁止になった病人?とは思えない元気さだ。

「てかポ○モンの大会もやらなきゃいけないし……なんなら東○ダンマクカ○ラもやんなきゃ……あとゲーセンで太○の達人もやんなきゃ……」

「どんだけゲーム掛け持ちしてるの?!」

なんなのこの人。ゲームしすぎでしょ。てかそんな体で太○の達人できるの?あのゲームだいぶ体使うと思うんだけど。足腰も

最近疾風はこんな感じだ。…高校を中退してから。

彼の彼女である彼方が学校のため昼間会えてないからこうなったのだろう。

ちなみに僕は今日は選択していない授業だったため休んでいる。

「くっ……復学したいけどゲームもしたい……」

「……馬鹿なのか?」

僕は声に呆れを含んで言葉を発する。

……僕は疾風を信頼しているが、これがDreamerに勝てるのかちょっと不安になる。

能あるたかは爪を隠すとはこういうことかあ……

……能あるのかな?

「さ、ポ○モンやるかあ……」

「なんでさらっとアジトにニン○ンドース○ッチを持ち込んでるの????」

会社にゲーム機を持ってくるのは大丈夫…なのか?

…いや、王牙さんならOKっていいそうだな

と考えていると疾風のポケットに入れていた無線がバイブ音を鳴らした。

「……なんだ?ポケ○ンしたかったんでけどなあ」

疾風もニンテ○ドース○ッチを置き、無線を取った。

『Number.2様、来客でございます』

「はーい」

疾風は無線を置き松葉杖をついて、立ち上がった。

「ふぁあ……行くかあ」

疾風は部屋を出た。

……憧れるよなあ。疾風。

イケメン、高身長。頭もよく、喧嘩も強く、優しい

……完璧な人間だ。とてもそうとは見えないけど

でも。

睦月家も本来そういう家系だった。

殺し屋が多い家系で、みんな頭がキレ、世間に溶け込み、その中でターゲットをひっそり殺す。

……でも。僕達兄弟だけ、違った。僕達だけ、凡人だった。

…僕には、弟がいる。みんなにはそれを隠しているが。なぜかというと、家族が殺し屋を営んでいることもついでに隠すため。

弟は凡人でも、殺し屋としてギリギリやっていくスペックはあったが、彼は睦月家から出ていった。そして、自分で組織とアジトを建て、なんとか生計を建てているようだ。

…それに比べ僕は……

僕は、大した活躍もせず、Numberに住み着く居候だ……言ってしまえば……

要らない虫だ。

…弟がしでかしたことの、贖罪くらい、できたらなあ










「……来客と言われ、誰かと思って応接室に来てみれば……なんで母さんが居るの???しかも圭と一緒に。」

応接間に来ると、来客、もとい母さんと圭が居た。

そもそもこの状況がおかしい。

圭は母さんと関わりが無いはずだ。なぜこの二人が一緒に、しかも仲よさげにしてるんだ?

「いやあ、急に来て悪かったね、疾風。君に言いたいことがあってね。あ、ちなみに僕と楓は昔の悪友でね。昔は一緒にヤンキーしてたんだよ。」

「え、なにそれ初耳」

さらっと衝撃的な言葉を発する圭。なんなのこの人たち。仲いいならせめて息子に話してくれよ、母さん

しかしつぎ母さんが発した言葉はもっと衝撃的だった

「いやあ、今日は私達が再婚したことについて話そうと思ってね」

「へ~再婚かあ」

僕はコーヒーのペットボトルを取り出し、飲む。

再婚………再婚か

僕はその言葉を反芻する。

そっか。母さんもいい年だもんな。きっといい男性を見つけたに違いない―――

まて、今『私達』っつたよな?

「……ん?母さんと圭が再婚するの?」

僕はおずおずと聞く。多分僕の手は震えている。

え、嘘でしょ?嘘だと言ってよ

そんな儚い理想は一瞬で当事者によって破壊された

「?そうだけど?」

…………………うん、

「はああああああああああああああああああああああああああああああ?!?!?!?!?!?!?!?!?!」

「え、何そんなに驚いてるの」

僕が驚いていることに驚く破壊魔。

もうこの人怖いよ。隣に座る圭を見やる。

圭はバツが悪そうにしている。………圭をじっと睨みつける。

「……一応言っておくよ。…楓は結婚三回目だよ。」

僕の睨みを恐れず堂々と言い放つ圭。

「は?」

ちょっと待て母さんは俺の実の父親と一回、圭とで二回目じゃないのか?

爆弾を投下し続ける母さんたち。そしてさらに爆弾は落とされる。

「……この際言っちゃうわ。疾風。あなたは私の元夫の息子じゃなくてそこの圭の息子よ」

ぽく、ぽく、ぽく、ちーん。

そんな音が聞こえてきた。自分が魚人になった気がした。違うこれ魚目だ

まってこれなんだっけ。もういいや。

この世界に原爆がぶちかまされた。アメリカよ、なぜ日本を滅ぼすんだ………………

私は日本だ。イタリア……ナチスドイツ……俺、先に行くね

「…………………は???????????????????????????????????」

ちょ、僕の心は復興できないぜ。ちょ、GHQ攻め込まないでもろて?????

「……すみません。よくわかりません」

僕は無機質な声を出す。

人って、マジで理解できないと感情がなくなるんだな……

「だから。君の実父は私の隣に座ってる圭なの」

今度は長崎に原爆が落とされた。

「……あの男、マジで僕の父親じゃないの?」

「うん。アイツは圭の血縁者でな。忙しい―――ていうか、ヤクザだからな。圭は。そんな圭さんは、信用できる血縁者に私と疾風を任せたらあのザマだったってことだ。ははは~私は可愛そうだなああ」

