33_女占い師サヨリーヌ
そんなわけで、急に有理との初デートが決まった。
誰かが、有理に「川田くんをもてあそんでいる」と言った。
そのことで、有理は俺とデートをする決意をした。
ちょっと不本意だが、まぁ、結果オーライ。
なんでもいい。
ニヤニヤが止まらなかった。
「おい。キモストーカー。有理に変なことしたらあたしが許さないよ」
陽子が眉間にシワを寄せて俺に迫る。
「陽子。有理の今後のことは俺に任せてお前も彼氏を作れ」
「バカ言え。デートはこの一回で終わりだろ」
陽子と俺は有理をめぐるライバル同士のようだった。
「洋平よかったじゃん」
典明が俺の肩を叩く。
「ありがとう。でもこれはゴールじゃない。始まりなんだ」
「スタート地点に立てたってことだね」
イェーイ
典明とハイタッチした。
「川田くんと北条さんがデートを?」
「付き合うことになった?」
「まだそうじゃないみたいだけど」
その日の放課後までに、ウワサは広まった。
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「有理。行こうか?」
待ちに待った放課後だった。
有理に手を差し出した。
「手は無理だ」
有理は首を横に振った。
「えっ?デートなのに?」
有理は恥ずかしそうにしていて、めちゃくちゃ可愛い。
うっかりしていた。
手じゃなくて腕か!
「腕を組もう」
腕を差し出した。
「それも無理だ」
結局デートなのに、俺と有理は、離れて歩いた。
なぜだろう。
有理はそんなに俺のことが嫌なのかな、と思った。
有理と二人で廊下を歩くと、かなりの視線を感じた。
とくに女たちの視線を感じる。
祝福してくれてありがとう、そんな気持ちになった。
「洋平。どうしよう。公園でお茶?」
校門を出ると有理が俺をみあげた。
「有理はお茶が飲みたい?」
「飲みたくない」
「だったら、俺についてきてくれると嬉しい。
有理とデートできたら、連れていきたいと思っていた場所がたくさんあるんだ」
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「まず、この場所なんだけど」
繁華街の一角、少し薄暗いビルの中に有理を案内した。
「なに。ここは」
有理は少し不安そうだった。
「ここは、俺の知り合いが商いをしている」
「商い?」
ここの店主は「真の占いの力を手に入れたい」という欲望を持った人間だった。
5年くらい前にその欲望を手に入れるために、俺に魂を売り渡したのだ。
引き換えに占い界で有名なペルーの女シャーマンから占いの力を取り上げた。
女シャーマンには悪いが俺にはどうしようもなかった。
シャーマンは90歳を超える老人だったので、霊力を失ったことがバレないように
誤魔化しつつ、残りの人生を生きていることを願う。
「占い?怖いね?」
「なにも怖いことはない」
人間界に来てから、マーヤに占ってもらうことができなくなっていた。
だから俺はここにきてはよく、有理の今後の運勢を占ってもらっていた。
「川田さん、また来たんですね?」
女占い師、サヨリーヌは、俺を見て静かに微笑む。
彼女はセルパンとの魂の取引のことは覚えていない。
取引後の記憶は消す決まりになっているからだ。




