【一日目①】新しい朝
「…んん、背中…いてぇ…」
上半身を起こし背中をさすり辺りを見渡しながら「どこだここ?あれ…昨日って何してたっけ…」と一人考え込む。
そうこうしていると、周辺の床に横たわっている人達も順に目を覚ましはじめる-。
〈 はーい皆さん、おっはよーございまーす! 〉
「マジか…この声…」と誰かがボソッと言うのに続き「ホント、マジ最悪」と呟かれる。
〈 やぁやぁ皆さん、お久しぶりですねー 〉
数人がほぼ同時に「皆さん?」と疑問を口にした。
〈 頭の良い方達ばかりなので、薄々お気付きになってはいると思いますが! 一応テンプレ通りに説明をはじめますねー 〉
「はぁ…2回目があるなんて聞いてないんだが…」
「やっぱりそういうこと?」
隣同士になっていた二人の男女が話す内容を、他の皆も黙って聞いていた。
その後は俯くもの、天井を見上げるもの、ポケットをまさぐるもの、再び横になるもの。
自分含め答えは既に出ているのだろう。
〈 ではでは…この度皆さんは名誉あるゲームに選ばれましたー 〉
「何が名誉だよ…」
「ね、というかもう今更だからさっさと始めればいいのに」
〈 はいそこ! こうゆーのは雰囲気からなんだから余計なことは言わなーい 〉
小声で「・・・めんどくさ」と言った女は、
「終わったら…いや始まったら教えて、それまで寝る」とこっちに言い終わると床に寝転んだ。
〈 それじゃあ続けますよー。あ、そうだ…ルール説明より先に発表しておくことがありましたー 〉
声が聴こえてくるスピーカーを皆が見上げたのは、既に同じ経験をしているからの反応だった。
「発表なんてなかったよな?」
コクコクと頷く女は「急にルールの説明だけされて…その後は…」
皆が黙りこむ。それはそうだ。
ルール説明が終われば必ず一人、最初にいなくなるのだから。
〈 では発表を始めまーす 〉
〈 第1回 優勝者!露無明くーん〉
「はぁっ?!」と勢いよく立ち上がった男の拳は強く握られている。
〈 おっ、名前を呼ばれて立ち上がるとは流石第1回目の優勝者だー、ほらみんな!ハクシュハクシュー 〉
シーンとする中、男は怒気の混じった声で「頭おかしいんじゃないのか!?」と言い放つ。
〈 ノリ悪いなぁ…まっいっか!はーいじゃあ続けますねー 〉
「クソが…」と言いながらドカッと座る男。
〈 えーっと、露無明くんの殺害関与数は…9件でしたー 〉
「え…?…もしかしてこれからみんな言われるの、これ?」
その問いに誰も答えない。
きっとそれが正解だから。
そして予想通り順々に全員の名前と件数が発表された。
「こんなことして楽しいのかよ!」
「悪趣味にも程があるね」
口々に批判をするもたった一つの言葉で黙らされる。
〈 いやぁ~皆さんスゴいですねー。一体どの口が言っているのでしょうかー。殺害関与なんて少し優しい言い方をされて勘違いしちゃいましたかー? 呼び方変えたところで「ただの人殺し」の集まりなのにー 〉
「・・・」
〈 あらあら~何か静かになっちゃいましたねー。まあでも今更何かを訴えたところで、皆さんは立派な殺人者! 同じ穴の狢なんですから周りを気にする必要はまーったくありません! 〉
〈 あ、それとですね、面白いことが分かったんですよ! 私的には人殺しが何のつもりって思っちゃいますけど…な、な、なんと! この中の全員が、優勝で得た賞金に手をつけていなかったのです! 〉
〈 これは予想外でした!一体なぜなのか!あんなに沢山の人を殺してまで手にしたお金なのに! なぜ使わなかったのか! 〉
「コイツよくここまで口が回るな」
「…もう放っておけばいいよ」
「心理的にこっちを煽って揺さぶってるのかもな」
〈 えー、さてこの度、栄えある優勝者を集めたのにはモ・チ・ロ・ン、理由がございまーす! まぁさっき少しネタバレをしてしまいましたが…そうです!皆さんお待ちかねのゲームを、ここにいる人殺し共でおこなってもらいまーす! 〉
〈 そしてそして、なんと! 今回の賞金は、過去に皆さんが手に入れたのに手をつけなかった全てのお金になりまーす! これは大変なことになりました! 〉
「誰も[使えなかった]金なのに、それを賞金にするとは…バカなんですかね」
「バカなんだよきっと」
〈 あ の さぁ… さっきからグチグチ言ってくるってことは「最初に」死んでも良い覚悟があるんだろうね? 〉
今までのふざけてるような陽気な声は、冷たく淡々とした口調へ変わり告げてきた。
[こっち側]のみんなは過去にやったゲームで、様々な経験をし色々なことを選択してきている。
ゲーム中に持っていた[他を殺してでも死にたくない]という思いは、最後に自分一人だけが生き残ってから[後悔]へとなった。
喜ぶ者などいなかっただろう。
立ち尽くす者。泣き崩れる者。
当たり散らすように物を壊す者。
血溜まりの残る部屋を宛もなく見て回る者。
誰もいなくなった空間に声を響かせる者。
思考が停止する中、無意識に[自分は何で生きているのか]、[生き残ってしまったのか]だけがグルグルと頭を巡る。
そうして何も変わらない事実を、時間と共に受け入れていくことしか残されていないことに気付かされる。
だからここにいるみんなは今[最初に死んでもいい]とさえ思っている。
いや…それを願っているかもしれない。
それほどまでに[生への執着]はみんなにとっては[後悔]でしかないのだから。
〈 なーんてね…どお?少しは威厳がある感じじゃなかったー? 〉
「・・・」
〈 もぉーそんな暗くならないでよー! じゃあ…そんな皆さんにサプライズ発表いたしまーす! 〉
「まだ何かあるのか」
〈 今回、皆さんは2回目の参加なので最初に適当なやつ殺すのは無しでーす 〉
「普通に殺すって言えるあいつの方がよっぽどヤバいだろ」
「…だね」
〈 まぁ本当は毎回最初から殺したくはないんですよー? でーも…みんな最初は信じないじゃん? 見せしめが必要じゃん? だから悲しいことだけど仕方のないことなのー。 その点…今回はもう皆さん じゅーぶん理解している方達なので、その必要はありませーん 〉
「好き勝手言ってんな…」
「はぁ、良いのか悪いのか…」
「結局生き残れるの一人だしね…」
〈 …なーんてね!実は更にサプライズを用意してあるんですよー! 〉
〈 ゲームの説明は後程するとして…今回皆さんの目指すゴールなのですが… 〉
〈 それは…ゲーム終了まで… 〉
〈 誰一人殺さないこと! 〉
「…ん?聞き間違いか?」
「いや…言い間違いじゃないか?」
〈 間違っていませんよー! 確かに言いましたよー 〉
〈 皆さんの目標は!ゲームが終了するその時まで一人も欠けることなく生き残ること! 〉
「…どういうことだ?」
「さぁ…全くわかりませんね。しかしこれはゲームの内容が問題ですね」
「そうだね、『前以上』の理不尽を覚悟しておかないと」
〈 それでは、これからゲームの内容とルールの説明をはじめまーす! 〉