「……申し訳ないでした。はい。すみませんでした。はい。」

さも日常会話のように話す圭と母さん。……ちょっと理解しようとするか。

今人類哀れみの令が出ていて、僕が守られて―――

うん違うね

僕は父親じゃない人を殺したんですね。

「…………」

僕は一瞬で賢者へと成り上がった。

…今ようやく理解した。

「……なぜ僕にそれを言わなかった……」

僕は頭を抱える。

「……あ~……言うタイミング逃しちゃった。てへ!」

陽気な声で言ってくる母さん。

「てへじゃねえよ」

僕はガチトーンで突っ込む。

「いやごめんて。疾風が中学から一人暮らし始めてからたっぷり話をする時間がなくてね。なかなか話せなかったというわけよ」

「……あ~……」

僕は中学から一人暮らしだ。

……なんというか、母さんらしい理由だなあと。

てか待てよ

「……圭。ならお前が言えばよかったんじゃないのか????33歳バツイチ」

僕はおもいっきり圭を睨みつける。

「いやあ……楓が話さなかったし、いいかなって思って」

「ふざけんな」

苦笑しながら言う圭。

「うんごめんね?いや、楓と関わってるとは疾風は知らないのに、急に『疾風は小林圭の息子』なんて言われたら困惑するでしょ?」

「なんだまともな理由だった」

「まともな理由って…どんだけ僕に期待してないのよ」

僕はため息をつく。

「…とりあえずわかったよ。祝福する気にはならないけど、お幸せに。―――母さん、父さん」

「…うん。頑張ってね、疾風」

それだけ言って僕は松葉杖をついて立ち上がり、応接室から去った

いやあ、それにしてもいまだに信じられんなあ

「僕が圭の息子とはなあ……」

ぽつりとつぶやく。

「言ってほしかったな」

僕は天井を仰いだ。

……圭は父さんなのか。

てか、父さんって…始めて言ったな。

な、圭








「ふぃ~……疲れたよぉ」

僕は彼方の家のリビングのソファでくつろぐ。

「お疲れ。…てか、なんでそんな疲れてるのよ」

彼方は苦笑する。彼方が淹れてくれたコーヒーを口にする。あ~生き返る~

「いやあ…衝撃すぎる新事実を2つも聞いちゃって精神的に……」

「あー…お疲れ」

彼方は隣に座ってくる。

「で、どんな新事実だったの?」

「なんか知らぬ間に母さんが再婚してた」

「はえ~、楓さんまた結婚したんだ」

「で、小林圭ってやつが僕の父親だってしった。まあつまり、僕が殺った父親は本当の父親じゃなかったってことだ」

「え!?そうなの?!え、ちょ、は?」

「なんで僕よりビビってるんだよ……」

圭が僕の父親であることを告げると、彼方は僕より驚いていた。いや、あなた僕の家族じゃないよね……

「いや、あの、あなた父親じゃない人に虐待されて、父親じゃない人を殺ったの?」

「そういうことだ」

「今世紀最大のビッグニュースだわ……」

心底驚く彼方。そしてなぜか抱きしめてき

「お~よしよし。今までよく頑張りましたね~」

「え、ちょ、急に何よ」

「いやあ、疾風も苦労してたんだなって」

「……どういうことよ……」

「いや~なんとなく?」

「ほんとにどういうこと?」

彼方は僕から離れた。

…一体何だったんだ

「そ・れ・よ・り・も」

「ん?」

「……なんで松葉杖ついてるのよ」

彼方は松葉杖を指さしながら心配そうに言ってきた

「後輩と喧嘩した」

「なんで喧嘩程度で足に包帯巻いて松葉杖をついてるのよ…」

僕は乾いた笑いをしながら

「生意気な後輩さんでね。拳銃を喧嘩に持ち出してきちゃってさ」

「けけけけけけけけ拳銃?!」

「生意気でしょ?ははは」

「大丈夫なの?!他に怪我は無いの?!」

「ちょちょちょ落ち着いて」

彼方は僕の頭をぶんぶん振ってくる。めっちゃ慌ててるよこの人。

「落ち着けるわけが無いでしょ?!え、喧嘩程度で拳銃?!今までよく生きてきたね!?」

「いやいや、今回だけだから!落ち着いて!」

その後、彼方の暴走が落ち着くまで1時間ちょっとかかった。

僕のことを心配してくれるのは嬉しいけど、ここまで大げさに驚かないでおくれよ。

ほんと、みんな過保護なんだから









とりあえず、僕は松葉杖を外すことができた。拳銃でできた傷だったので、二週間程度で外せた。

いつもどおりNumberのエントランスに入ると

「うげ」

「なにがうげだしばくぞ」

「いや最近あんま顔合わせてなかったからさ」

「まあ俺は後輩の育成に尽力してたからな」

「さすが脳筋のNumber.8」

「誰が脳筋だコラ」

「事実じゃん」

僕は苦笑する。

エントランスには愁が居て、僕は愁とばったり出くわした。なんという不幸…こほん、幸運なんだろう

「ま、愁はNumberの名を持つ人の中で一番強いからね。僕も怪我してたし、後輩の育成には関われなかったな」

「ま、俺お前より強いしな」

意外とでかい大胸筋もつ胸を張りながら言ってくる愁。ま、武器あったら僕のほうが強いと思うけど、体術ではこいつには勝てないな。

まあ、なんか認めたくないので

「ほんとかなあ?」

と不敵な笑みで言ってみた。

「……ほんとだろ、多分」

愁はちょっと不安そうに言う。

「うふふ……」

僕はそう笑う。

二人でエレベーターを待つ。エレベーターが来ると、二人で乗る。中に乗っていた人がそそくさと去っていった

エレベーターに乗り、上から二番目の階のボタンを押す。実はそこには訓練場と言うなの戦闘ホールがある。

あそこには木刀、モデルガン、果にはガチの日本刀や拳銃などもあり、殺伐とした部屋に大量の傷がついている。まじで戦闘狂しか使わないんじゃないか、という感じの部屋だった。

…今日はそこで愁と仲良く過ごそうかな。

上から二番目の階につく。僕はいつも過ごしている大きい部屋を過ぎ去り、訓練場に向かう

愁は僕がどこへ向かっているのか察したようで

「お手柔らかにな、最強のNumber。」

と言ってきた。僕は大きく笑い、

「死なない程度にはしてあげるよ」

と言った

訓練場につき、ドアを開け、中に入る。

早速僕が愛用する日本刀、三笠に大きさが近い木刀を取り、愁と距離を置く。

訓練には珍しく、愁も木刀を持ってた。いつもは訓練に武器を使わないんだけどな、この脳筋ゴリラ

「……本気ってことかい、愁」

僕が問うと愁は

「お前に負けたくないんでな」

と返してきた。負けず嫌いだな。

…そうかい。んじゃ僕も本気を出そう

僕は一旦呼吸を整え、中段の構えをとる。

愁も構えた。

緊迫した空気。……久々だな。訓練でこんな空気になったのは。

さてやりますか。相手はNumber.8。愁が相手だからこそ。

「このNumber.2、本気で行くよん!」

「とてもこれから本気を出す人間とは思えないな!」

僕は地面を踏み込む。容赦なく愁の銅に木刀を振り下ろす。愁はそれを後ろに下がりながら僕の木刀を叩き、それを防ぐ。さすがに残心なんてやってる場合じゃない。次なる一手を打とうとした瞬間、愁の蹴りが飛んでくる。―――速い。

