3_リザベル
「有理を助けられてよかった!会話することもできたし」
俺は自分の執務室に戻ってきていた。
マーヤに頼んだ占いで、今日の有理の運勢が最悪だったのだ。
一日中、スコープで有理を見張っておいてよかった。
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「それにしてもなぁ。
そろそろ、人間に召喚されないとヤバいかも。
最近の人間は、100歳近くまで生きるから、
天界に魂があがってくるまで時間がかかりすぎる」
ブツブツ言いながら、スコープをのぞく。
定期的に魂を養分にしないと俺は弱っていき、やがて死ぬ。
「ルイ。会いに来ちゃった」
セルパン仲間のリザベルが、俺の肩を叩いた。
「勝手に入ってくんなよなぁ」
「そんなこと言わないで。私はあなたの婚約者よ?」
有理と出会う前に、俺はリザベルと付き合っていた。
だが有理のことしか考えられなくなって、リザベルとは別れた。
それなのに最近になって、我があるじ「セルペリオール」がリザベルを俺の婚約者に決定した。
俺はリザベルに、いつもハッキリと言っている。
「結婚はできない。
好きな女がいるんだ。人間なんだけど」
「人間に惚れただなんて。
そんなことセルペリオールに知られたら、どうなると思ってるの?」
リザベルは、心配そうに俺の顔を覗き込んだ。
「さあ。どうなるかなぁ」
「でもいずれ、その子が死んだら魂はルイのものになるんだよね?」
「あぁ~。ま、まぁ。」
リザベルの言う通り。
北条有理に頼まれた「呪い」を俺は実行した。
そして「魂の契約」が結ばれたのだ。
有理が死んだら、その魂は俺のものになる。
純白で強大なパワーを秘めた有理の魂。
養分にすれば、俺の魔力もかなり上がるだろう。
有理の魂を......食べるのか。
そんなこと、できるのか?
好きな女の魂を?
「今は、そのことを考えたくない」
リザベルから目をそらす。
「ルイ。かわいそうに。
私は、その人間が死ぬのを首を長くして待つわ」
リザベルは俺の執務室から出ていった。
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「マーヤ、また占いを頼まれてくれる?」
その日。
朝から嫌な予感がしていた。
俺はいてもたってもいられず、異世界のマーヤの占い小屋を訪ねた。
「うっ......てか、何だこの匂い」
マーヤの小屋のなかは、異様な匂いが漂っていた。
「また、あんたか、ルイ。
おっと。いい匂いだろう?」
マーヤは800年か、1000年か?
分からないけど、長いこと生きている魔女だ。
マーヤは緑色の液体が入った壺の中身をかき混ぜた。
「キマイラのたてがみにウシガエルの小腸と......
ふん......これ以上は秘密だ」
ククク、と笑う。
「劇薬だね。なんに使うのかも聞かないでおく」
マーヤの食事テーブルの椅子に腰掛ける。
テーブルには血しぶきが飛び散っていた。
まだ新しい。
テーブルの上で何を料理したのかも聞かないでおこう。
「またあの人間の女の未来が知りたいのか?」
「うん。知りたい。なんだか嫌な予感がするんだ」
「お前の予感はあたるからな」
俺は人間界で集めてきた鶏の足を、マーヤに渡す。
「これだけかい?」
「これで頼むよ」
もっと集めたかったのだが、あまり派手にやって目立ちたくなかった。
「どれ。見てみようかね」
マーヤは、部屋の片隅においてある水盤を覗き込む。
ブツブツと何かを唱え、水盤にキラキラと輝く粉をまく。
「こっちへおいでルイ」
「なにか見えた?」
「お前の予感どおりだね」
「これは......」
「死神とナイフ。深い悔恨。償いきれない罪......お前ならもう分かるだろう?」
マーヤは穏やかな顔で俺の方を見た。