僕はとっさに片手を木刀から離し、愁の足をはたき落とす。流石に愁も態勢を崩す。

僕はその隙きに木刀を頭に振り下ろす。

しかしだが、さすがの脳筋。それを見切ってしっかり木刀でガードする

……動きがいちいちはええ。僕の攻撃を見切って最速で最適な手を撃ってくる。

厄介この上ない。なんなんだこいつは。頭いいのか悪いのか…いや、愁の場合は本能で動いてるのか

愁は僕の木刀を上に振り払う。木刀が押し上げられる力が強すぎて僕は少し後ろによろめく

まじでなんつーパワー……

愁は態勢を立て直す。そして硬直状態。お互いににらみ合う。

それを破り、先に仕掛けたのは愁だった。愁は木刀を槍投げの要領で投げてくる。ちょっとまて。いくらなんでも速すぎるだろ。だいたい人が卵をぶん投げるときの速さだ。わからないかもしれないが

僕はそれをスレスレで避ける。

避けた瞬間愁の殴りが飛んでくる。流石に完全に止めることはできなかった。手でできるだけ衝撃をカバーする。

だがしかし手がアホみたいに痛い。痛みを堪えて愁の手を掴む。そして―――

「おりゃ」

投げた。

愁はきれいに受け身を取る。うう…これじゃだめかあ

もいいっそ―――

受け身を取った愁に向かって飛びかかり、かかと落としをする。愁は転がって避ける。かかったなアホが!

僕はかかとを完全にはおろさず普通に着地。そして立ち上がろうとしている愁に

「サンダークロススプリットアタック!!!!!」

と某ジョジョのキャラの技名を叫びながらクロスチョップを飛びかかりながら放つ。

そして愁はそれをギリギリで受け止める

そしてその状態のままにらみ合う。

そして、二人同時に右足で蹴りを放ち、二人同時に左足に被弾する

僕らは重なり合うように二人で倒れた。僕は苦笑し、


「なんだ、僕ら、同じだな」


と言った。愁は大きく笑い

「どっちも勝てないなんてな……はははは!やっぱ俺ら同じだな!!!」

と言った。僕は苦笑を普通の笑いに変える。

僕らは数分間、ともに笑い続けた。

……彼方と過ごすときとは違う幸せを感じた


「なんで私が……」

「ふざけんな引きこもってばっかじゃなくてたまには外に出て働け」

「そうだぞ理奈」

「研究が忙しいのだけれど……まあいいわ。新しい銃の試運転でもしようかしら」

僕らはNumberの支部の一つ、神奈川支部に向かっている。王牙さんにとりあえず行ってこいって言われたのだ。

「もし研究しかしてないならたまに爆発させないでね?あなた爆薬でも開発してるの?」

「対地アジト用の小さめの爆弾を作ってるわ。あれがあれば鍵がかかっているアジトも一発で侵入できるわよ。今はその爆弾を音を出さずに爆発させる方法を考えているわ」

そこそこ大きい胸を張る姉さん。昔堂々と僕に『私はCカップよ!ふふん!』と言っていたような。……そしたらなんか前よりデカくね?

「あなた今失礼なこと―――」

「疾風、次はどっちだ?」

サイコパワー使いの姉さんの追求を愁が助け舟を出して遮ってくれた。愁は僕の顔を見てニッと笑った。姉さんはちょっと不機嫌そうだ。

「えっと、次の曲道を右。」

「ん。」

僕らは分かれている道を右に回る。そこには周りに何も無い殺風景一本道。その奥には道とは対象的にちょっと派手なビルが建っていた。

ドアにはデカデカと『KANAGAWA』の文字。……ほんと、こういうデザイン、確かにバレにくいけどさ。いや…うん。

「……ほんとだせえな」

愁が呆れを含んだ声で言う。

「言ってやるな。ここの支店長?はこういう硬い人なんじゃないの?」

「……怒られても知らないわよ」

姉弟一緒に苦笑する。

エントランスに入る。

「こんちわ~。Number.2です~」

僕がそう言うと、ぞろぞろと人が出てきた。

『お待ちしておりました!』

ご丁寧なお出迎えである。僕は苦笑する。姉さんと愁は困惑している。ここまで盛大なお出迎えは僕にも想定外だよ

「お出迎えありがとうございます。できれば、支店長…?様の居場所に案していただけると嬉しいのですが。」

「もちろんでございます!……では、こちらへ。」

僕の頼みを聞いてくれる受付のカウンター長と見える人が返事をし、案内を始めてくれた。

あ~ありがてえ。僕はそのカウンター長についていく。

愁と姉さんは困惑しながら案内についていく。








「はじめまして。Number.2でございます。」

案内された部屋に入り、僕はお辞儀をする。

愁も姉さんも続く。

「Number.8でございます。」

「Number.0でございます。」

「まあ、座ってくれ」

目の前の人がソファに座るように促す。

僕らはそれに甘えて座った。

「失礼します」

「そう固くなるな。お前ら一応俺よりつええんだぞ」

「いえ。身分上では私達の方が下なので」

とりあえずこういう硬い会話になれてない愁と姉さんには黙ってもらって、僕が返答する

姉さんと愁は多分今変な顔してる。しらんけど

「……なんか俺なめられてね?俺を上と言うとはな……ほう」

「悪意は無いです」

「…ひ、皮肉が通用しねえ……まいいや。」

目の前の人はコホン、と咳払いをする。僕は少し笑った

「てか自己紹介してねえな。俺は大波吾平(おおなみ あいら)だ。周りからはダイアーと言われている」

「よろしくおねがいします。ダイアーさん。」

「かかったなアホが!とは言わんぞ。てかやっぱお前俺のこと下手に見てるだろ」

苦笑する大波さん。僕は真顔で大波さんに問う。

「で、ダイアーさん、結局僕ら、何をすればいいんですか?」

「結局ダイアーって呼ぶのかよ…もういいわ」

大波さんはもう一度咳払いする。

「で、横の二人さんも聞いとけよ。

まあなんとなくわかってるだろうが、まあ神奈川支部の警備だな。本部はまだバレちゃあ居ねえが、神奈川支部はバレそうなんでな。」

「なんでバレそうなんですか」

「いやあ……本部は王牙が隠してるからな。地図じゃ表示されねえし住所も政府しか知らねえし。でもここは流石に無理なんでな。関東に勢力を持ち、近畿にも仲間が居るDreamerさんにバレるのは時間の問題さ。」

「それで?」

「実はここには色々機密があってだな。その関係で落とされちゃダメなんだわ。」

「機密とは、具体的に?」

「お前らの個人情報とかアジトの具体的な場所とか」

「なんでそんな重大な個人情報ここに隠してるんですかね?」

「んなこたあ王牙に聞け。俺はそういう話はあんまわかんねえんだ」

「わかりました。期間は?」

「そうだなあ……本部には誠が居るし……」

「誠?」

「ああ、そういやあいつお前らとは関わりがねえな。Number.5だよ」

「あ~」

僕らはNumber.5について話は聞いたがあったことはない。たしか

「Number.5さんは情報課ですよね」

「その通り。あいつは王牙と俺のひとつ下の後輩でな。優秀だからそろそろDreamerの本アジトもあいつによって特定されるだろ。」

「なるほど」

「というわけで本部が割れるまでここに居てもらいたいが…正直、もしここが襲撃されて、その襲撃をいなせたらもう警備やめてもいいぞ」

「ほう。それはまたどうして?」

「ここは機密を持ってる。Dreamerといえどそれは察するだろうから、大人数で仕掛けてくるはずだ。それをいなせば、当分攻め込んでは来ないだろう。」

「まあ、そうでしょうね」

「すると、Dreamerはどうすると思う?」

大波さんが微笑を浮かべながら僕に問う。僕はその問いに

「ま、焦って本部に突撃するでしょうね。総戦力で。」

「そう。総戦力戦だ。だから俺も参加する。……そのときに、Numberが三人欠けてるのはヤバいだろ?」

「そうですね。」

「つーわけだ。今日から頑張ってくれ。俺はタバコを吸ってくる。寝室はこの階の下の階にあるから好きに使ってくれ。衣服も用意してある。銭湯も近くにあるから、三人で一人づつ行ってくれ。じゃ、よろしく頼むぞ、新星たち」

「ええ。このNumber.2、頼まれました。

大波さんは豪快に笑い、タバコとライター片手にこの部屋を去っていった。

「さ。寝室に行こうか」

僕がそう言い、立ち上がる。

「ええそうね」

「ああ」

姉さんと愁が僕に続く。僕は苦笑する

「これからは君等も会話に参加してね」

僕の希望は、

「「善処する」」

という二人の言葉に打ち砕かれた。

……面倒事押し付けてるだけか……








「ふう」

俺、大波吾平は喫煙室で一服する。

あいつ、なかなかに面白いやつだったな。王牙が拾っただけある

俺と王牙、葉月舞は昔の悪友だ。王牙が動けた時代は一緒に戦ってたしな。

しかしなぜだろう。俺は30を超えてるのに、10なんぼのガキにあんな煽られてもなんも腹が立たないとわな。

Number.2。神無月疾風は人を苛つかせないのか?俺はあいつと今日初めて会った。だからこそ、あいつがどれほど強くて、どんなやつか知らない。王牙いわく、

『生意気で優しい子』

らしい。後半は知らないが、前半はあってるのだろう。

……ははは。矛盾してんな

生意気なのに優しいって。聞けな聞くほど、考えれば考えるほど面白い

「ふぃー……にしても、Numberもでかくなったな」

昔はポリ公の手伝いをしていた程度だったのになあ

今はポリ公の腐敗のせいで俺らは総理直々に国のため働けと言われた。……お前総理だろ。ポリ公くらいどうにかしろよあの無能……

現首相は俺らのダチだ。腕っぷしは俺らには及ばないものの、頭がキレる。小賢しい……じゃなくて賢い。

その頭の良さは軍師として発揮された。おかげで俺らは負け無しだったぜ。俺なんか令和のダイアーとか呼ばれていた。別に王牙はジョ○ョtpは言われてはいない

……久々にあいつに連絡してみようかな

タバコの吸殻を灰皿に押し付ける。ぐりぐりと回し灰を落とす。

吸い殻を投げてゴミ箱に捨てる。

俺は喫煙室から出た。







「一週間くらいなんも無い……ほんとにここは襲撃されるのか?ってくらいのほほんとしてんな」

「ま、そろそろ忙しくなるでしょ」

「それも、そうだな」

僕らはなぜか僕の寝室に三人でいた。マジで寝る時以外みんなここに居る。なんでだよ少しくらい自室に居ろよ。

ちなみに僕らがこの部屋を出るのは銭湯に行くときとコンビニでItunesカード買いに行く時くらいである。

ちなみにItunesはアサル○リリィにつぎ込んでいる

「はいはい、不吉なこと言わない」

苦笑する姉さん。

「個人的にはさっさと襲撃してもらったほうがメリットがあるんだけどなあ」

「やめロォ!」

姉さんが悲痛な声を上げる中、愁はげらげら笑っている。

「いやあ……ずっとここで待機するのも辛いやん」

「まあわかるけど不吉なこと言わないでくれないかしら?」

「本音はたまにはさらけ出したほうがいいと思うんだけどな。」

「だからといって言っていいこと悪いことあると思います」

「当たり前ダルルォ?!」

「わかってるならなんで言ってるの?!」

「言っていいことだから」

「はあ?!」

姉さんが叫ぶ。愁はまだ笑っている。

「やばおもろ……ぶふ」

「もう。そんなこと言ってるとほんとに襲撃が―――

こんな会話をしていると、全員の無線が一斉に鳴る。

部屋の空気が凍りついた。とりあえず、僕のみ無線を取る。

「…はい」

『しゅ、襲撃です!』

「……わかりました。行きます。Number.0もNumber.8も居ますので今から行きます。」

無線を切った。僕は立ち上がる。机に近寄り、机の上の仮面と羽飾りを手に取り、身につける。愁と姉さんも身につける。愁は床の上の、姉さんは僕のベッドの上にあるのを。なんで僕の部屋に置いてるのかな。まいっか。ジャンパーを羽織る。チャック付きのポケットの中に鉄の塊を擦る。…OK。さあ行こう。

「…姉さんがフラグを立てるからだ」

僕はドアを開ける。

「……疾風があんなこと言うからでしょーーーーーー?!?!?!?!?!」

後ろから聞こえる姉さんの絶叫を聞き流し、僕は走った。












「なんで一階が占領されて、二階にまで来るんだよ……ッ」

僕は二階に居た。他の二人は一階に行った。……ま、僕一人でも

「こんくらいの広さなら、僕一人でどうにでも……ならねえか」

苦笑いする。周りを見回す。まあ周りも戦ってるし大丈夫か

さあてつぶすか

抜刀する。愛刀、三笠を抜き、突撃する。相手は本気でびっくりする。ここの人が必死で応戦していた相手を一寸で切り捨てる。ギリギリ生きているように。相手は倒れる

「えっ……」

横線していた人はびっくりする。……大人数、とは言ってもだいたい40人程度か?まあ神奈川支部の人たちも居るし大丈夫だろ。流石にみんな戦闘能力あるし。二階でも皆が皆、それぞれ戦っていた。一階を占拠されたため、二階にほぼ全勢力を注ぎ込んでいるはずだ。下にいるのはせいぜい10数人程度だろう。僕は三階につながる階段に向かう人の塊を見つける。如月敦人との戦闘の時と同じ靴のダイアルを回し、地を蹴る。靴からジェットが噴き出る。1秒後、そのジェットが止まる。そのときにはその塊の後ろに立っていた。4人の塊だ。そして、奴らは僕に気づいてないため、後ろから音を立てずに斬り伏せる。4人全員階段の前で倒れる。先程戦っていたところでは、だいぶこちらが優勢になっていたらしい。どうやら、相手さんは僕を見たせいで動揺してしまったようだ。その隙をついて倒していく。さすがNumberの人。なかなかに強い。…素早いな、みんな。これはダイアーさんの教育の賜物かな?

てかダイアーさん働けよ。僕らにすべて投げるのは良くないと思う。

てか、これ拳銃要らなかったな。

階段の下から人が上がってくる。僕は相手から見えないように壁に寄り添う。

そして、三階に登る階段に足を踏み入れた瞬間、僕は飛び出て切り捨てた。悲鳴すらあがらない。…やっちゃった。これ死んだな。てかここにいる5人はみんな死ぬ気がする

これ以上殺さないようにしよう、とか考えていたが、その後、階段を登る者は誰も来なかった。周りを見てももう戦いは終わっていた。なんだ。さて部屋に戻ろう―――

待て。

なんで敵が二階に来ないんだ?

それは戦闘が終わったから。なら

「どうして、Number.8とNumber.0は上に上がってこないんだ?」

こんな呆気なく終わるはず無い。僕は階段を駆け降りた。







「あ~あ。なんだ。あっけない」

私は手をパンパンと払う。

みんな倒れてる。皆血は流してないが、泡をふいて倒れてる

「いや~いいわねこの空気銃。相手死なないし気絶するし。」

この銃は気圧がすげー高い空気銃だ。当たったら普通に気絶する。空気銃だといって侮れない。

しかしもちろん欠点も存在する。

殺傷能力が低いから、タイマンではあまり使えない。

更に、いちいちリロードしなきゃいけないため、連射ができない。さらにいちいち気圧を高めてから空気を音速並みの速さで撃つため、発射に時間がかかるときた。乱闘に紛れて撃つくらいしか使い道が無いのが残念だ。

もう少し速射能力を上げるために改良しなきゃな

「あ~終わった終わった。これだけか?」

拍子抜けしている愁。私も同じ感情だ。

「でもまあ、戦いも終わったことだし、寝室に戻りましょ?」

「ま、そだな」

私が伸びをして階段に向かおうとした、その時だった

「誰だてめえ!」

愁の怒鳴り声が聞こえた。驚きつつ振り向いてみると

「んなッ?!」

先程は誰も居なかった一階のホールに、一人の男が立っていた。

その男は嘆息した。

「……はあ、まあ、所詮こんな程度か…雑魚を何人向かわせても雑魚は雑魚。兵が揃っているNumber本部には勝てないか……」

私はその言葉に違和感を感じた。…こいつ、ここが本部じゃないと気づいていないようだ。

まあ、もちろん黙っておこう。愁も流石に言わないだろう。

「まさかこんななんもない道の奥にあるとはな…気づかなかった俺らがバカバカs……うおッ」

男が話し終わる前に愁が突撃していた。既に相手の懐に入り込むも、男はひらりと躱した。

私も裏で準備していた空気銃をぶっ放す。しかし、その男には当たらなかった。また避けられる。

「おいおい、話くらい最後まで聞いてくれよ」

男は苦笑する。愁は真顔で

「練習試合に軽口は不要」

と言い放つ。そのとんでもない身体能力を駆使し、バンバン攻撃を仕掛けていく。

「うっ……」

男は愁の蹴りを腕をクロスさせてガードする。さっきまでの余裕さはもう無い。愁はどんどん攻撃する。

蹴り、右ストレート、頭突き、左ストレート、回し蹴り、飛び蹴り

それに対し、男はガードするだけ。隙を見つけようとしてるだけかもしれんが、もう相手は呼吸が荒い。避けるのにだいぶ神経と体力を消耗しているんだろう。

そして、愁の回し蹴りが放たれる。男はそれを避けるが、それによって男は態勢を崩す。一瞬で立ち直ろうとするが、愁はその隙を見逃さず鳩尾にストレートを叩き込んだ。

「かはっ…」

「お前らは俺らなんかよりも弱えんだよ……その差は、埋められない」

愁はおいうちにもう一度鳩尾を殴った。

男は地に伏し、立ち上がらなくなった。

気絶したのである。

その時間、わずか数分。

……すごいわね。さすがNumber内最強の身体能力を持つ男。

「あっけないわねえ」

私は呟いた。

「姉さんたち、大丈夫―――だったようだね」

すると、後ろからさっきフラグを立てて見事に回収した輩が現れた。

「……なによ。私のこと信用してなかったのかしら?」

「いや、来るの遅かったからね。ちょっと心配したよ。……まあ、勝ったならよかったよかった。めでたしめでたし」

「なにがめでたしよ……」

私がそう言うと、

「……あ~いい運動した。」

愁は伸びをした。……はあ。ほんと、なんなのかしら……







「しっかしまあ小規模だったな。」

僕は欠伸をする。姉さんたちは自分たちの部屋に戻った。そして僕は―――

一階のエントランスに居た。

いやあ、僕自身の意思なんだけどね。……ちょっと、心残りがあった。そのため僕はここに残っていた。

……しかし、夜になっても誰も来ない。

ぼーっとしていると、

「あら疾風、ここに居たのね。私銭湯行ってくるわね」

「ああ、行ってらっしゃい。」

エントランスを出る姉さんの背中を見届ける。

……はあ。カウンターの中で嘆息する。

もう寝室に戻るべきと言われるかも知れない……でも、嫌な予感が、拭えないのだ。

……姉さんが言うには、Dreamerの人間はこの神奈川支部を本部と勘違いしていたらしい。

もし、もし本当にそう思い込んでたら”攻めてくる人達が少なすぎる”

……だから気になって仕方ない。二人にはまだこれを話していない。……言えばよかったのか?

…確信は無いのだ。だからなるべく心配させたくなかったのだが……

頭を抱える。…やっちまった。Number.2としてあるまじき行為。かもしれない。

……言えばよかったな。私情挟んじまって、それでみんな死んだら……

いや。いい。次から変えれば良いだけだ。

そんなことを考えていると、エントランスのドアのガラスが音も立てずに崩壊した。

……ん?崩壊ングした?

…あっ

やばい。僕の嫌な予感は的中した。なんだ。夜襲かよ

僕はフンッと鼻を鳴らす。…なんだ面白げもない

「……ようこそ。」

僕はカウンターから出た。仮面と羽飾りは既につけている。

「……さて、君は何しに来たんだ?深夜に、こんな人の居ないなんも変哲もない場所に。」

僕がそう問う。…侵入者は一人のみか。本気で夜に襲い、すべて奪うつもりだったのだろう。…一人で十分だというのか。

電気に照らされる仮面をつけ、腰に鞘を取り付けている男は、言葉を発した。

「御託はいい。お前はすべてわかっているはずだ。」

僕は笑みをこぼす。

「ふふ…ふはは。そうだな。たしかにそうだな。」

僕は抜刀する。こいつは、僕に似ている気がする。根拠はないが、何となくそう思う。だからこそ、僕はこう言った。

「さて、君は僕に応えるかな?」

男は無言で抜刀する。

「……私はNumber.2だ。知ってるだろうが。」

僕が自己紹介すると、男も名を名乗った

「……夢咲(ゆめさき)だ」

僕らは剣を構える。自然とお互いに蹲踞(そんきょ)をした。

そして、中段の構えをし―――

お互い、地を踏み込んだッ―――


剣と剣が交差する。

お互い、押す力は互角だ。

このまま押し合うと、剣が凹むかも知れないので、僕は後ろへ跳んだ。

同時に夢咲も跳ぶ。

なんだこいつ、僕と全く同じ行動をするじゃないか

僕らは少しの間にらみ合う。先に仕掛けたのは、夢咲だった。

夢咲は僕の頭を見ながら突進してくる。

僕は苦笑し、ぎりぎりまで剣をひきつけ―――

思いっきり剣を右に払う

剣は気持ち良い音を出して払われた。

「…君は僕に似ているね」

「それはぜひとも光栄だ」

狙う場所とは違う場所を狙い、ほんとの狙いに素早く剣を叩き込む。これは僕もよくやっている。

剣道で言うと、面に視線を飛ばし、籠手に思いっきり一撃を叩き込む感じだ。

僕は一歩斜め前に踏み出し、夢咲の胴体に思いっきり斜め上から剣を叩き込む。

「まるでお遊びの剣道だな」

夢咲は一歩下がって剣を下に叩き込む

「スポーツマンシップにのっとろうか?」

「いやだね。死んだら負けだ」

夢咲は僕の喉に突きを繰り出してくる

「でも剣道みたいにやるのは、楽しいだろう?」

僕はすぐさまそれを剣の腹でガードする。クソ強い力で押されるため、お互い剣がプルプル震え、腕にとんでもない負担がかかる。

「まあ、違いない」

僕は埒が明かなくなったので、剣を上に思いっきり払った。お互いの剣が宙に浮く。

僕はすぐさま構え直し、一歩踏み出す。あいての手をにらみ―――

「…性格悪いぞ、お前」

頭に振り下ろした。

「やられたら、やり返す、だよ」

夢咲はそれをしっかり見切って、頭の上でガードする。

……楽しい。

夢咲と戦っていて、本気でそう感じた。

僕は大量に戦ってきた。それは何百人と。

しかし、それでも僕と同じレベルの実力者は現れなかった。

……初めてだ。僕とまともに渡り合える人間は。

僕は初めての体験に、興奮し、楽しんでいた。

「君は僕と同じだね。拳銃でも使って優勢に立とうかな?」

僕はすり足で前に進み、斬新する。お互い中段の構えをする

「おいおい、スポーツマンシップ、だろ?」

夢咲は苦笑しながらそういった。

「はは、それを嫌だ、と言ったのはだぁれ?」

僕らはお互い踏み込み、また剣を交差させる。ガキィン、と鉄同士がぶつかる気持ちいい音が響く。

「さあ、俺はさっぱり覚えてないよ」

「ふふ。性格悪いね。」

「お前も、だろ?」

「さあ?認めないよ?」

「そういうところだろ」

お互いに思いっきり力を込める。

僕らは一緒に吹っ飛ぶ。

3Mくらい距離が開いた。クッソ飛んだな。

「夢咲、君、力強いね」

僕は走る。

「トイトイだろ」

夢咲もまたこちらに走ってくる。

「それを言うなら、五分五分だ。」

僕はかがんで腹を横に薙ぐ。夢咲はとんでもない高さで飛んでそれを避け、僕を飛び越える。

身体能力どうなってんだよこいつ

僕は剣を払った姿勢のまま足を止める。そして振り返り、立ち上がると―――

「うぉっ?!」

夢咲が蹴りを僕の顔面に飛ばしていた。振り返ったときには足は既に鼻先にあった。

僕は仕方なくそれを食らう。激痛が顔面に走る。

僕はそれを無視して夢咲の足を掴む。

「あ、ヤベ」

僕の手から逃れようとする足を握力でねじ伏せ、腕に力をこめて―――

横に回転する。夢咲は宙に浮く。そのままぶんぶん回した後に投げる

夢咲はけっこう飛んで、離れた場所に倒れる。しかししっかり受け身はとっている。さすが。あっぱれ、である。

「さあて君の負けかな?」

僕は剣を構え、少し近づく。しかしもう夢咲は立ち上がっていた。

「…ゴキブリ並みの、生命力を、舐めるな」

「あら、アースジェット炊こうか?」

「そんなものより、お前の剣のほうが効果あるぞ」

僕らは剣を体の右横で斜めに構える。

夢咲も僕も息が荒い。これがラストアタックになるだろう。僕らはそれを察していた。だから、最高の最後で締めたかった。この力が互角の者同士の戦いを。

「同じモノ同士、考えることは同じと」

「御託はいい。もう疲れたからさっさと終わらせろ」

「なっさけないなあ」

僕は高らかに笑う。

二階からドタバタという音が聞こえる。僕らが戦っていることを感知して、慌てて来てるのだろう。

邪魔させたくないし、終わらせるか

「……」

「……」

僕はにらみ合い、

同時に走り出す。

そして、剣先がかすりあい―――

同時にお互いの体を浅く斬りつける。

そして、お互いに至近距離で静止する。そして先に倒れたのは―――

「スポーツマンシップだらけのお遊戯だったな……マジで……」

夢咲だった

「おっと僕の勝ちかな」

「なんでだよ……俺ぁお前なんかにまけたくねえよ……」

「大丈夫、引き分けだから」

それだけ言って僕も倒れる。

あんなの食らって倒れねえわけねえだろ。クソいてえし疲れたし。

「俺は割と深く斬られたんだよ…お前は疲れただけだろ。」

「まどっちもだね」

「なんなんだよ、ガチで俺ら同じだな。」

「僕ら、クローンかもよ?」

「かもな」

ははは、と二人で笑い合う。僕らの中では、僕にはわからなかったが、確実になにか絆が芽生えていた。

「ちょ、あんた、どうしたの?!てか、その男誰?!」

甲高い叫び声が聞こえる。顔をあげると姉さんだった。…ちょっと決着が遅れてたら姉さんにちゃちゃいれられてたな。あっぶね

「いや、戦っただけ。とりあえず疲労と痛さで立ち上がれないから僕を病院かどっか連れてってくんない?ダイアーさん呼んで車出してもらってくれ。お互いに胴体斬られてるんだよ。あと、こいつも連れてってくれ。病院に行くなら、同じ病室に入れてくれ。手は出さないでくれ」

「ちょ、なんで?!詳しく話してよ?!」

「理由はないよ。何となく、僕こいつのこと好きだから」

「は、はぁ…わかったわ。ダイアーさん呼んでくるわ!」

姉さんはそう言って階段へ走り去っていった。遠くから「Number.2様、大丈夫ですか?!」という声が大量に聞こえる。

「……なんで俺をかばった」

夢咲が怪訝そうに尋ねてくる。僕はフッと笑い、

「君をNumberで働かせるためだよ」

と言った。夢咲は

「……そこは、君が大切だから、とか言えよ。だせえな」

「僕はそういうのは嫌いなんでね」

夢咲は笑い、

「お前、ほんっと俺にそっくりだな」

と言ってきた。僕は

「……光栄だよ」

それだけ言って意識が飛んだ。

ほんとうは普通に疲労が溜まってて寝ただけだけど










「お、目が冷めたのか」

目が覚めると、白い天井が目に写った。

辺りを見渡すと、ここは病室のようだった。そして、僕はベッドの上にいる。点滴などは刺さってない。まあ、寝ているだけか。病院服じゃないし。

で、近くには―――

「おはよう。」

夢咲が居た。

僕は笑顔で挨拶する。

「もうおはようって時間じゃないけどな」

「え?」

夢咲は苦笑しながら病室にあった時計を指差す。

「11時……」

「昨日から13時間位寝てたんだよ、お前。俺なんか9時に起きたのに」

「……疲れが溜まってたのかもねえ」

夢咲が来る前に少し戦闘があったし…いや、違うか。あれクッソ小規模だったし

「まあいいや。それよりも、だ」

「それよりも、なんだ?」

僕は夢咲の方を向き直る。僕は大きく息を吸い込み、こう言った

「夢咲。Numberに来ないか?」

夢咲は間髪入れず

「行くぜ。もちろんだ」

「即答かよ」

と言ってきた。僕はあぜんとする

しかし、即答した理由のほうが、もっとびっくりさせてきた

「だってそっちには深雪が居るんだろ?」

「お前深雪狙いかよ!」

叫ぶ。こいつ下心しかねえのかよ

「俺はDreamerでは深雪の教育係でな。あいつと割と密接に関わってきた。」

「それで?」

「俺はあいつに一目惚れしたんだよ」

「嘘だろお前」

マジで驚く。こいつマジで下心しかねえな。一目惚れした女が居るからこっちに来るのかよ

「で、俺はDreamerに不信感を抱いてたし、深雪が居るならそっちに行くって話だ」

「…ふ~ん」

僕は顎を擦る。ま、まあ……いい理由なんじゃないかな

「わかったよ。歓迎する。……深雪に手を出さないでくれよ」

僕が言うと、夢咲はニッと白い歯を見せながら笑い、

「お互いの同意があればヤッちゃっても大丈夫だ。」

「そっちじゃねえよ!!!」

僕は我慢できずに叫ぶのだった

自分の後輩と自分に似ているやつがヤッてたらホラーもんである

「じゃあどういう意味だよ!」

夢咲も負けじと叫び返す

「察せよ……」

「なんなんだよ……」

「とにかく!手を出さないと約束するならこっちに入っていいよ」

「最初に勧誘したのお前なのにお前が条件つけるなや!」

「うるさい!お前が下心たっぷりなのが悪い!」

「何が悪い!」

「なんも悪くねえよ!」

夢咲は僕の言葉に対して、

大きく、大きく息を吸い込んで

大声で叫んだ

「じゃあ文句言うんじゃねえええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」







「で、落ち着いたかしら?」

「はい……」

病室には姉さんが居た。先程入ってきたのだ。

「ほんと、もう少し静かに騒ぎなさい。外までだだ漏れよ」

「…ごめん」

「で、こいつは何なの?」

姉さんは夢咲に視線を飛ばす。

「夢咲。夢咲奏だ」

夢咲は姉さんに自己紹介する。

「名前を聞きたいわけじゃないのよ……で、あんたNumberに来るって本当なの?」

「ああ」

「そう。……あんなに強いDreamerの腹心っぽい男が裏切って?」

姉さんはフンッと鼻を鳴らす。夢咲は苦笑し、

「あんなヤツの腹心にはなりたくないな」

と言った。…こいつ、『あんなやつもう裏切ってやる』みたいに言わないとこが性格悪いよな。

人につけこむのが上手いや

「……なんなのこいつ」

姉さんが不思議そうに言う僕も苦笑して

「ま、信用していいと思うよ。こいつ下心しか無いから」

「それこっちも裏切るってことじゃん……やっぱ殺そ」

「おちつけNumber.0」

拳銃を取り出し夢咲に向ける姉さん。僕は慌ててなだめた

「じゃあなんなのよ。Number.2はこいつを入れるのに賛成ってわけ?」

念の為Numberのほうの名前で呼び合う。まだ夢咲が入ると決まったわけではないから本名を明かすわけには行かない。、まあでも

「夢咲はこちらに本名というでかい情報を渡している。僕は入れてもいいと思うよ」

「……」

姉さんは銃を下ろし、黙り込む。そして数分考えた後―――

「わーった」

「…いいのか?俺はスパイかもしれんぞ?」

夢咲が煽るように問う。姉さんは苦笑し

「もしそうなら本名を言わないでしょ。入ることを許可するわ。その代わり、Dreamerについて洗いざらい話しなさい。」

「…わかった。ええっと」

「Number.0。霞雨真理奈よ。」

姉さんが自己紹介する。この人、夢咲が裏切るってわかった瞬間殺す気だな。だから本名言ったのか

まあ、夢咲が裏切るかどうかは僕にもわからんが。

「僕は神無月疾風」

「……ああ。霞雨、神無月、よろしくな。……Dreamerのこと、なんでも教えてやるよ」

夢咲はそう言って姉さんに手を差し出す。僕にも手を差し出してきた

「ええ、よろしく」

姉さんはその手を握った。僕は苦笑し、

「下心は隠してね?」

といい、もう片方の手を軽く握ったのだった











「さあて洗いざらい話してもらおうか」

「急に入ってきてなんですか?先輩」

僕は深雪の病室へと来ていた。まだ完治してないらしい。

ちなみに僕も完治してはいないが、服を着ているため深雪には見えていない。

「とりあえず深雪に聞きたいことがあってね」

「最初からそう言えばいいのに」

「はいそこうるさい」

僕は咳払いをして、聞き始める

「まず夢咲奏について話してほしい」

「あ~……」

深雪は病室の窓の向こうを見る。僕もつられてみてみるとなんの変哲もない街が広がっている。

「あの人のことですか、というかなんで先輩奏さん知ってるんですか」

「あいつうちに来るんだよ」

「ええ?!?!」

僕が苦笑しながら言うと、深雪は振り返ってそう叫んだ

「いや、捕虜として捕まえて、無理やりこっちに引き入れた」

「な、なるほど」

深雪は困惑しつつそういった。

「あの人は私の教育係でした」

深雪は一泊置いてぽつりぽつりと話し始める

「奏さんは、私を良くしてくれました。他の人は、私をもののように扱っていました。だけど、あの人だけは私に優しく接してくれました。彼は実は孤立してて、Dreamerの指示に度々従わないことが多くて……色んな人から嫌われてるんですよね」

「へ~。」

優しくてもアイツは下心たっぷりなんだよなあ……

僕は心の中で苦笑する

「なんていうか、根本的なとこが先輩にほんっっと似てるんですよね」

「奇遇だね。僕もそう思う」

苦笑する。僕も間違った指示を出され続けたら従わないと思う。

たとえ相手が誰だとしても。

「まあ、夢咲についてはそんな感じですね。」

「ん、ありがとう」

夢咲がほんとに孤立してたならわざわざNumberを裏切る、ってことは無さそうだ

それを確認し、僕は安堵する。

そして、2つ目の質問をする

「じゃ、アジトの場所を教えてくれ」

「うげ、やっぱそれ聞いてきますか……」

深雪は唸った後、手をぽん、と叩いた

「スマホに写真ありますよ」

「え、マジ?」

深雪はそう言い、スマホを取り出し、スクロールする。

少し経って

「ありました」

とスマホの画面を見せてきた

「ちょい貸して」

「はい」

深雪からスマホを借りる。アジトは、周りになにもない静かな場所にあった。なので、アジトはひときわ目立っていた。

外見はただの二階建てらしき建物だが―――

「ん?」

よく見てみると、看板が横に付いていた。その看板には―――

「なんでもや夢見?」

「あそこ、表向きにはなんでも屋なんですよ。それでお金を稼いで、それを資金として運用してるんです。」

「ふ~ん。ありがとう。」

僕はお礼を言って深雪にスマホを返す。

「ありがとう、色々話してくれて。」

「いえいえ。こちらこそ。」

「じゃ、今度ご飯おごるね」

僕がそう言うと、深雪は笑って、

「叙々苑割り勘にしましょう」

と言ってきた。僕も笑い、

「そうしよう」

と言って、病室を去った。







「じゃあ、Dreamerについて洗いざらい吐いてもらおうかしら」

「何でも聞いてくれ」

私、霞雨真理奈は夢咲奏にそう言っていた

こいつはNumberに入る代わりにDreamerの情報を渡すと言っていた。だからこそ今吐かせる

「まずDreamerのアジトについてよ」

「ああ。それなら写真がある」

夢咲はスマホを取り出し、中にある写真を見せてくる。その写真を注視する。

アジトはただの二階建てらしき建物だ

「周りになにもない静かな場所ね」

「ああ。あと、よく見てほしい」

夢咲はアジトのとある場所を指さした。

そこには―――

「なんでもや夢見?」

「ああ。あそこ、表向きにはなんでも屋なんだよ。それでお金を稼いで、それを資金として運用してるんだ」

「なるほど……」

これは大きい情報だ。

「もういいわよ」

私は夢咲にスマホを戻すよう促す。

「次はDreamerのボス。Dreamerのことを教えて。」

「ああ。分かる範囲で話そう」

夢咲は一拍置いた後話し始めた

「…実は、Dreamerと俺は不仲でな。アイツについてわかるのは、短気ってことと容姿端麗ということくらいだ。……あと、Numberに兄が居るらしい。兄の名前は知らないが、Dreamerの名前は知っている。」

私は目を剥く。名前があればワンちゃん特定できる。

「あと、顔写真もあるぞ」

「マジで?!」

「ということで教えてやろう。」

そして夢咲はスマホの画面を見せてきた。

「えっ……」

私は目を見開いた。

だって、その顔は私のよく知る人にそっくりだったから。

「確か、こいつの名前は―――」

そして、こいつの名前も―――


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